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「アック様、こっちですこっちー!」
エルフであるサンフィアにも専用魔石が出来た。それがきっかけというわけでも無かったが、イーク村に留まる意味が無くなってしまった。
そんなこともあり、おれたちはルティの先導で王国があったとされる城に向かうことに。シーニャとミルシェからは特に異論もなく、黙ってついて来ている。
サンフィアはおれの隣を歩いているが、よほど嬉しいのか魔石をずっと眺めてうっとりしまくりだ。
イーク村から進む道は全て岩肌が露わになった洞窟が続いている。状況が見えていないのか、よそ見をしているサンフィアは何度も転びそうになっていた。
「……夢中になるのはいいが気を付けてくれよ?」
「す、少しくらいいいではないか! 我にだって貴様以外に夢中になるものくらいあるのだぞ!」
サンフィアはシーニャたちと違い、途中で行動を共にすることになった。様子を見る限り、実力差を相当気にしていたらしい。それが今、魔石を手にしたことでようやく素直な感情を出したようだ。
「アック様アック様!! 大変ですーー! こっちへ来てくださいー!!」
しばらく敵どころか罠にもかからずに歩いていたら、ルティが騒いでいる。どうやら城への入口を見つけたらしい。ルティの声に反応して、シーニャとミルシェが先に進んだようだ。
しかし――
「アック! 早く来るのだ!! よく分からないけど大変なのだ」
シーニャが手をぶんぶんと振りながらおれを呼んでいる。横穴があるらしく、そこから行けるようだ。
「サンフィア。そろそろ魔石をしまっていいか?」
「……む? 専用魔石なのに、何故貴様に預けなければならない?」
「ガチャをする時に必要だからな。それに専用魔石といっても君自信がその魔石で何かが出来るわけじゃない。それは理解して欲しいんだが……」
「断る。我の魔石はエルフ族のものでもある。魔石で何かするなど考えてもいないぞ! 我のお守りなのだからな!」
お守りと言われてしまうと強くは言えそうにない。サンフィアの魔石はエルフ専用のような気もするし、ここは彼女に預けたままにした方が良さそう。
「分かった。そういうことならそのままでいい。ガチャをして欲しい時は渡してくれればいい」
「当然だ」
変な所でプライドが高いようだ。
しかし、言われないだけで実はシーニャたちも専用魔石を持っておきたいのだろうか?
彼女たちが何かの恩恵が得られるとしたら持たせてもいいかもしれない。
「シーニャ、どうした? この奥に入口があるんだろ?」
「ウニャ……ドワーフが疑ってばかりなのだ。アックが解決するのだ!」
「疑い?」
「とにかくこっちなのだ! 早く早くなのだ!」
「こ、こら……そんなに引っ張らなくても」
何を言っているのか分からないが、シーニャに引っ張られながら奥へ進んだ。横穴からしばらく進んだ先には、首を傾げている二人の姿があった。
どうやら行き止まりのようだが。
「アックを連れて来たのだ!」
「遅かったですわね。まぁ、急いだところでご覧の有様ですけれど……」
「あぅぅ~はうぅぅ~……おかしい、おかしいですよぉぉ」
ミルシェは冷静にしているが、ルティは今にも泣き出しそうにしている。
どうやらここが例の入口付近のようだ。
「――で、ルティ。ここから城に行ける……いや、来たんだな?」
「そうなんですよぉぉ!! 本当にここから来たんです~それなのに~……」
「どう見ても壁だな。塞がっているのか塞がれたのかは分からないけど」
「ここには本当にアーチ状の入口があるんですよぉぉ!」
ルティの様子を見る限り、嘘をついているようでは無さそう。しかし、完全に岩の壁が見えているだけで確かめようがない。
「……ふん、そこをどけ! 我が邪魔な岩を吹き飛ばしてくれる! それに、そこの娘の言っていることは確かだ。我もそこから来たのだからな!」
「む、そうなのか。だったらおれが飛ばしても――」
「精霊の試し撃ちをする! それに、貴様では正確な入口の位置までは分からないだろう?」
ゆっくりとしていたサンフィアが横穴に入って来る。しかも早速精霊の力を使って、塞がれた岩壁を吹き飛ばすらしい。
「それならやってみてくれ」
横穴自体が狭いこともあって、サンフィア以外の彼女たちには後ろに下がらせた。さらには、ミルシェの防御壁で巻き添えにならないようにした。
「――時は来た! 我はエルフの賜りを備うる者。我を導け! 《ゼファー》!!」