貴方はもう居ないから、私は一人で歩いている。
いつだって隣に居るはずの貴方が居ないことを認識するたびに、
貴方が居なくなったあの夏を、あの日を、貴方の顔を思い出す。
それでも私はこの道を歩き続ける。
家に閉じこもっているより、貴方を感じることが出来るから。
毎日、特に行く宛があるわけでもなく、ブラブラ歩いている。
貴方が居なくなってすぐは、私の元へ戻ってきてほしいと、何百回も何千回も願った。
お金を積んで貴方が戻ってくるのなら、いくらだってお金を払う。
でも、もう何も求めない。
時間が経つにつれ、貴方が二度と戻っては来ないのだと、残酷な現実を突きつけられた。
これで良いんだ。
求めるものが無ければ、失うものもないのだから。
いきなり雨が降り始める。
ついさっきまでは快晴だったのに… まるで空が泣いているみたいだ。
雨のせいで視界が悪く、雨雲のせいで薄暗い帰路を、
まるで何かに追われているかのような恐怖を感じながら必死で走った。
家の中に入って電気をつけると少し落ち着いた。
暗いのが怖いなんて子供みたいだ。
私は弱いな 一人じゃ怖くて何にも出来やしない。
不意に、あの夏に戻れたら、もう一回貴方に会えたら なんて思ってしまう。
貴方が背中を押してくれたら、貴方が居なくても笑えるようになるんじゃないかって思う。
怖くても、進み続けることを止めなければ、私を心配しないんじゃないかなって。
それでも暗いのは怖い。
引き返したくなってしまう。
心臓が警鐘を鳴らしている気がするんだ。
本能が光を、絶えることのない温もりを求めているみたい。
昨日悪い夢を見たんだ。
貴方が私から手を離して消えてしまう夢。
見果ててしまった希望に見覚えのある淡い残像をいた気がして。
あぁ…このまま生きていくだけじゃ辛いかな なんて思ったりした。
あの日を、今日を何回繰り返そうと同じことを願うだろう。
だからせめて、私という物語を読み返しても嘘が無いように生きていたい。
そのためには、初めの一歩を踏み出したら後ろを過去を振り返らないように走り抜けることだ。
私と言う物語は毎日が旅と冒険で溢れている。
何も無い場所を旅して冒険する。 とても順調だった。
貴方も旅がしたいと言っていた。
私が一人でも大丈夫になったら、その夢をもう一回追ってほしい って言いたい。
今は闇の中だけど、貴方にそれを言えた時、私は果てしなく長い闇から抜けるんだろう。
だから、あの夏を今もう一回。
貴方がいなくても笑って生きていけるから、貴方も未来に踏み出して。
踏み出そうとした時、私も貴方も絶え間ない光を、青い空を見上げているから。
諦めないで、もう一度変わらない今日を乗り越えていって!