テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
3日目の実戦訓練も終わり、ミズキは宿舎を離れる準備をした。途中リョウとリョウに言われて渋々応じた片瀬と連絡先を交換した。
今は訓練中ということもあり、見送りは平野だけだ。
「ミズキちゃんは飲みこみが早くて助かりました。次の所でも大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。お世話になりました。」
平野と向かい合い、お互いに敬礼をする。
その時、花村の車が到着して、ハルが降りてきた。
「よう!ミズキ!」
「ハル、久しぶり。」
「おやおや、君が噂のハル君ですね?待ってましたよ!」
「え?噂?」
平野がハルに話しかけている間に花村はミズキを車に乗せた。
「ミズキちゃん!」
窓越しに訓練を抜け出したリョウと片瀬の姿があった。
「リョウと片瀬さん。」
「短い間だったけど、同じチームで良かった!俺達も4日後には追いかけるから!」
「瓜生大将のチームになったらよろしくね。」
「気を付けろよな。」
「片瀬さんも。」
「•••ハクト。片瀬 ハクトだ。覚えとけ。」
「わかりました、ハクトさん。お世話になりました。」
そうしてミズキは次の部隊へ移動する。
花村はバックミラー越しにミズキの様子を見る。少し寂しげな顔をしていた。
次の宿舎にはトウマと水谷大将が待っていた。
「ようやく来たね。トウマ君、頑張ってね。」
「はい、ありがとうございました。」
そうしてトウマとミズキが交代する。
「雨音さんですね。水谷です、この山岳地帯を担当します。」
「お願いします。」
「では、こちらへ。」
そう言って宿舎へまずは案内される。エントランスにはズラリと登山用具が並ぶ。
「他の部隊と違って、山岳部なので登山用の道具も装備に必要となってきます。それと街とは違って地形が地形なので、遠距離からの攻撃も出来るようになって頂きますね。」
「はい。」
一通りの説明を受けたあと、部屋に案内される。
どうやら同性の隊員と同室みたいだ。
水谷がノックをすると可愛らしい声で返事があった。
「失礼します。奏さん、今日から同室となる雨音さんです。」
「雨音 ミズキです。よろしくお願いいたします。」
「わぁ!女の子だぁ、嬉しいなぁ。私は奏 アリア、よろしくね。」
そう言ってそっとミズキの手を握る。
「では、今日の訓練は午後からになりますので、時間になったら集合するように。」
「はぁい!」
「わかりました。」
そう言って水谷が部屋を出る。
しばらくすると足音が聞こえなくなった。
「あの」
「はぁ、だる。私こっちだから、そっち使って。ずっとペアはトウマ君のままで良かったのに、なぁんで変わっちゃうんだろ。」
「あー•••。」
アリアの態度の変化にミズキはなにかを察した。
それでも午後まで時間がある。ミズキはジャージに着替える。
「私は訓練前に少し走ってきます。」
「はぁ?なに真面目ぶってんの?女なんだからなにやっても無駄。適当に訓練受けとけばいいの。」
「そうはいきません。」
「あーあ、やだやだ。無駄な努力する人って嫌い。」
「そうですか、私はあなたみたいに性別で能力を決めるのは好きではないです。」
「っ!」
アリアは鋭い目付きでミズキを睨む。なにかを言いかけたが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「では。」
そう言ってミズキは外に出た。
「むかつく!なによ!」
アリアは抱き締めていたクッションをミズキの出ていったドアに投げつけた。
山岳部ということもあり、走る道の多くは坂となっている。
(裏山の道より少し険しい。)
息が上がる。そしてなによりも酸素を取り込める量がいつもより少ない。
「雨音さん、それ以上は体に支障をきたします。」
「!」
背後から水谷の声がした。
「ここは少し高い場所ですから、いつものペースで走ってはいけませんよ。」
「すみません。」
「柊さんも同じようにしていたので、大丈夫です。」
ミズキは徐々に走るペースを落としていく。
「同室の奏さんは?」
「•••。」
あのやり取りをどう伝えたらいいのか、ミズキは困惑する。そんな姿をみて、水谷は察した。
「雨音さん、私は彼女の直属の部隊長ではないのであまりこんな事を言う立場ではないのですが、彼女を誤解しないでいただきたいのです。」
「誤解、ですか?」
水谷が止まるとミズキも合わせて立ち止まった。
「我々は生物学上、女、というものに部類されます。性別というのは身体の作り、それぞれの性的機能によって分けられているのです。ただそれだけです。能力では性別の区別はつけられない。」
「はぁ。」
「あなた方はきっと性別で能力を勝手に判断される環境になかった。しかし、他の隊員は違う。それぞれが過ごした家庭環境や背景によって、抱えてきたものがあります。だから、あなただけの価値観で話してはいけませんよ。」
釘を刺されたような言い方だ。
「雨音さん、あなたに課題を出します。なぜ、奏さんがあのような態度になったのか背景を考える。それがあなたに出す課題です。答えがわかったら、こっそり教えてください。では、戻りましょう。 」
そう言って水谷は先に行く。
モヤモヤとした気持ちを持ち、ミズキは水谷の後を追いかけた。