テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
翌日。
昼休みの少し前、ジョン・ドウは朝からずっと落ち着かなかった。
(今日……一緒に食べるって言ってたよな……?)
昨日のやり取り。
「また作って」
その流れで、なんとなく決まった“次”。
——一緒に食べる。
(これって……もう……)
そこまで考えて、顔が熱くなる。
(いやいやいや!!ただの昼ごはん!!)
自分で否定するけど、全然落ち着かない。
その時。
「——ジョン」
「っ!?」
またもや条件反射。
振り向くと、ジェーンが立っていた。
「行くよ」
それだけ。
「は、はい!!」
屋上。
人は少なく、風が心地いい。
ジェーンは迷いなくベンチに座る。
ジョンも少し距離を空けて座る。
(距離……これくらいでいいのか……?近い?遠い?)
完全に挙動不審。
「……何」
「えっ」
「さっきから落ち着きなさすぎ」
「すみません!!」
即謝罪。
ジェーンは小さく息をつく。
「別に怒ってない」
「はい……」
(優しい……)
少しだけ空気が緩む。
「……お弁当」
ジェーンが差し出す。
「え?」
「一緒に食べるんでしょ」
「あ、はい!!」
受け取ると、中は——
昨日の焼き菓子とは違う、ちゃんとした手作り弁当。
シンプルだけど、丁寧に詰められている。
「……すごい」
思わず呟く。
「普通」
「いや絶対普通じゃないです!!」
ジェーンは少しだけ目を細める。
「うるさい」
でも完全に否定はしない。
「ジョンのは」
「あ、はい!!」
慌てて自分の弁当を差し出す。
「今日も作ってきました!」
中は——パンケーキをアレンジした軽食と、簡単なおかず。
「……またパンケーキ」
「好きなんで!!」
「知ってる」
さらっと言われて、固まる。
(知ってるって言った!?)
ジェーンは一口食べる。
「……これもいい」
「ほんとですか!?」
「声」
「すみません!!」
でも嬉しさが隠せない。
しばらく、静かな時間。
風の音と、時々食器の小さな音だけ。
——不思議と、気まずくない。
「……なんで」
ジェーンがぽつりと聞く。
「え?」
「そんなに、料理するの」
ジョンは少し考えてから、
「好きだからです」
シンプルに答える。
「あと……誰かに美味しいって言ってもらえるの、嬉しいので」
ジェーンは何も言わない。
でも、少しだけ手が止まる。
「……変わってる」
「えっ」
「普通、自分のためにやる」
「それもありますけど……」
少しだけ照れながら、
「ジェーンさんが食べてくれるなら、そっちの方が嬉しいです」
——言ってから気づく。
(今のやばくない!?)
固まるジョン。
ジェーンは数秒、無言で彼を見る。
「……そう」
ゆゆゆゆ
それだけ。
でも——
ほんの少しだけ、視線が柔らかい。
その瞬間。
「いや〜青春だねぇ」
「静かにできないのか」
またしても。
振り向くと——
フェンスの向こうから覗いている
シェドレツキーと、
隣で呆れ顔の
デュセッカー。
「なんでいるんですか!!」
「散歩」
「嘘ですよね!?」
「いや〜いい感じじゃん」
シェドレツキーがにやにやする。
「弁当交換とか、もうそれデートでしょ」
「ちがっ……!!」
ジョンが慌てる。
ジェーンは無言。
デュセッカーが静かに言う。
「否定しないのか?」
「……別に」
ジェーンは淡々と返す。
「ただ昼食とってるだけ」
「へぇ〜?」
シェドレツキーがニヤつく。
「じゃあ邪魔しても問題ないね?」
「それは」
一瞬だけ。
ジェーンが言葉を止める。
「……ダメ」
小さく。
でもはっきり。
「え」
ジョンが固まる。
「静かに食べたいから」
そう言って、ジェーンはまた食事に戻る。
——でもそれはつまり。
“2人でいる時間を邪魔されたくない”ってこと。
「……」
シェドレツキーとデュセッカーは顔を見合わせる。
「これは」
「進んだな」
小声で笑う。
「はいはい、退散しますよ〜」
「頑張れよ」
そう言って去っていく。
静けさが戻る。
ジョンはまだ少し固まっていた。
「……何」
「い、いや……その……」
「食べないの」
「あ、食べます!!」
慌てて口に運ぶ。
ジェーンは少しだけ横目で見る。
そして——
ほんの少しだけ、口元が緩んだ。