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#BL
kaede🍁
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おその★
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篝火

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病院を出た車は、事務所へ向かって走り出した。
目的地までは、およそ三十分。
これから待っている話し合いのことを考えると、自然と緊張してしまう。
その空気を変えたのは阿部だった。
「ねぇ。」
「女の子になった今。」
「これからやってみたいこと。」
「いっぱい話そう。」
渡辺が吹き出す。
「急に前向き。」
「その方が楽しいじゃん。」
阿部の一言に、深澤も表情を緩めた。
「じゃあ俺から。」
「美容院に行きたい。」
「最近流行りの髪型にしたい。」
「3人一緒に予約出来る所行こうよ。」
渡辺も負けじと手を挙げる。
「俺は。」
「メイクをちゃんと覚えたい。」
「みんなに笑われないくらい上手になりたい。」
「いや、みんな笑わないでしょ。」
阿部が笑う。
「じゃあ。」
「俺は旅行。」
「みんなで静かな旅館に行きたい。」
深澤が頷く。
「いいね。」
「浴衣着たい。」
「温泉街歩きたい。」
渡辺も乗ってくる。
「食べ歩きも。」
「絶対する。」
話題は次々と変わっていく。
「遊園地も行きたい。」
「プリクラも撮りたい。」
「服もいっぱい買いたい。」
「ネイルも興味ある。」
「コスメも集めたい。」
「女の子同士でカフェ巡りとか。」
「九人でバーベキューもしたい。」
笑い声が絶えない。
車内はいつの間にか、病院を出た時とは別の空気になっていた。
前向きな夢を話していると、不思議と不安が少しだけ小さくなる。
運転席の目黒は、バックミラー越しに三人をちらりと見る。
話に参加することはできない。
だから黙ったままハンドルを握る。
それでも三人の話は、ちゃんと聞こえていた。
楽しそうに未来を語る三人。
目黒は思わず口元を緩める。
(全部。)
(叶えてあげたい。)
一人では難しいことも、九人ならきっとできる。
(メンバー全員で。)
(全部叶えよう。)
心の中で、そっとそう誓う。
やがて車は見慣れた景色へ入っていく。
大きなビルが見え始めた。
「着いたよ。」
目黒が短くそう告げる。
笑い声で満たされていた車内は、一瞬だけ静かになる。
三十分前とは違う。
不安はまだある。
それでも3人は、少しずつ前を向けるようになっていた。
車はゆっくりと事務所の駐車場へ滑り込んでいった。
コメント
1件
読了しました。第37話、とても温かい回でしたね。病院という重たい場所から車内での「やってみたいこと」トークへの切り替えが自然で、阿部さんの「いっぱい話そう」という一言で空気が柔らかくなる流れが見事でした。美容院、メイク、旅行…みんなで未来を語ることで不安が少しずつ小さくなっていく感覚、すごく伝わってきます。運転席の目黒さんが「全部叶えてあげたい」と誓うラストもグッときました。九人で叶えていく、その景色が楽しみです。