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『目黒蓮に恋愛スキャンダルなんて絶対にあってはいけない』
『もしそんなことになったらアンバサダー契約企業含めて経済損失が計り知れない』
それはもう、事務所の上層部もスタッフもメンバーも各企業も、全員が共通して持ってる認識だ。
下手したら日本経済まで影響あるんじゃないか?と誰かが冗談で言ってたけど、アンバサダーやCM契約してる企業の数や大きさを考えると笑えない話かもしれない。
当の本人はといえば、真面目だし努力家だし一つの事に集中すると他に手が回らなくなるから。忙しくしてる間はそんな暇もないだろう。
と思うだろ?
俺を含めメンバーは知ってるけどさ、あいつ意外と肉食なんだよ。取っ替え引っ替えまではいかないけど、来る者拒まず去る者追わず。
スケジュールが過密になるにつれ相手を選別してる暇もないからたまーにヤバイのに引っかかりそうになって、慌てて周りが止める。もちろん相手への釘刺しも忘れずに。
そんなことが繰り返されるようになって、蓮を除いた8人での話し合いの場で俺は一つ提案した。
「俺を使ってもらうのはどうだ?」
って。
蓮の様子見てると来る者の中には男もいたから、あんまりこだわりはないんだろうなって思ったし。
もちろん全員大反対だった。そんなのただの人身御供だろって。
そこで怒ってくれるメンバーで俺は幸せだなって思った。
こういう奴らだからこそ、この先もっとグループを大きくする為にこんなところで立ち止まれない。
だから俺は、少しの真実を混ぜた嘘をつくことにした。
「今はもう諦めたし何とも思ってないけど、実は昔、蓮のこと好きだったんだ。だから、蓮だったら別に嫌じゃない。それに一緒に発散するだけだって考えたらそんなに深刻になる程じゃないだろ」
実際俺と蓮が関係を持つよりも、どこの誰とも知れない相手に引っかかる方がよっぽど深刻だった。事はもう、グループの中や事務所だけでは収まらない。
でも俺と蓮だったら、ヤってる現場を押さえられでもしない限りは『仲良いんだな』で押し通せる。
どっちがマシかなんて考えるまでもない。
一歩も引かない俺を見てメンバーが頭を抱える中、重いため息を吐きながら立ち上がったのは深澤だった。
「絶対に無理はしないって誓えるか?」
「おい、ふっか」
「だって無理だよ。見ろよこの顔。放っといたらこいつ俺達に黙って実行するぞ」
黙り込む照に深澤が更に畳み掛ける。
「隠されるよりまだ、俺達も共犯になった方がマシだ」
「ありがと、深澤」
「でも、本心では納得いってないし、お前が犠牲になる必要なんてこれっぽっちもないって思ってる。だけど…お前の決意、知らないまま隠される方が嫌だから。だから、頼む。無理だけはしないでくれ。自分を傷付けるようなことだけはするな。それだけ、約束して」
涙を堪えながら、深澤が必死に訴える。本当に優しいよな、こいつ。
でも、ごめんな。
俺、今、お前ら全員に嘘ついてる。
「うん、分かった。ありがとう深澤」
本当にごめんな。俺、自己犠牲に走れるような出来た奴じゃないんだ。
今頭にあるのは、打算でしかない。
『あわよくば蓮に抱いてもらえるかもしれない』
『いつまでかは分からないけど、蓮を独占出来るかもしれない』
そんな昏い希望だけだ。
ごめんな、俺、本当は。
こんな状況も利用しようと思うくらい、今でも蓮のこと好きなんだ。
Opfergabe(オプファーガーベ):供物、捧げ物