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平野と向かった先は港町だ。
既に避難誘導は終わっていた。
「では、君達、一緒に戦いますよ。」
「よっしゃあ!」
「ただし、中心はミズキちゃん、あなたに託します。我々はミズキちゃんのフォローですよ。」
「なんで!」
「片瀬君。」
平野に食って掛かろうとする片瀬をリョウが止め、ミズキは平野に確認する。
「平野大将、お言葉ですが、普通は大将が中心ではないのですか?」
「そうですね、それか危ない突っ走っちゃうタイプなんですけど。」
チラリと平野は片瀬を見て、ニコッと笑ってみせる。
「うっ•••。」
「今回はミズキちゃんですよ。」
そう言って配置に着かせる。
「では、参りましょう!」
平野の一言で武器を持ち走り出す。
次々と湧く屍相手にリョウと片瀬との間に距離が空き始めた。
“ミズキ、あの小僧が囲まれるぞ。体を捻ろ。そしたら間に合う。”
武器の言う通り、徐々にリョウが囲まれ始めていた。
ミズキはとっさに身を翻そうとしたが、それを平野が制止した。
「ミズキちゃん、それでは捻る動作で貴女の背骨が折れてしまいます。 」
「でも!」
「片瀬君、栗原君のフォローを。」
「任せて下さい!」
平野の指示で片瀬はリョウのフォローに入る。
「なにも全て声に従う必要はないのです。必要な情報を取り、周囲を俯瞰して見るんですよ。」
「•••わかりました。」
「よろしい。ではミズキちゃん、今から私の動きをトレースして下さい。」
「え!?」
平野は舞うような動きで敵の攻撃をいなしていく。しかしその手に 武器は握られていない。
ミズキはその動きに合わせて必要なタイミングで斧を振るう。それでも前ほど斧を振り回さなくても屍を倒すことができていた。
「相手の攻撃をいなしていくだけでも体の消費が違いますからね。それに我々みたいに声の聞こえる人間は武器本来の力を引き出しやすい分、体や神経の負担は大きいのですよ。だから、少しでも自分の体も労らないと。」
(叶さんみたい。)
「ふふふ、そんな見つめられたら照れてしまいますね。」
「すみません。」
「いえ、私が武器を使わないのが不思議なんですね。」
そう言って平野の手にメイスが握られた。
「私は花村君みたいな大鎌がよかったんです。これだと飛び散ってしまって。」
そう言って平野はメイスで屍を叩きつけた。辺りに肉片と血が飛び散る。
「ね?」
「いや、ね?じゃないでしょう!」
「めっちゃ汚れた!」
ちょうど返り血の被害に遭ったリョウと片瀬が合流する。
「おや、おかえりなさい。では、ここからは本気でお姫様を守りますよ。ミズキちゃん、武器をしまってください。」
「え。」
「早く。」
ミズキは言われた通り武器をしまう。
日々の訓練の成果もあり、あの時程はないがやはり強い眩暈に襲われる。
その姿を見て片瀬の手が震える。
「片瀬君?」
リョウが片瀬の肩に触れようとしたが、それを片瀬は振り払った。
「さ、男の意地にかけても、お姫様を守りますよ。」
「平野大将、これはどういう。」
「訓練です。」
リョウの問いかけに平野は笑顔で答えた。
結果的に港町に狂信者はおらず、3人はひたすら屍を倒していきようやく殲滅した。
「お疲れ様でしたー!頑張りましたね!」
平野は息も切らしていないが、リョウと片瀬は息を整えていた。
ミズキも途中復帰したが、思うように体は動かなかった。
片瀬は静かにミズキに近づいた。そうかと思うと、静かにミズキを抱えた。
「ちょ!」
「•••きついんだろ。黙ってろ。」
片瀬はミズキに視線を合わせない。ミズキも眩暈に勝てずに身を委ねるしかなかった。
「ちょっとちょっと!片瀬ばっかりかっこつけすぎ!ミズキちゃん、俺もまだまだ力残ってるから!」
「あ、ありが、とう?」
そんな3人の後を平野は微笑ましく見つめる。
4人が帰還した時、瓜生は既に研究施設へと移動した後だった。
数人怪我人もいたが、各チームの成果を称えて夜は宴会だ。
ガヤガヤとした声に慣れず、ミズキはテラスへと行く。
室内から漏れる声は聞こえるが、外は静かだ。
(少しは強くなってると思ったのに。また、足手まといだ。)
ミズキの悔しさは唇に現れる。強く噛み閉め血が滲んだ。
「まだ具合悪いのかよ。 」
片瀬の声がするがミズキはうつ向いたままで振り返ることができない。
「おい、なんとか」
「放っておいてください!」
強い拒絶だ。片瀬はため息を着く。
「•••生きてるんだから、良かっただろ。」
「それでも!私はまた、足手まといに 」
「足手まといじゃねぇ。あの能天気の事に気づいたじゃねぇか。 」
「•••。」
「じゃ、それだけだ。」
そう言って片瀬は室内に戻って行った。
試練が終わり、片瀬は周参見部隊に配属となった。
元々ひねくれた性格であり、同期と仲良くなろうとも思っていなかった。
そんな時、理央という同期とペアとなった。
理央はどんくさい面もあったが、片瀬が心を少しずつ許していった貴重な存在だった。
周参見部隊での初陣の時、2人は近くで戦っていた。
異様な程に感の言い理央に片瀬は違和感を覚えていたが、その時は勝つことに必死だった。
部隊長から武器をしまうよう理央に命令が下される。理央は抵抗したが、片瀬の後押しもあり武器をしまう。
するとその場で嘔吐しうずくまってしまった。片瀬は動揺した。
そして周囲の安全確認中、片瀬は理央の周辺を見張る。
少し先に部隊長達の姿も見える。
「•••ごめん、ね。」
「あ?気にすんな。具合、早く良くなるといいな。」
「ありがとう。やっぱり、片瀬は優しいな。」
「そんなんじゃ、ねぇよ。」
「そっか。」
そうして本隊との合流を待っていた。
理央は少しの間目を瞑っていたが、急に目を開くと片瀬を突き飛ばす。
「なにしやがる!」
「ぐっ!」
振り返るとそこには狂信者に刺される理央の姿があった。
すぐに駆けつけた部隊長が狂信者を取り押さえたのだが、理央はまだ眠っている。
病室には無機質なモニターの音だけが響いていた。
(俺が、強かったら。)
片瀬の心に傷がついていく。
それからだ、片瀬は必死に訓練を積んできた。誰にも頼らず自分1人でも戦えるように、もう誰も目の前から消えないように。
「全く、不器用さんですね。ね?周参見大将?」
「そうだな。しかしお前は性格が悪い。 」
「戦いにおいて、過去の出来事を引きずるのは毒ですよ。」
「片瀬が拗らせたらお前の責任だ。」
「ふふ、肝に銘じておきますよ。」