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私達は学校に到着して、華ちゃんと一緒に教室へと向かった。そして入るや否や、一人のクラスメイトが興奮気味に話しかけてきた。
確か、名前は水野さんだったっけ。まだ入学したてでクラス全員の名前を覚えてないんだよね。それにしても、はて? どうしたんだろう?
「本当にありがとう曽我部さん!」
「え? 私、お礼を言ってもらえるようなことなんかしたっけ?」
「この前、相談に乗ってくれたじゃない!」
「相談? あ! 思い出した! あれだよね、居残りで補習をさせられた時に好きな男子がいるって話してくれたやつ」
「そうなの、それそれ! あれから私、勇気を出して告白したんだ!
「おお! すごい!」
「ありがとう! でね、そしたら彼とお付き合いできることになったの!」
……え?
「あんなにカッコいい人、私なんかじゃ釣り合わないと思って諦めてたんだけど、曽我部さんが相談に乗ってくれたおかげで、勇気をもらえて。それで告白できて。だから全部、ぜーんぶ曽我部さんのおかげだよ!」
「そ、そうなんだ」
まただ。また不思議なことが。いつからだったっけ? 確か中学三年生くらいだったかな。よく覚えていない。でも、私に恋愛相談を持ちかけてくれた人は何故か全員告白に成功している。
「偶然、だよね……」
不思議なのはそれだけじゃない。そもそも、どうして皆んな、私なんかに恋愛相談を持ちかけてきたんだろう? だって私、恋愛経験ゼロだから。そんな人に恋愛相談なんて普通するものだろうか。不思議だ。
でも、まあいいか。悪いことが起きてるわけではないし。
「あ!」
「どうしたの」
そうだ! きっと今ならオーケーしてくれるはず!
「改めておめでとう、水野さん。それでね、私もちょっとお願いがあって。ぜひ、ぜひ! 今日提出予定の宿題を写させて――」
「優ぅちゃーん」
華ちゃんに襟元をグイッと掴まれて、水野さんからどんどん離されていく私。なんでそんなことするの! アイドルの握手会だってこんな乱暴に剥がしたりしないでしょ! せっかく恥を忍んでお願いしたっていうのに!
「水野さんが断りづらい状況になった途端、宿題写させてとかサイテーなことしないの! あ、水野さん。気にしないでいいからね」
「そ、そんなあ。じゃあ私は一体誰に宿題を写させてもらえば……って、引きずらないで! お願いだから! 見られてる! 男子に見られてるから! 男子の中に白馬に乗った王子様がいたらどうするのよ!」
「幼馴染の優しさだと思いなさい。あと、今の優ちゃんなんかに好意を抱くような男子がいるわけないじゃないし、今朝も言った通りもう手遅れだから。とりあえず、まずはその性格を直しなさい」
「酷いよぉーー!!」
『第二話 私の不思議』
終わり