テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
退院の日。
朝から病室はどこか落ち着かない空気だった。
荷物をまとめ、退院の手続きを終えれば、いよいよ病院を出る。
「ついに退院か。」
深澤が荷物を肩に掛ける。
「長かったような、短かったような。」
渡辺も頷いた。
今日は退院だけではない。
このあと事務所へ向かい、九人全員で今後について話し合う。
期待もある。
不安もある。
そんなことを考えていると──
コンコン。
病室のドアがノックされた。
「どうぞ。」
阿部が返事をすると、ドアがゆっくり開く。
そこに立っていたのは目黒だった。
目が合う。
「めめ。」
その名前を呼んだ瞬間だった。
目黒は迷うことなく阿部のところまで歩いてきた。
そして何も言わず、そのまま阿部をぎゅっと抱きしめた。
「……!」
阿部は一瞬驚いたものの、すぐにその背中へ腕を回す。
何日ぶりだろう。
目黒の腕の中は、相変わらず安心できる場所だった。
少し離れたところから、くすっと笑う声が聞こえた。
「犬みたい。」
深澤だった。
渡辺も腕を組みながら笑う。
「待て、できなかったんだね。」
目黒は抱きしめたまま二人をちらっと見て笑う。
「無理。」
「できなかった。」
「退院したら最初にハグするって決めてたから。」
阿部は少し照れながら目黒の胸を軽く叩く。
「みんな見てるよ。」
「いい。」
目黒は真顔で答えた。
「今、充電中だから。」
「充電?」
深澤が吹き出す。
目黒はようやく阿部から少しだけ離れると、照れくさそうに笑った。
「ここから事務所まで運転するでしょ。」
「運転中は、しゃべる余裕ないから。」
「今のうちに充電。」
その独特な表現に、病室中が笑いに包まれる。
「なるほど。」
渡辺が頷く。
「充電式のワンちゃんだったんだ。」
「そういうこと。」
目黒は得意げに頷いた。
阿部は思わず笑ってしまう。
さっきまで張りつめていた緊張が、不思議なくらい軽くなっていた。
目黒のハグは、何度抱きしめられても心地よい。
安心できる温もりだった。
荷物を持ちながら目黒が言う。
「今日は俺の車。」
「ふっかさんとしょっぴーも乗って。」
「一緒に事務所まで行こう。」
#BL
kaede🍁
15,916
おその★
19,661
篝火

1,430
深澤が少し驚く。
「いいの?」
「もちろん。」
「九人で話す前に。」
「三人とも無事に送り届けるから。」
渡辺は静かに頭を下げた。
「ありがとう。」
四人は病室をあとにする。
廊下を歩き、エレベーターへ乗り込み、一階へ。
手続きを終えると、病院の玄関には目黒の車が待っていた。
荷物を積み込み、それぞれが乗り込む。
エンジンが静かにかかる。
病院を離れた車は、ゆっくりと事務所へ向かって走り出した。
コメント
2件

静かに🖤💚の会話が落ち着く 待ての出来ない大型犬 それを見て笑ってる 微笑ましい。 これから始まる どんな展開なのか 楽しみ良い方向に進んで欲しい 続き待ってます♪
みぅです🖤 第36話、お疲れさまです…! 退院のシーン、すごく温かかったです。 目黒くんが「充電中だから」って言って阿部くんをぎゅっと抱きしめるところ、もう本当に尊すぎてやばかったです…! 深澤くんと渡辺くんの「待てできなかった」発言も可愛くて、笑っちゃいました。 張りつめてた空気が四人のやり取りでふわっと軽くなって、読んでるこっちも安心しました。 九人での話し合い、どうなるんだろう…続きも気になります! ありがとうございました🌙🤍