岡田は変わった。自分でもそれを感じていた。何かが、確実に、そして恐ろしいほどに狂っていくのを感じていた。
数週間前、彼はまだ「警察官」としての理想を信じていた。犯罪を取り締まることで、世の中は少しずつでも良くなっていくと。そのために自分ができることは何でもやるべきだと。しかし、現実はその理想を無残に打ち砕いていった。どれだけ努力しても、どれだけ無力感に耐えても、犯罪は減らない。警察の手が及ばない闇は、日々深く広がっていくばかりだった。
今日もまた、岡田は無力感に苛まれていた。机に広がる書類、未解決の事件ファイル。彼の目はそれらをただ見つめるだけで、何も手を付ける気力が湧かなかった。
「俺は何をしているんだろうな…」
岡田はふと呟く。内心では、自分が警察官としての使命を果たすことに疑問を持ち始めていた。
「こんな仕事、俺に向いてないんじゃないか?」
彼の心の中で、警察に対する嫌悪感が強くなりつつあった。確かに、彼は今まで多くの犯人を捕まえてきた。しかし、それで何が変わった?犯罪は次々と起こり続け、彼は無力感に打ちのめされる。どんなに犯人を捕まえても、世の中の闇は無限に広がり続けるように感じられた。
「だったら…」
その時、岡田の心に、ふと考えがよぎった。もし、自分が犯罪を根絶するために、直接的な方法を取ったらどうだろうか?警察の手法は遅すぎる、優しすぎる。強硬な手段で、世から犯罪を消し去ってしまえばいい。効率的に、迅速に。犯罪者を捕まえるだけではなく、根源を徹底的に断ち切ることができれば、この世界は少しでもまともになるのではないか?
その考えが、岡田の心の中で次第に膨れ上がり、ついには抑えきれない衝動へと変わっていった。もう、警察としての正義を追い求めるのはやめだ。自分が犯すことのできる「正義」を、もっと強い形で、もっと効果的に実現しなければならない。
「犯罪をなくすには、犯罪者を根絶するしかない。」
その言葉が岡田の中で決定的なものとなり、彼は動き出した。
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