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夏目若葉
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月詠 涼
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#大人恋愛
坂野真夢
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第一話:午後イチの栄養サプリ
「ラン〜!おかえりー!!」
有村珊瑚(サンゴ)は、半年ぶりの出向から帰ってきた仲良しの同僚を迎えていた。
「聞いたよ!私いない間に、珊瑚んとこ、かわいーい後輩くん入ったんだって?」
「そうなのそうなのそうなの!!聞いてよ!もうほんと、超超超超可愛いんだから!」
「メロメロじゃん!」
「そーだよ!超メロいんだから!」
「ええ?」
午後休憩がもう直ぐ終わろうという15分前。
給湯室で、午後イチのためのコーヒーを淹れにきているサンゴと、蘭とあかり。
入社以来仲良しの同期三人組だったが、蘭がいない間、繁忙期もあって会えていなかった。
蘭とあかりは、普段以上に甘ったるいサナの声を聞いて、頬を赤く染め、唾をゴクリと飲みこむ。
蘭(これはもしや……?)
あかり(オフィスラブってる?)
蘭(えー!社内恋愛とか楽しすぎる!!)
とワクワクしている中……。
「ほっとうに、可愛すぎる妹ができたのっっっ!!!」
サンゴは顔に両拳を揃え、思いっきり嬉しそうに、わざとらしくあざと可愛い仕草で叫んでいた。
「妹〜〜〜!!!???」
「弟でもなくて?」
「うん!見たらわかるよー!」
サンゴの言葉を聞いた二人は、顔を見合わせて驚いてしまう。
「そうなの〜〜!超〜〜キュートちゃんだよ♡」
サンゴは満遍の笑みで、頬に手を当ててうっとりしていた。
「キュートちゃん?」
みんなの頭にハテナマークが飛び交う。
そこへ、給湯室のガラス張りの窓の向こうから、可愛らしい高い声が聞こえてきた。
「サンセーンパーイ!!!」
「リュウきゅん!!!」
((リュウきゅん?))
サナの目がハートになっているのをみて、全員がそちらの方へ振り向くと、
色が真っ白で、透明感のある焦茶色の髪の、華奢な少年のような青年が手を上げて走ってきた。
「サンせんぱーい!探したんですよー?お昼休憩の終わりに、俺の企画書みてくれる約束したじゃないですかぁ!」
「アーン!ごめんごめーん!」
「んもー!!工場さんと技術さんとのやりとりー、絶対サンゴ先輩に聞いてからじゃないとーって話しましたよね?」
サンゴを見つけて走ってくると、そばへ来てわざとらしく、拳で空気を叩くようなそぶりをする後輩くん。
蘭(そんなことする人、この世にまだいたんだ!?)
あかり(か、可愛い。こんなのがなんで可愛いんだろ?このバブみは何?)
「ごめんってー。ちゃんと見るからぁ」
「先輩の細かいトリセツないと無理ゲだし、……もう絶対失敗できないですしぃ」
甘い声で肩をくねらせている二人は、ギャル同士で会話しているようなテンションで、どこか場の空気が一気に和む。
蘭(ギャル喋りなのに、似合う……可愛い)
あかり(ぶりっ子が何故かぶりっ子に見えない不思議……てか可愛い)
感心していた二人の方へ、後輩くんはキョトンとした顔を向けた。
「あ、みなさん、サンゴ先輩のお友達ですかぁ?」
「うん!みんな同期なんだぉー!」
サンゴが後輩くんに甘い声で答えると、彼はまた二人の方を見て、目を細めて笑った。
「こんにちは!伊藤リュウジです!」
元々が切れ長の彼の目は、細めるとほぼ線だけになってしまっていた。
「「かわいー!!」」
「ね、めっちゃかわいーでしょ?キュルキュルちゃんでしょ?」
「そんなそんなあ〜」
サンゴの声に、すかさず謙遜するところも、まるで後輩ギャルのようだった。
「私の自慢の後輩ちゃんだよ〜!仲良しなんだよね〜!」
「ね〜!」
リョウジは、またにっこり目を細めて、サンゴの方を向いて頭を傾げた。
そんな完全に妹ちゃんみたいな彼の頭に、サンゴはラメネイルの光る細い指を丁寧に揃えて、いい子いい子している。
「ヨシヨシ」
蘭(んーなんか確かにめっちゃ可愛い!!!)
