テラーノベル
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「……山崎、さっきはすまねぇ、それで、書類だが……」
またしても無遠慮に開けられた襖の向こう、土方は雷に打たれたように硬直した。
そこには、絶世の美女の頬に愛おしげに手を添える総悟が居たからだ。
「総悟……てめぇ、屯所に女を連れ込むたァどういう……」
怒鳴りかけた土方の言葉が、喉の奥で消えた。
夕闇の部屋、振り返ったその「女」の瞳に射抜かれたからだ。
艶やかな黒髪、毒を含んだような赤い唇、そして何より、どこか寂しげで守りたくなるような、吸い込まれそうな眼差し。
「……あ……」
土方の顔から急速に血の気が引き、代わりに耳まで真っ赤に染まっていく。
さっき見たはずの
「女装の山崎」
という記憶は、この圧倒的な美の暴力によって脳内から完全にデリートされた。
目の前にいるのは、彼の理想を煮詰めて形にしたような、気高い一輪の華だった。
その様子を、総悟は見逃さなかった。
(……ククク、面白ェ。完全に別人と勘違いしてやがる。しかも、ガチだ)
総悟はわざとらしく山崎から手を離すと、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「おやおや土方さん。連れ込むだなんて失礼な。この方は俺の遠い親戚で、『退子』さんっていいやす。ちょっと訳あって俺が保護してんのでさァ」
「さ、さがるこさん……」
土方は釘付けになった。
正体がバレる恐怖で声も出せず、ただただ震えながら俯く山崎。
しかしその「物静かな」様子が、土方の目には
「奥ゆかしく、控えめな大和撫子」に映ってしまう。
「……済まねェ、無作法なところを見せちまった。俺は、真選組副長の土方十四郎だ」
土方はタバコを握りつぶし、柄にもなく背筋を伸ばして自己紹介を始めた。
その目は、獲物を追う鬼の副長のものではない。
初恋を知った少年のように、熱烈な輝きを宿している。
「退子さん。もし良ければ……この後、茶でもどうだ。あ、いや、マヨネーズはかけねぇから安心しろ」
必死に自分を売り込む土方。
山崎は心の中で絶叫していた。
(副長!? 俺ですよ! 山崎ですよ! さっきの『いらない任務中止だ』の感動(?)を返してください! あと、さがるこって何!? 読み方ひねりすぎでしょ!!)
だが、横で総悟がカメラのシャッターを切りながら、
「一言でも喋れば山崎の戸籍を消しやすぜ」
という暗黒の微笑みを送っている。
結局、山崎はただ顔を赤らめ(羞恥で)、小さく頷くことしかできなかった。
「……っ! なんて可憐な……。総悟、退子さんは今日から俺が直々に警護する。お前のような野良犬には任せられねぇ」
「おっと、土方さん。退子さんのボディガードは競争率が高いですよォ?」
総悟は面白がって土方を煽りつつ、自分もまた「[[rb:退子 > 山崎]]」の腰をぐいと引き寄せた。
土方の嫉妬の炎と、総悟の独占欲、そして山崎の絶望。
「地味」だったはずの男を巡る、真選組トップ二人の
「ガチ恋争奪戦」
の火蓋が、今、最悪な形で切って落とされた。
コメント
1件
みぅだよ🤍💭 第5話「戦争の始まり」、読んだよ…! もうね、土方さんが完全にやられてるの、本当に面白くて!笑 「さがるこ」って呼び方、ひねりすぎでしょ!しかもマヨネーズかけないって宣言するところがもう必死で可愛いよ😭 山崎の心の絶叫が痛いほど伝わってきて、可哀想だけど笑っちゃった。 総悟のカメラと暗黒微笑、ずるいけど好きだよ…この人の執着、重くて綺麗だね。 重い空気の中に笑いがあって、すごく楽しかった!次も読むね🌙🤍