テラーノベル
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じりっ……と黒い革靴の片方が数ミリこちらに寄ると同時に
「お兄様⁉もう帰ってきたの?大門様は?っていうか、このカメラは何?」
と、遥香が立て続けに聞いている。
カメラ……?
私はうつ伏せから起き上がろうと、手のひらを地面につき、先ほどまできつく掴まれていた手首に力を入れようとしたところで
「大丈夫?ひどいな…」
篤久様が私の両腕を優しく支えて、立たせてくれた。
「何を撮っているのっ?誰?」
再び甲高い声で聞いた遥香に押されたのか……それともここにいる全員がレンズに納まるようにか、カメラを構えた白いスニーカーの男性は少し後退した。
「勝手に手配された見合いの場に、知り合いのカメラマンが来てくれていたんです。私も先方も乗り気でない、社交辞令見合いだったことを彼に生配信してもらった」
篤久様にも大門様にも面倒くさいお見合いだったってこと……?
「社交辞令見合い……?」
「そうです。調子に乗って自称インフルエンサーなどと名乗る者の実態を世間に知らせるのが、今後同じことが起こらないために必要だと考えて、彼を連れて帰ったら……彼女が引きずられて来た。あなたの度重なる彼女への暴力行為が、早速配信されているということです。そちらの方も同罪ですね。後ろの保護者も毎回止められないのは同罪」
「「違う」」
遥香と池田の声が揃い、後ろの奥様はすでに震えている。
「違うのよ、お兄様っ!仕事をしない使用人を帰すだけのことよっ」
「そう。全く言うことをきかないのが悪いんだ」
「彼女にケガを負わせるのは暴力でしかない」
「言って分からないのだから、仕方なかったのよ。だいたいこの女は、私に何かにつけて反抗的なのよ、今日に限らずっ!」
最後はカメラに向かって叫ぶ遥香に、私は地獄への扉を教えてやった。
「そんな言い訳は通じない」
私はそう言いながら、自分の口角が上がったのを感じた。
「アナタ誰に向かって言っているの?」
「アナタですが?もう一度言います。アナタのどんな言い訳も通じない」
「はっ?言い訳なんかじゃなく、私は本当のことを言っているだけよ。何を言っているの?私の言うことは信じられても、底辺のアンタなんかの言うことを信じる人はいないのよ。アンタの出る幕じゃないわ」
「そうだ。家政婦ごときが発言する場じゃない」
遥香に続けて池田まで……まだ私の言うことが分からないらしい。
「全然気づいていないようなので、教えてあげます」
私がそう言うと、隣に並んで私の様子を窺っている篤久様が手を……そっと私の背中に添えた。
「これまでのアナタたちの行為はすでに世間に広く知られている。私がここへ来た初日の嫌がらせから全てが晒されているのよ。今さらの言い訳は通用しない」
「「どういうこと?」」
「【奴隷家政婦】というアカウントを見れば、すぐに分かります。あとセレブインフルエンサーのアナタのアカウントも確かめたらいいかもしれない」
「アンタなんかに何が出来るっていうのっ⁉」
そう言いながらも、遥香と池田はスマホを手にして……たった数秒で顔色を変え始めた。
コメント
6件
まずは、大門様も乗り気やなかったことは良かった😆 真奈美ちゃんには、篤久様がついとるよー💪💪💪心強いね💪💪💪💗
≧(´▽`)≦アハハハ 篤久さんお見事‼️ カメラマン連れてきて配信(*>∀<)ノ)) 面白すぎでしょ!ꉂ🤣𐤔 次も待ち遠しいですーꉂ🤣𐤔 真奈美ちゃん、良かったね。光が見えてきたよ(*´︶`*)ノ
キタキタキターーー🤩🤩🤩 生配信、篤久様の本気を感じます👏👏👏 地獄行きの片道切符の旅へ墜ちてけ〰