寧々にタオルを渡し、一旦自分のパーカーを手渡した。
「風邪をひいてしまうよ。」
暖かいココアを差し出し、ソファに誘導しながら、寧々に言った
寧々は返事もせず、目の焦点が合わず、手もかすかに震えている
「話してくれるかい、…さっきのことを」
泣いているのか、雨に濡れただけなのか
とにかく酷い顔をしていた
震えた声で、寧々は言った
「隣の席の子…同じ、劇団の子で…」
今にも泣き出しそうな、中学生とは思えないような
小さな子供のような声だった
「わたしが…失敗したからっ、練習が足りてなかったから…」
寧々が失敗してしまったショー
彼女があのショーのために、どれほど頑張ってきたのか知っている
「劇団だけじゃなくて、クラスにも広められて…っ、でも、わたしが」
過呼吸気味になった彼女の背中をさする
久しぶりにまともに話せたと思ったらこんな話なんて
僕らはどうして
「ゆっくりでいいよ。無理をしないで。」
息を整えた彼女は、もう一度話し始めた
「今までは、悪口言われるとか、そのくらいだったのに、物は隠されて、落書きされて、殴ってきたことだってあった」
だから、と
そう言った時、ぎゅっと目を瞑った
一筋の雫が、頬を撫でた
「突き、飛ばしちゃったの」
打ちどころが悪く、結果的には殺してしまったらしい
「誰も味方じゃなくて、わたしが勝手にやったって…寧ろわたしがいじめてたって、言わ、れて
もう無理だなあって、思って」
急に落ち着いた声を出した
背筋が冷えた
何もかもに絶望し、もう救いようがないように思えた
「怖くて歌えない、誰も味方してくれない、人も殺した。だから
どっか、遠いところで死のうと思ったんだ
類、迷惑かけてごめんね。…最期の、挨拶のつもりだったんだ」
彼女はそう言って、ソファから腰を上げた
僕は反射的に彼女の手首を掴んで、無意識のうちに声が出た
「それじゃ、」
僕も連れてって
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