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「おつかれーっす!お前ら、また一緒に帰んの〜?ラブラブじゃ〜ん!」
スタジオの廊下で、宮舘と岩本が並んで歩いているのを見かけた佐久間が、いつも通りのテンションで、いつも通りにイジる。
2人とも、軽く笑って流した。
いつもの空気。いつものやり取り。
——の、はずだった。
(……あれ?)
気になったのは、岩本がほんのわずかに宮舘から視線を外したタイミング。
笑いながら、ほんの数センチ、距離を取った。
それだけだった。
でも佐久間の脳内に、「変だよね今の」「あれおかしくね?」ってセンサーがバチバチに作動してた。
⸻
それから数日間、佐久間は何も言わず、ただ観察してた。
・宮舘が、リハの後に一人で喉に手を当ててる
・岩本が、休憩時間に一瞬スマホを見て、そっと口元を緩めた
・集合してるときに、2人が目を合わせすぎないようにしてる
全部、意図的。
全部、「バレたくない」のにじみ出た動き。
(……マジで、そういう感じ?)
⸻
それを確信に変えたのは、また別の日。
機材整理中に、スタジオ裏の狭いスペースで、宮舘と岩本が小声で話していた。
「……今夜は、なしにしよう」
「……わかった」
その短いやり取りに、妙な緊張感と、火照った後の静けさがあった。
(おいおい、マジで、してんじゃん……)
佐久間は音を立てないようにその場を離れた。
走りたいくらいの動揺を胸に抱えながら。
⸻
その夜、佐久間は2人を呼び出した。
何も言わず、バーの個室をとって。
「なぁ。単刀直入に聞くけどさ」
「お前ら、やってんの?」
その空間が、一瞬で凍った。
「……なにが?」と舘が言う。
「……どういう意味だよ」と岩本が低く返す。
だけど、2人とも“目が泳いでる”のを、佐久間は見逃さない。
「いや、違ったら全然いいんだけど。
ただ、最近の雰囲気で、何となく。勘違いしてたらごめんな?」
言いながらも、笑いは消えていた。
佐久間の声が妙に落ち着いていて、2人とも言葉を失っていた。
「それとも……バレてもいいって思ってんの?だったら、俺、何も言わないよ。
でもさ、そうじゃないなら、……ちょっとは気をつけた方がいいんじゃね?」
誰も笑ってなかった。
ふざけてるようで、1ミリもふざけてなかった。
そして、2人は何も言わずに、ただ頷いた。
⸻
そのあと、帰り道で。
佐久間は1人、イヤホンもつけずに歩きながらつぶやいた。
「……なんだよ、俺の勘、当たりすぎだろ」
ほんの少しだけ、寂しそうに笑った。