「恵ちゃん?」
涼さんはすぐに秘所に触れていた手を引っ込めようとしたけれど、私はとっさに彼の手首を掴んだ。
「違うの。……もっとして。……涼さんが……っ、――――す、……好き、で、……信じていいんだって思ったら、勝手に涙が出ちゃって、……だから、……やめなくていい。……もっと、……してほしいんです」
頭の中は荒れ狂う感情でグシャグシャになり、理路整然とした言葉が出てこない。
けれど涼さんは「ん、分かった」と理解したあと、私の唇をチュッとついばみ、優しいキスをしながら、もう一度蜜洞に指を埋めてきた。
「ん、……ん、ぅ……」
私は涼さんの首に両腕を回し、塞がれた唇からくぐもった声を漏らす。
ゆっくりとした動きで蜜壷を出入りしている指の感触には、まだ慣れていない。
けれど相手が涼さんだからこそ、落ち着いて受け入れる事ができる。
口内に挿し込まれた彼の舌を舐めた時、私は太腿に〝何か〟を感じて「ん?」と声を漏らした。
感じた事のない感触が不思議で頭をもたげると、涼さんは「ああ……」と思い当たった声を出し、照れくさそうに言う。
「恵ちゃんが魅力的だから勃っちゃった。ごめん」
「たっ……」
その言葉を聞き、私は目を丸くしてまじまじと彼の下腹部を見た。
(えええええ~~~~!?)
二十六歳だし、彼が性的興奮を得て勃起した事ぐらい分かっている。
でも、まさかこの一連の行為で、私なんかに触れているだけで涼さんみたいなイケメンが反応するとは思わなかった。
パジャマの生地はゆったりしているので、エロ漫画に出てくる描写みたいにアレの形がくっきり分かるなんて事はない。
けど、よく見てみると、少し生地が盛り上がっているような……?
目をこらしてしげしげと見ようとしたからか、涼さんは上体を上げて悪戯っぽく笑い、ズボンのウエストゴムに手を掛けた。
「見る?」
「いやいやいやいやいやいやいや!!」
尋ねられ、私は全力で拒否し、なんなら両手をブンブンと振る。
「……そんなに拒否らなくても」
涼さんが少しガッカリしたように言うので、私は思わず突っ込んでしまう。
「そんなに見せたかったんですか?」
「やっぱり恵ちゃんは面白いね」
彼はクスクス笑い、私の頭を撫でてくる。
「……あ、あ……。す、すみません。……ムードのない事を……」
我に返った私は両手で胸元を覆い、今さら真っ赤になってボソボソと言う。
「触ってみる?」
「えっ!?」
いきなりそう言われ、私はギョッとする。
すると涼さんはパジャマのボタンに手を掛け、ポツポツと外していく。
「えっ!? えっ!? ちょっ、待っ!?」
うろたえた私は起き上がり、ベッドから下りて逃げるべきか迷い、まるで盆踊りでも踊っているかのように腕を彷徨わせる。
「はい、タッチ」
と、涼さんは私の手首を握ると、自分の胸板に触れさせた。
「えぅっ」
とっさに変な声を漏らした私は、反射的に手をグッと引いたけれど、涼さんは離してくれない。
「触っても妊娠しないよ」
おかしそうに笑う涼さんはそう言うけれど、初心者の私からすれば、恋愛対象として見る男性の胸板に触るなんてハードルが高い。というか……。
「涼さんと話しただけで想像妊娠する女性がいそう」
「はい!?」
彼は目を見開いて驚いたあと、横を向いて「ぶふぅっ」と噴き出し笑い始めた。
その反応を見た私は、自分が突拍子もない事を言ってしまったと自覚し、慌てて謝る。
「すっ、すみません! 変な事言っちゃって……。そ、それぐらい格好いいっていうか。声もいいですし、……涼さんの顔を見ただけで、想像妊娠する女性って絶対いるでしょ……」
「ちょっと待って! おっかし……」
涼さんは私の手を握ったまま、クスクスと笑い肩を震わせる。
(やっちまった……)
せっかくいい雰囲気になっていたのに、台無しにしてしまった。
涼さん、あわよくばあのまま押し流して、エッチしたいって思ってなかったかな。