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「いつも沢山、沢山、ありがとうございます」
「ん」
尊さんは微笑むと私にチュッとキスをし、「俺も着替えるか」と言ってネクタイを緩めた。
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四十七階の部屋に戻った私――中村恵は、ギクシャクしながら部屋の中を進む。
「恵ちゃん、ヒール疲れただろうから、靴脱ごうか」
「えっ? は、はい」
挙動不審になった私は、『スリラー』みたいに両手を上げたまま振り向いた。
「はい、お嬢様、お手をどうぞ」
涼さんに手を差しだされ、「お手」と言われた私は、思わずその上にポンと軽く握った手を置いてしまう。
「あははっ、こっちの『お手』でもいいけど」
彼は私をエスコートしてソファに座らせると、目の前に跪いてパンプスを脱がせた。
「……わあ……。有料サービスですか?」
「なにそれ」
私の言葉を聞き、涼さんはクスクス笑う。
「涼さんにこうやってお姫様扱いされたがっている人、大勢いそう」
そう言うと、彼は微妙な顔で笑った。
「言っておくけど、俺は金を積まれても、何とも思っていない人にこんな事はしないよ」
涼さんはコトンとパンプスを置き、スカートの裾を捲り上げると、ストッキング越しに私の膝にキスをする。
「わっ……」
びくっと身を引くと、涼さんは上目遣いに私を見て妖艶に笑った。
「つまんない事を言うから、お仕置き」
「す、すみません……」
謝ったあと、高価なワンピースやアクセサリーが慣れない私は、モゾモゾしながら尋ねる。
「あの、一回身につけてる物をとっていいですか? 落ち着かなくて……」
「ん、分かった。じゃあ俺が外してあげる」
そう言って涼さんは私の手をとると、手の甲にチュッとキスをしてからブレスレットを外す。
「あ、フレーメン反応起こした猫みたいな顔してる」
彼は私の顔を見てクスクス笑い、次にこめかみにチュッとキスをし、ピアスを外してきた。
「なっ、なんでいちいちキスするんですか!」
「恵ちゃんを美しく飾ってくれたアクセサリーに、敬意を込めて」
「ならアクセサリーにキスすればいいじゃないですか!」
「俺、無機物に興奮する性癖ないから……」
そう言いながら涼さんはアクセサリーをボックスに戻し、最後に私の首に手を回してネックレスをとろうとする。
「……ん、ちょっと背中向けてくれる? 留め具が小さいからね……」
言われて私は大人しく彼に背中を向け、髪が邪魔にならないように、なるべく押さえる。
すると――。
「ひぃっ!」
うなじにキスをされ、悲鳴が口をついて出た。
「そんな、お化けでも見たような声を出さなくてもいいじゃないか」
「妖怪キス魔」
「妖怪甘噛みにもなろうかな」
彼は機嫌良さそうに言い、私の首筋にチュッチュッとキスをし、軽く歯を立ててくる。
「んぅ……っ」
くすぐったいのか気持ちいいのか分からないけれど、私はとっさに首を竦めてゾクゾクした感覚をやり過ごそうとする。
油断していたところ、涼さんに後ろから抱き締められた。
「可愛いね」
耳元で囁かれ、私はゾクゾクッとして唇を引き結ぶ。
涼さんは私のお腹をサワサワと撫で、胸をパフッと手で包んできた。
「可愛い」
体の大きな彼にスッポリ包まれ、低く艶やかな声で「可愛い」を耳元で繰り返され、胸がドキドキしておかしくなってしまいそうだ。
「待って……っ、――――待ってください。…………壊れちゃう……っ」
一杯一杯になってそう言うと、涼さんがゴツ……、と私の背中に額をつけてきた。
「…………ど、どうしたんですか?」
変な事を言ったかな? と思って振り向こうとすると、涼さんはグッと抱き締める腕に力を込めた。