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#ロブロックス
pizzeria.☆
644
The Banlands――運営に切り捨てられた者だけが落ちる、世界の最果て。
その閉ざされた門は、ついに破壊された。
チャンスの莫大な資産。
闇市場の裏ルート。
マフィオソの包囲網。
そして、ギャンブラー自身の人生すべてをチップに変えた狂気の大博打。
その全部を燃料にして、iTrappedはついにEllernateとCaleb244をBanlandsの奈落から引きずり上げた。
計画は成功。
完璧だった。
本来なら、ここで終わりだった。
冷酷な詐欺師は役目を果たし、利用価値を失った駒を捨て、仲間たちの元へ帰る。
最初から決まっていたシナリオ。
それが、“正しい結末”だった。
なのに。
地上数百メートル。
眠らない巨大都市を見下ろす、超高級ホテル最上階のスイートルーム。
巨大なガラス窓の前で、iTrappedは一人、赤ワインを揺らしていた。
夜景がグラスの中で滲む。
青いシャツの襟元は気だるげに開き、黄緑色のパンツのポケットへ片手を突っ込んだまま、彼は無言で街を見下ろしている。
その頭上。
一度は砕け散ったはずの《氷の王冠》が、再び彼の頭を締め付けていた。
けれど以前とは違う。
歪だった。
ひび割れ、溶け跡を残しながら、それでもなお絶対零度の冷気を放ち続けている。
まるで、壊れたまま再生した呪いみたいに。
iTrappedは理解していた。
自分は、去れなかったのだ。
Ellernateを救った。
Caleb244も取り戻した。
義務は終わった。
それなのに。
脳裏から離れない。
硝煙の中、自分へ全運命をベットした男の瞳が。
あの剥き出しの眼光。
狂った笑み。
「全部お前に賭ける」と言い切った、救いようのないギャンブラー。
あの男のいない世界は、Banlandsより冷たかった。
凍えるほど退屈で。
息が詰まるほど空虚だった。
「――なに黄昏れてんだよ、俺の可愛いペテン師」
背後から、低い笑い声が落ちる。
振り返らなくても分かる。
チャンスだった。
新調された黒スーツは相変わらず身体に完璧に馴染み、黒いネクタイは無造作に緩められている。
その顔には、いつものサングラス。
だが、その奥の目が今どんな愉悦に濡れているか、iTrappedには痛いほど分かっていた。
自分が去れなかったことを。
戻ってきてしまったことを。
この男は、とっくに見抜いている。
「下、見たか?」
チャンスはワイングラスを片手に、窓の外を顎で示した。
ホテルの周囲には、黒塗りの車列。
ソネリーノファミリーの残党。
毒親どもの私設部隊。
運営側の監視。
街中の裏社会が、二人を探している。
指名手配犯。
賞金首。
世界中から狙われる側。
普通なら人生終了だった。
なのにチャンスは、楽しそうに笑う。
「最高だろ?」
グラスが軽く触れ合う。
チィン、と乾いた音。
「今までのどんな裏レートよりスリルあるぜ。街中全部が敵とか、もう脳髄焼けそうだ」
その声は、幸福そのものだった。
財産を失い。
家族を敵に回し。
命を狙われ。
それでも今のチャンスは、人生で一番“生きている”。
彼はグラスを置くと、そのままiTrappedの腰を抱き寄せた。
王冠から漏れた冷気が、チャンスの黒スーツを白く凍らせる。
けれど彼は離さない。
むしろ快楽みたいに吐息を漏らした。
「……本当に、救いようがないね」
iTrappedは静かに呟いた。
指先でチャンスのサングラスを押し下げ、その奥の瞳を覗き込む。
「君は全部失ったんだよ。僕に騙されて、利用されて、人生ごと破滅させられた」
冷たい声。
けれど。
チャンスのネクタイを締め上げる指には、狂気みたいな独占欲が滲んでいた。
二度と誰にも渡さない。
世界の果てまで連れていく。
そんな歪んだ執着。
チャンスはそれを感じ取ると、ゆっくり笑った。
「ハッ……だから言ったろ」
サングラスを外し、床へ落とす。
露わになった瞳が、至近距離でiTrappedを捉える。
「俺の運は、全部お前に賭けたんだ」
低く。
甘く。
逃げ場を塞ぐみたいな声だった。
「お前が俺をどう騙そうが、その裏のイカサマごと愛してやるよ」
そのまま、チャンスはiTrappedの首へ腕を回す。
「……まだ終わってねぇだろ? 俺たちの命懸けのゲームは」
友情なんてない。
まともな愛情もない。
あるのは。
悪意。
依存。
執着。
支配欲。
互いを壊し合いながら、それでも手放せない、最悪の関係。
iTrappedはゆっくり笑った。
妖しく。
冷たく。
蕩けるほど危険に。
「いいよ」
氷の王冠が、ピキ、と鳴る。
「君が完全に破産して、命まで使い潰すその瞬間まで……僕の檻から、一歩も逃がしてあげない」
次の瞬間。
二人は同時に唇を奪い合っていた。
激しく。
息が止まるほど深く。
赤ワインの香り。
凍える吐息。
噛み殺した笑い声。
窓の外では、追手たちのサイレンが遠く響いている。
まるで祝福みたいに。
世界中を敵に回した詐欺師とギャンブラーは、その夜、最上階のスイートルームで再び互いを賭け合った。
終わることのない、ハイリスク・ゲーム。
黄金みたいに眩しく。
絶対零度みたいに冷たい。
救いようのない二人だけの地獄は、まだ始まったばかりだった。
………END
コメント
2件
やっぱBADENDでもハッピーエンドでも良いですね......もしかしたら結婚するかも....