ガッシャーン……
「遥香様っ⁉大理石に水をぶちまけられては困りますっ!」
「ああ、足が当たっちゃった。そうやって拭けばいいだけでしょ?私が通る場所にバケツを置く真奈美が悪いのよ」
カツカツと、ヒールの音を立てて出て行く遥香様……心の中では“様”なんて付けないけど……遥香の何度目かの嫌がらせがこれか……
私は急いで吸水出来るモップを取りに行くと、水分を拭き取る。
掃除機の後、中性洗剤を薄めて水拭き。
それから水気を残さないようにマイクロファイバークロスで乾拭き。
そういう手順の水拭き途中にバケツの水をぶちまけられたので、えらくロスタイムだな……
でも……これも、13年間腐ったままの遥香だという証拠。
どうぞ、暴れてちょうだい。
「何をしている?」
声の主は、階段を降りて来た篤久様で、隣にはご主人様もおられる。
「おはようございます、ご主人様、篤久様」
「そこをそんなに濡らしては……シミやカビの原因になるんだけどね」
大理石の注意点ですよね、ご主人様。
ご主人様は怒っているようにも感じないけれど、言うことはしっかりと言うという感じだろうか。
「申し訳ございません。水気を残さないように仕上げます」
頭を下げた私の隣を、第一家事室から出てきた運転手さんが通り過ぎ
「遥香様がバケツをひっくり返して行かれたようです。車は前につけております」
階段の下から二人を見上げて言うと、先に出て行った。
第一家事室から玄関ホールが見えていたのか……
「よろしく頼むよ、桑名さん」
それだけ言ったご主人様と、私と掃除道具をじっと見てから無言で通り越して行く篤久様に
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
とお辞儀をした。
お二人一緒に出掛ける時は、運転手さんが運転するようで、別々の時はそれぞれが運転しているようだね。
予定より随分と遅くなったけれど、なんとか玄関ホールの清掃を終え、キッチンで自分のお昼休憩のためにおにぎりを作ってから自室に戻る。
そして……私はワンピースのポケットから、超小型高性能ボイスレコーダーを出すと、平机の前に座ってタブレットを起動させる。
片手でおにぎりを食べながら、片手で先ほどの
【ガッシャーン……
「遥香様っ⁉大理石に水をぶちまけられては困りますっ!」
「ああ、足が当たっちゃった。そうやって拭けばいいだけでしょ?私が通る場所にバケツを置く真奈美が悪いのよ……カツカツ……】
という部分のデータをタブレットに移した。
ここには、初日の音声もあれば、私の肩が赤黒く変色した打ち身の記録も写真で保存してある。
まだまだこの先、これらをどう有効活用するかは決めていない。
でも……私と両親が味わった苦悩を遥香にも味わって欲しい……その願いを叶えるべく、一番効果的なタイミングで、これらを使ってやる。
手書きのメモもきちんと残して……よし、午後の業務に取り掛かろう。
コメント
3件
お‼️‼️‼️😳運転手さんは味方❓
運転手さんは自分もやられてて味方なのかしら? ご主人様と篤久様は性悪女共のことはわかってるのかな?なんで再婚したんだろ?いいいように上手く香奈親子にしてやられた? そそ、どんな些細なことでも証拠が大事!音声は特にね!その時がくるまでがんばれ!꒰՞⸝⸝•̀𖥦•́꒱و ̖́-
ここまで性悪だったら遠慮することなく叩きのめしましょう(๑•̀ㅂ•́)و✧