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#🐢投稿
(ゝω・) ねこウサギ
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夜のカジノ『レディ・ラック』は、今日も嘘と欲望の匂いで満ちていた。
ルーレットの回転音。
チップの擦れる音。
酒と煙草と、負け犬のため息。
その喧騒から切り離された、照明を極端に落としたバーカウンターの隅で――本来なら絶対に隣り合うはずのない二人の男が、完全に“人生に疲れた顔”で酒を飲んでいた。
一人は、頭上に氷の王冠を戴く脱獄者、iTrapped。
鮮烈な黄色い髪は乱れ、青いシャツの襟元は珍しく緩んでいる。王冠から漏れ出す絶対零度の冷気も、今日はどこか元気がない。カラン、とグラスの氷を揺らした彼は、深く長いため息を吐いた。
「……信じられるか、ドン」
低く掠れた声。
その隣では、縦縞のフェドラ帽を目深に被ったソネリーノファミリーの首領――マフィオソが、無言で胃薬の瓶を睨みつけていた。高級スーツの胸元では、金色の懐中時計のチェーンが鈍く光っている。
「俺はあいつを、“完璧な駒”として利用するつもりだったんだ」
iTrappedは投げやりに頬杖をつき、氷の王冠を指先で押さえた。
「なのに昨日、あのギャンブラーが何をしたと思う? 『幸運の象徴だ!』とか抜かして、体重10キロの巨大黒うさぎを俺の部屋に放ちやがった。……あの化け物、俺の黄緑のパンツを牧草だと思って噛み千切ったんだぞ」
「フン……」
マフィオソが鼻で笑う。
「その程度で済んだなら幸運だ、詐欺師」
低く重たい声だった。
「奴はゲーム中、私が仕込んだ完璧なイカサマを見抜いた挙句、『ドンのネクタイ、縞の角度がダサすぎてカードの裏まで透けて見える』と言い放った」
「ハッ」
「しかも、その直後に“賞品”を奪って逃げた。……あれ以来、私は三時間以上眠れていない」
「それはあんたのセンスが終わってる」
「貴様の信号機みたいな服よりマシだ」
互いに睨み合いながら、同時にグラスを煽る。
敵同士。
本来なら喉元に銃口を突きつけ合う関係。
だが今この瞬間だけは、“チャンスという天災の被害者同盟”として、奇妙すぎる連帯感が成立していた。
「……なぁ、ドン」
iTrappedがぼそりと呟く。
「いっそあいつ、毒親の実家に永久監禁された方が世界平和なんじゃないか?」
「その割には、先日ヘリで連れ戻されかけた時、貴様ずいぶん必死に追っていたようだが?」
「俺の駒だからだ。勝手に持って行かれると困る」
「奇遇だな。私も“賞品”を取り返すまでは、奴を他人に渡すつもりはない」
沈黙。
グラスの氷が、静かに鳴る。
口では「駒」だの「泥棒」だの言っている。
だが、二人とも気づいていた。
iTrappedは知っている。
Banlandsの悪夢に飲まれそうになる夜、自分の隣でサングラス越しに笑いながら「お前の嘘が一番スリルある」と囁く男の存在に、どれだけ救われているか。
マフィオソも知っている。
自分の仕込んだ八百長を真正面から踏み潰し、命を賭けた笑顔でカジノを荒らしていった、あの自由で傲慢な若造にどれほど執着しているか。
つまり。
二人とも。
あの救いようのないギャンブラーのことが、狂うほど好きなのだった。
「……まぁ」
iTrappedが、少しヒビの入った氷の王冠を直しながら呟く。
「あいつの弾く『きらきら星』……壊滅的に下手だけど、まぁ……聞けなくはない」
マフィオソはフェドラ帽の影で、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「……フリントロックを自慢げに構えている時の顔だけは、嫌いじゃない。ほんの少しだけな」
その時だった。
「おーーい!! トラップくーん!! マフィーー!!」
場違いなほど明るい声が、静かなバーに響き渡る。
黒スーツ。
黒いフェドラ帽。
サングラス。
そして脇には、マフィオソの懐中時計を首からジャラジャラ下げた巨大黒うさぎ“スペード”。
チャンスだった。
しかもその手には――見るからにヤバいダイナマイトの束。
導火線付き。
めちゃくちゃ本物。
「見て見て! 闇市場で“絶対に不発にならない導火線”買ってきたんだ! 今から火つけて、どっちが長く持てるか勝負しようぜ! 負けた方がジェラート奢りな!」
満面の笑みだった。
iTrappedとマフィオソは、無言で顔を見合わせる。
氷の王冠に、ピシッ……と限界のヒビが入った。
「……マフィオソ」
「なんだ」
「あの火薬、あんたのところの品じゃないですよね」
「誓って違う。我がファミリーでもあんな狂気は扱わん」
「ですよね」
数秒の沈黙。
そして。
「……逃げます?」
「ああ。全力でな」
次の瞬間。
二人は完璧に息の合った動作で立ち上がると、ダイナマイトを抱えて笑顔で導火線に火をつけようとしているチャンスを置き去りにし、全速力で非常口へ走り出した。
「え!? ちょ、待って!? 一人でやるの怖いって!!」
「知らん!!!」
「あとツケは全部お前持ちだ!!!」
絶対零度の詐欺師。
裏社会のマフィアのドン。
本来なら永遠に交わらないはずの二人は、その夜だけは、完全に同じ気持ちだった。
――“あのギャンブラー、本当に手に負えない”。
コメント
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被害者とは言ってるけどどっちも執着してるのがいい...!!!チャンスは闇市場で何買ってるのやら..