残念ながら、彼を倒すこと、厳密には彼を生かしたまま倒すこと、は俺にとっては極めて困難なことだ。ウィテカー先生をおそらく俺は簡単に殺してしまうか、致命傷を与えてしまうかも。講義で使用するのが模造刀でよかったな。
「ああ。どうだ?」
「あんまり期待はしないでくださいね、ウィテカー先生。」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
「あれがジョー・アルヴィアンか。」
「思ってたのと違うな。」
「彼ってすごい美青年ね。」
色々学生たちは俺について噂話をしている。
「本当にアルヴィアンらしいな。見るからに明らかだ。貴族としての矜持が足りない。」
そんなことを言う学生も。彼はグッゲンハイム公爵家の子息か。グッゲンハイム公爵家。この国で最も歴史のある公爵家で、『腐った貴族』についてのあの帳簿にも名前は載っていた。俺は無詠唱で彼の口を閉ざしてやる。周囲の人間を観察すれば、彼らがどんな人間かわかる。俺はそう思っている。そして俺の分析にすると、馬鹿なグッゲンハイム公爵子息は俺、ジョー・アルヴィアンが彼の口を無詠唱の魔法で閉ざしたとは決して気づくことがないし、そう考えることすらしていないだろう。