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シュウがいなくなると、カイが「はぁー……」と、長い息を吐き出した。
「……大丈夫だったか? ミクル」
縛られていた縄をナイフで切り、
「痛かったろう……?」
と、手首に付いた痕に、彼がそっと口づけた。
「俺のために、ごめん…ミク…」
イスの傍らにひざをついて、カイが私を上目に見つめる。
「ううん………私は、大丈夫だから。……それより、あなたのナイフの傷の方が心配で……」
血だらけの彼の手に目をやると、
「ああ…ちょっと痛いかも、そう言えば……」
カイは力なく笑って見せた。
「私のために、こんな無茶なんかして……ごめんね」
血が流れている彼の手の平に、持っていたハンカチをギュッと固く巻き付ける。
「いいんだ、ミク。俺は、あんたがいると、強くなれるから……。……ミクルがいたから、シュウとも逃げずに、向き合おうと思えた……」
「私がいたからじゃないよ…」
カイの柔らかな黒髪を撫でて話しかける。
「カイが、自分で向き合ったの……それは、私のおかげなんかじゃないから……」
「ミクル……」
カイが、潤む瞳でじっと私を見上げる。
「ミク……俺……」
イスに座ったままの私に、カイがひざをついたままにじり寄り、腰に手を回し抱きついてくる。
「カイ……」
呼んで、また髪を優しく撫でると、
「ミクル……」
腰に回されていた腕が、背中を這い上がり、首筋が抱き寄せられて、唇がふっと重ね合わされた……。