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#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
ソファの距離は、もうほとんどゼロだった。
エリオットはまだ少しぼんやりしている。
胸の奥の鼓動は全然落ち着かない。
ドクン。
ドクン。
さっきから体が妙に熱い。
「チャンス……」
名前を呼ぶ声も、少し力が抜けている。
チャンスは目を細めてエリオットを見下ろしていた。
さっきからずっとだ。
その視線がやけに重い。
エリオットは首を少し傾ける。
「どうしたの」
するとチャンスが、低く言った。
「……それ以上やるな」
「え?」
意味が分からない。
エリオットは瞬きをする。
チャンスの視線は動かない。
そのまま、少し苛立ったように続けた。
「それ」
短く顎をしゃくる。
「誘ってる」
エリオットは一瞬固まる。
「……は?」
何を言われているのか分からない。
視線を下げる。
そして気づいた。
自分の指。
唇に触れている。
「あれ?」
小さく呟く。
「いつの間に……」
さっきから無意識に触っていたらしい。
エリオットは少し不思議そうに自分の唇を見た。
それから――
指を、ほんの少し動かす。
唇の形を確かめるみたいに。
ゆっくり。
なぞる。
柔らかい感触。
さっきまでチャンスの唇が触れていた場所。
エリオットはまだ完全に理解していない顔で言う。
「これ?」
そしてもう一度。
指で軽く撫でる。
その瞬間。
チャンスの表情が変わった。
「……エリオット」
低い声。
警告みたいな響き。
でもエリオットは気づかない。
ただ少し笑う。
「何?」
その無防備な顔。
その指。
唇。
さっきのキスを思い出させる仕草。
チャンスは一瞬だけ目を閉じた。
深く息を吐く。
そして――
次の瞬間。
ぐっとエリオットの顎を掴んだ。
「……だから言った」
低い声。
ほとんど唸りに近い。
「それ誘ってるって」
言い終わる前に。
もう距離が消えた。
唇がぶつかる。
さっきより強い。
深い。
チャンスは一瞬も躊躇しなかった。
エリオットの唇を押し開く。
さっき触れた場所を確かめるみたいに。
探すみたいに。
舌が入り込む。
エリオットの目が大きく開く。
「……っ」
呼吸が止まりかける。
キスは止まらない。
むしろ深くなる。
チャンスはさっきの感触を思い出すみたいに、
探すように、確かめるように。
エリオットの舌に触れる。
絡む。
逃がさない。
ソファが小さく軋む。
エリオットの頭は一瞬で真っ白になった。
さっきより強い。
深い。
予想よりずっと。
息がうまく出来ない。
胸が苦しい。
でも離れない。
チャンスの手がエリオットの後頭部に回る。
逃げ道を塞ぐみたいに。
キスはまだ終わらない。
エリオットの指が、さっき触っていた唇からゆっくり離れる。
そして。
無意識に。
チャンスの服を掴んだ。
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