これは、アルメリアが単身ヒフラに行っていた間のお話。
「アルメリアがいないとわかっていても、この時間になるとここにきてしまうな」
アルメリア専用のドローイング・ルームのソファでくつろぎながらムスカリはそう呟いた。
「そうですね、僕もお嬢様のお側にいられないことがとてもつらく感じます」
リカオンがそう答えると、リアムが声を出して笑った。
「私もそうだったが、君も最初はアルメリアを誤解していたじゃないか。随分な変わりようだな」
すると、申し訳なさそうにスパルタカスが会話に入る。
「それは私も一緒です。閣下を誤解していました。実際会ってみると、あんなに素晴らしい女性はいないのですが」
それを聞いて、リカオンが大きく頷く。
「お嬢様のお側にいれば、誰でもその魅力に気づくでしょう。ここにいる皆がそれを知っています」
それを受けてムスカリは不機嫌そうに答える。
「お前たちのように、あとからアルメリアの魅力に気づいたような奴らと私を一緒にするなよ。私は昔から彼女しか見ていない。だからこそ、こんなに分かりやすくアピールしているというのに、アルメリアには全く相手にされないのだからこれほどじれったいことはない」
そこでアドニスが口をだす。
「殿下には遅れを取りましたが、私だってアルメリアのことは初めて知ったときから、素晴らしい女性だと知っていました。まさか、殿下が仰っていた心に決めた女性が彼女だとは思いもしませんでしたけれど」
「お前も少しは人を見る目があったということか」
そこでリアムが答える。
「いえ、アルメリアに実際に会いアルメリアをを知れば、誰でも彼女の魅力に気づくでしょう。それと他の令嬢とは違っていてとても謙虚なのも魅力です」
そのときリカオンがさっと手を上げ、口を開いた。
「長くお側にいさせていただいて気がついたことがあります。お嬢様は謙虚過ぎるがゆえに大前提として、自分はぜったいに好かれてないと思って動いている節があります。なので、こちらに意識を向けたいのならはっきり気持ちを伝えなければならないでしょう」
アドニスは驚いた顔で答える。
「あんなに好意を示しているのに?」
「はい、恐らく紳士だから礼儀としてそうしていると思っているでしょう」
リアムもリカオンに質問する。
「特別なプレゼントをしても?」
「はい。恐らくなにかのお詫びや、付け届け程度にしか考えませんよ」
それを聞いてリアムは頭を抱えた。
そこでムスカリは不適な笑みを見せた。
「わかった。ならば好きなだけ押してよいということだな? それならば我慢しないことにしよう」
そんなムスカリを見て、アドニスも不適な笑みを浮かべて言った。
「ならば私も加減はしません。最終的に選ぶのはアルメリアです。恨みっこなしでいきましょう」
それに対しリアムが答える。
「そうですね、恨みっこなしで。最終的にアルメリアが選んだ通りにします」
それを聞いて、その場にいた全員が頷いた。
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