テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
篠原愛紀
#独占欲
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ベッドがまだ届いていない新居の床。フローリングは硬く、背中には鈍い痛みが走る。
けれど、静まり返った部屋に響く二人の鼓動と、僕の胸板に顔を埋める彼女の体温が、その痛みさえも愛おしいものに変えていた。
「……私と結婚して本当に後悔しない?陽一さんの人生、私に振り回されて終わっちゃうかもしれないのが申し訳なくて……」
彼女の声は、冬の夕方の闇に溶けそうなほど心細く震えていた。僕は、彼女の髪を優しく撫で、迷いのない言葉を口にした
「……後悔なんて、一度も……。白石さんに振り回されるのは、僕の人生の『必須条件』みたいなものなので」
「陽一さん……私と結婚してくれる?」
「もちろん。……というか、僕の方こそお願いします」
白石さんの瞳はわずかに潤んでいた。 彼女は安心したように僕の首筋に腕を回す。
僕たちはどちらからともなく唇を重ねた。
それは情熱的なものとは違う、お互いの存在を慈しむような、静かで長い口づけだった。そのままもう一度、僕は彼女を強く抱きしめた。