あかり(なるほど。これは違う意味のメロ、妹メロだわ)
あかりも蘭も、ニコッとした表情や、可愛い話し方を見て、妹という言葉に思いっきり納得してしまっていた。
「こっちは経理部の井上あかりで、こっちは出向から企画に戻った峰津蘭だよ」
「よろしくお願いします!」
「「よろしくー」」
「それじゃ、みんなうちの子のこと、どーぞよろしくね!」
真っ黒でまっすぐな髪。身長も高くて目鼻立ちのはっきりした有村サンゴは、さらっと身を翻して立ち去った。その後を、華奢なわりに、筋肉質で真っ白な陶器肌の伊藤リュウジは、軽い会釈だけして追いかけて行った。笑顔と愛嬌を振り撒く二人が並ぶ姿が、本当にまるで姉妹のようで、微笑ましく、愛らしく、倒錯的で、残った二人の心がほっこりとした気分で満たされた。
蘭「なんだろね、かわいいわ、あの二人……完全に栄養だわ……」
あかり「ああいうの、私、普段はドン引きしちゃうんだけど、めっちゃ癒されたわ……私までキュルキュルしたくなるわ……」
蘭「私の知らない四ヶ月にこんなことになってたなんて!」
あかり「私も今日初めて見たよ!びっくり!」
ふふふ。二人で顔を見合わせて、声を出して笑ってしまう。
蘭「あかりは経理だしフロア別だもんね!いやー、毎日楽しみだわ。二人のことチーム内でも推してこ……。自分まで女子力上がりそう……」
あかり「いいなあー、超楽しそうじゃん。私も企画部のフロアめっちゃ顔出そう」
蘭「二人の様子、逐一報告するから!」
あかり「楽しみにしてる!!」
春めいたままの空気を吸った二人が、まだ給湯室でウキウキしている間に、サンゴとリュウジは企画チームの席の方へ歩いていた。
「コンペの企画書だよね?」
「俺なんかが、壇上まで上がっちゃっていいんでしょうかね?」
「そりゃあ、企画書応募して一次も二次も通ったんだから、自信持ってやっていってよ!!通っただけでもすごいよ?」
「ええ〜?俺、先輩が出せって言うから出しましたけど、正直、サンゴ先輩や他の企画チームの皆さんも、全員、別々で提出したのかと思ってたのに……」
「へへへ〜いいなって思ったから、部長と話まとめてリュウくん応募させちゃた」
「騙された……」
「絶対いいと思うもん!リュウくんが最適だって!!」
「ええ〜?そうですかね……?あと、先輩、何度も言いますけど、俺リュウジですよ?」
「うんうん!!知ってるよぉ。でも、リュウくんだって、サン先輩っていうじゃん」
「先輩に合わせてわざとですけど」
「そうなの?」
みんなが働いているここ、R社は、知名度は全国区の有名な中堅飲料メーカーだ。
最近、飲料系企業は、製品開発や、工場のシステム改善や販路拡大と同じように、環境保護活動のための取り組みや、その広報も最優先事項の一つとされていた。
四ヶ月前に、企画、広報チームに配属されたリュウジの企画書を読んだ時。
サンゴは驚きのあまり震え上がった。
超大手企業で少しずつ実現されてきた100%リサイクルペットボトルを、この中小企業でも100%で採用していく方針や、その推進活動のための宣伝、販促イベントの企画書だったからだ。
それは、サンゴが長年会社でやりたいと思っていても、金銭的にも理念的にも、企業全体を動かすにも難しいと思っていた取り組みだった。それを本当にわかりやすく、全てにおいて実現可能な形に落とし込んでいて、サンゴは心底感動したのだった。
二人が隣り合ったデスクの椅子に座った後。
サンゴは、椅子をスイーっとリュウジの横にピッタリつけて、企画書を両手に持った。そして、真横にいる彼の方へ顔を向けた。
「本当に本当に大好きなの!!」
サンゴはリュウジの目を見つめ、真剣な声で伝えた。
「ええ?」
赤い顔で少し照れたのか、リュウジは彼女の方を鷹のような目で、真剣に見つめ返した。
(そんな、何だか睨んでるみたいな表情すら可愛いわ♡)
「私、この企画書が本当に最高に大好きなの。絶対、応援するから、お願い!!」
「うーん……サン先輩が助けてくださいね」
「もちろん!コンペも、企画自体を来夏に実現させるためにも、私何でもするから」
「ありがとうございます」
「じゃあ、見ていくね……」
「はい!」
久しぶりのデスクにたどり着いた瞬間。蘭は自分の席から見たサンゴとリュウジが、真剣に見つめあって「大好きなの!」とか言っちゃっているシーンを目撃してしまった。しかも、そう言われた方のリュウジは、サンゴの顔をガン見しながら、耳まで真っ赤になっていた。
「え……っと、えーあれって……」
二人の様子に釘付けになっていると、イケメンすぎてチャラいと噂の同期、八村億斗がやってきた。
「うんうん、すごい距離感だよね」
「ええ?」
「あの二人のこと気になっちゃうよね?もう付き合ってるようにしか見えないよね」
「……」
「何かがものすごく生々しいっていうか……」
八村も彼らを見つめて目を細めていた。
「はいはい。まあ、そんなことばっかり考えてる八村には、そんな風にしかみえないだろうけど……」
「何?俺が何?」
「うーん……チャラいかな」
「あん?何言って……」
「はいはい、仕事仕事」
その日から、休憩上がりの10分間。
サンゴとリュウジは二人で企画書を隅々までチェックしたり、足りないところ、アイディアをまとめていた。部長に掛け合って、本格的に社内でも動かせるように、業務中や残業中にもしっかりと取り組む申請もした。
今は大きな別のイベント前なので、時間が限られていたけれど、それでも二人で少しずつ、修正を積み上げていった。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です〜!読んだよ! 最初は社内恋愛かと思ったらまさかの「妹ちゃん」展開で笑っちゃった😂 サンゴ先輩とリュウジくんの「きゅんきゅん」「リュウきゅん」みたいな掛け合い、確かに妹と姉だね〜!でも蘭ちゃんたちが「栄養だわ」って言うのめっちゃわかる。可愛いもの見てると心がふわってなるもんね🌙 キャラ設定が細かくて、特にパーソナルカラーまで書いてあるの、作者さんのこだわり感じるな〜。続きが気になるよ!