帰国してやっと会えたのに、やってしまった。
イタリアにいた間に阿部ちゃんが体調を崩していた事を知らなくて、全くそんなつもりはなかったのにヒートアップしてかなり強く責めてしまった。
時差ボケと長時間フライトで心身が整わなかったのは言い訳だ。
阿部ちゃんの仕事が押して会うのが遅くなったのも不可抗力で、阿部ちゃんに非はない。
ただ、それらと話してくれなかった事、阿部ちゃんの変化に気づけなかった自分、全てが重なって怒りに変わってしまった。
俺のために敢えて隠そうとしたのもわかっている。それでも恋人として心配させて欲しかった、お見舞いの言葉をかけたかった。
たったそれだけの気持ちすら、うまく伝えられなかった。
自分の家だけど、『ちょっと出てくる』と部屋を出た。
完全に萎縮して声が出ていない阿部ちゃんに、これ以上何か言う事はできなかった。
暖かくなってくるから、花粉に悩まされそうだねとさっきまで話していたところだ。
それでも夜はまだ肌寒い。
大股で歩きながら最初は制御できなかった理由を一生懸命探していたけど、伝えたかった事がまとまってからは段々歩幅が小さくなり、一体何をしていたんだろうという思いでいっぱいになり、やがて立ち止まる。
怯えて開かれた目が思い出されてやるせ無い。
帰ってしまっただろうか、それともショックで動けずにまだ家にいるだろうか。
30分ほどして帰宅すると、鍵はかかっていなくて阿部ちゃんの靴もなくなっていた。
鍵の閉め忘れなんて珍しいけど今日ならあり得るなと反省しながらリビングに入り電気をつけると、テーブルの上に見慣れない小さな箱があるのに気づいた。
コメント
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喧嘩…?🥺🥺