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願いが叶うノート。
今、俺の目の前にはそんな表紙のついたノートが一冊。
こんなもので願いが叶うなら誰も苦労なんてしない。
そう思いながらペラっと黄色い表紙をめくると中は何も書いてない普通のノートだ。このノートとの出会いはつい10分前ほどで、家に帰り鞄の中を覗くとそこに入れた覚えのないこのノートが入っていたというわけだ。
誰かが間違えて入れたのかと思い、明日聞いてみようとその黄色いノートをまた鞄にそっと戻した。
翌日ら黄色と言えば涼ちゃんだよね、彼なら充分間違えて入れちゃった、なんてこともありそうだから···なんて思いながらノートのことを聞いてみる。
「涼ちゃん、昨日黄色いノート無くさなかった?俺の鞄に入ってて」
「黄色?僕のじゃないと思う···他に何か書いてないの?」
「中は真っ白で···表紙には···」
鞄からそのノートを取り出す。
「あれ···?」
昨日はあった、表紙に書かれた文字がない。願いが叶うノート、というあの文字が。
「うーん、本当になんにも書いてないね···一応若井にも聞く?」
「うん···」
おかしい、昨日は絶対にあったものが消えていて不思議に思いながらも若井にノートを見せたけど、反応は涼ちゃんのと同じだった。
仕方なくそのノートを片付けて、俺は仕事に取り掛かった。
その日も遅くまで仕事をして家に帰り、床に鞄を置いてソファに座り込む。ふと、あのノートのことを思い出して鞄から取り出すと、そこにははっきり「願いが叶うノート」と書いてあるのだ。
「どういうこと···?」
涼ちゃんや若井に見せた時にはなかった文字が今は見える。
あの時涼ちゃんははっきりと何にも書いてないね、と言ったのからその時なかったのは間違いない。
「まさかほんとに願いを叶えてくれたりして」
俺が叶えてほしい願い。
それは仕事でもお金でもない。
それは些細で、でも叶わないこと。
けどそれを書いてしまうのは誰にも見られないにしろ、少し憚られた。
「これなら、いいかな」
近くにちょうどあったペンで真っ白な紙の真ん中に小学生にも笑われそうな願いを書いた。
“涼ちゃんが一番最初に話しかけてくれますように”
「···これくらいなら、いいよね」
叶えば嬉しくて、叶わなくてもすごくショックじゃない願い。
ノートを閉じると俺は風呂に入ってさっさと寝ることにした。
コメント
11件
願い事可愛すぎだろ
すごくカワイイお話し💓 いったいこのあと、更にどんなお願いを書くのかドキドキ🙄
願い事が可愛いホッコリ(灬º‿º灬)♡