テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#離婚
#ヒトコワ
#仕事
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
法廷に「求刑、死刑」の重い言葉が響き渡った直後
私の元に、莉奈の遠縁を名乗る中年の男女が、一人の幼い赤ん坊を抱えて現れた。
「詩織さん…莉奈が獄中で産み落としたこの子は、紛れもなく直樹の子です。直樹が死ねば、この子には彼の『血』だけが残される」
「……あなたがルーツ・ガーデンで掲げている『自立支援』の理念が本物なら、この子の養育費、一億円ほど工面してもらえませんか?」
彼らの目は、赤ん坊の将来を案じているのではない。
直樹と莉奈という「負債の塊」から、最後の一滴まで金を絞り取ろうとする、卑劣な守銭奴のそれだった。
私は、泣きじゃくる赤ん坊を一瞥した後、冷たく微笑んだ。
「……私の帳簿に、その子の名前を書き込む余地は一円分もありません」
「なっ、なんて冷酷な! あなたは子供を守る活動をしているんじゃ……!」
「私が守るのは、自らの足で立とうとする者です。……あなたたちがやろうとしているのは、直樹の血縁という『不良債権』を私に押し売りし、自分たちが利ざやを稼ごうという卑しい商売でしょう?」
「……その赤ん坊は、あなたたちの私欲のための『担保』ではないわ」
私は、バッグから一通の調査書を取り出し、彼らの前に突きつけた。
「山崎さんに調べさせました。その子は莉奈が獄中で産んだ子ではありません」
「莉奈が以前から囲っていた別の男との間にできた子、である可能性が、DNA鑑定の端緒から浮上しています。……あなたたちは、私に対して『詐欺』という名の無謀な投資を仕掛けたのよ」
男たちの顔から血の気が引いていく。私は追い打ちをかけるように言い放った。
「その子は、適切な公的機関に引き渡します。あなたたちが介入する余地はない。……そして、今ここでこの子を利用しようとした罪。その『代償』は、法廷でたっぷりと支払ってもらいます」
彼らが逃げるように去った後、私は静まり返ったオフィスで、父の万年筆を握りしめた。
直樹も莉奈も、そして彼らに群がる者たちも。
最後の一瞬まで「血」や「縁」という目に見えないものを換金しようと足掻く。
けれど、私の人生の価値はそんなものには左右されない。
【残り31日】