「希望の欠片」の騒動が沈静化したと思われた頃、ポートマフィアの隠し倉庫でさらなる異変が起きた。今度は、「呪歌の涙」と呼ばれる呪物が突如として活性化し、新たな異能者「ありな」を生み出したのだ。
ありなはその美しい歌声とともに、横浜の住民を次々と操り、街を混乱の渦に陥れていく。その異能は「心を奪い、無力化する」力。歌声を聞いた者は抵抗する意志を失い、操り人形のようになってしまう。
一方、ポートマフィアの若手幹部・いさなは、この異変に対応するために単独で動き出す。
ありなの歌声が横浜の港に響き渡る。無数の人々がその場で膝をつき、目を虚ろにしたまま、ありなの命令通りに動いていた。
「美しいでしょう?この歌が、私の力。」ありなは微笑みながら人々を操り、ポートマフィアの勢力を徐々に侵食していく。
いさなは遠くからその様子を観察していた。
「…厄介だな。直接戦うのはまずいかもしれない。」
いさなは頭を働かせ、ありなの能力の弱点を探るべく、彼女の行動を監視し始める。しかし、その最中、ありなの歌声がいさなの耳にも届いてしまう。
「これは…!」いさなはすぐに耳栓を装着し、ギリギリのところで操られるのを免れる。
「どうやら、歌声が届かなければいいらしいな。」
ポートマフィアの本部に戻ったいさなは、幹部たちにありなの能力を報告する。
「彼女の力は音だ。その歌声が届かなければ影響を受けない。対抗手段は…防音か、遠距離攻撃だ。」
「防音?そんなもので戦えるのか?」幹部の一人が疑問を呈する。
「戦えるさ。俺がやる。」いさなは決意を秘めた目で答える。「だが、準備が必要だ。」
いさなはポートマフィアの研究班に協力を依頼し、特殊な防音装置を作り出す。さらに、遠距離から狙撃できる武器を手に入れ、ありなとの決戦に備える。
ありなが横浜の中心部に姿を現したその夜、いさなは単独で現場に向かう。防音装置を身につけた彼は、ありなの歌声を遮断しながら近づいていく。
「来たのね、いさな。」ありなは微笑みながら歌声を響かせるが、いさなには一切届かない。
「悪いが、その歌は俺には効かない。」いさなは冷静に答え、距離を保ちながら攻撃のタイミングを計る。
ありなは不敵な笑みを浮かべ、手を軽く振る。「それでも、この美しい力を止められるかしら?」彼女が操る群衆がいさなに向かって押し寄せてくる。
「…くそ、これが面倒だ。」いさなは狙撃を諦め、一時的に群衆を無力化するために煙幕を展開する。
煙幕の中、いさなはありなに接近するが、突然、彼女の歌声がさらに強力なものに変化する。
「私の本当の力を見せてあげる。」ありなは呪物「呪歌の涙」の力を完全に解放し、自身の身体をオーラのような光で包み込む。その歌声は物理的な衝撃波となり、いさなの防音装置を破壊してしまう。
「しまった…!」いさなが身を守る間もなく、ありなの力が直撃する。
「終わりね。」ありなが勝利を確信した瞬間、いさなはポケットから別の装置を取り出す。
「終わりなのはお前だ。」いさなが起動したのは、音波を逆転させる特殊装置だった。ありなの歌声を無効化し、さらにその力を自滅的に跳ね返す仕組みだ。
ありなの歌声が次第に消え、呪物の力も完全に封じられる。
「どうして…こんな…」ありなが膝をつき、力を失う中で呟く。
「お前の歌は確かに美しかった。」いさなが冷たく言い放つ。「だが、その力をこんな風に使う奴を、俺は許さない。」
ありなは完全に無力化され、「呪歌の涙」はポートマフィアによって封印される。
戦いの後、いさなは「呪物」の存在そのものが横浜にとってどれほど危険なものかを実感する。
「これで終わりじゃないだろうな…。」いさなが呟いたその夜、マフィアの倉庫にある別の呪物がわずかに光を放つ。
次なる呪物――そして次なる異能者の登場が、ポートマフィアを再び試練に立たせることになるのだった。
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ありな出てきてバチくそ吹いた