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公式儀式の大成功から数日後。
私の元に、アレン様からの直筆のカードが届いた。
そこには、彼の美しい筆跡で『今夜、あなたを招待したい場所がある。正装をして待っていてほしい』とだけ書かれていた。
案内されたのは、皇城の最上階にある、普段は皇帝陛下以外誰も立ち入ることが許されない『月夜の空中庭園』だった。
「わあ……っ」
扉が開いた瞬間、私はあまりの美しさに息を呑んだ。
そこは、夜空に浮かぶ満月の光が最も美しく降り注ぐ場所。そして、広大な庭園の床一面には、私がこの国で咲かせた銀色の花々が、まるで光る絨毯のようにどこまでも広がっていた。
きらきらと舞い上がる銀の光の粒が、夜風に揺れて幻想的にまたたいている。
「――待っていたよ、ルナリア」
庭園の奥から、私を呼ぶ愛おしい声が響いた。
振り返ると、そこには漆黒の美しい礼服をまとったアレン様が立っていた。彼の胸元には、私が贈ったあの銀色のブローチが誇らしげにきらめいている。
私は、アレン様が仕立ててくれた群青のドレスの裾を揺らしながら、ゆっくりと彼のもとへ歩み寄った。私の髪には、もちろん彼と同じ色をした黒い髪飾りが大切に留められている。
アレン様は私の手を取ると、愛おしさが抑えきれないといった様子で、切れ長の瞳を甘く細めた。
「今日も世界で一番美しいな、俺の月」
「アレン様……こんな素敵な場所に招待してくださるなんて、夢のようです」
「夢ではないさ。これからは、あなたが望むなら毎日でもここをあなたのために開放しよう」
アレン様は私の細い指先をそっと撫で、それから愛おしそうに私の髪の黒い髪飾りに触れた。
「ルナリア。かつて俺の身体と心を蝕んでいた終わらない夜に、あなたが光をくれた。あなたの温もりが、俺の孤独をすべて消し去ってくれたんだ。……俺はもう、そあなたのいない人生など考えられない」
アレン様はそう言うと、私の手を握ったまま、ゆっくりと私の前に片膝をついた。
「ア、アレン様……!?」
世界最強の帝国の頂点に立つ皇帝陛下が、一人の少女の前で跪いている。驚いて声を上げる私を見上げながら、アレン様は懐から小さな青い天鵞絨の箱を取り出した。
パカッと開かれた箱の中には、夜空を模したサファイアの台座に、大粒の満月のようなダイヤモンドが圧倒的な輝きを放つ、帝国に代々伝わる伝説の『皇后の指輪』が収められていた。
「ルナリア・エルフレア。俺の妻になってほしい。生涯をかけてあなたを誰よりも過保護に愛し、世界一幸せな女性にすると、俺の命とこの国すべてを懸けて誓う」
「アレン様……っ……」
私の視界が、一瞬にして涙で滲んでいく。
かつて地下室で凍えていた私に、こんな未来が待っているなんて想像もしなかった。無能と罵られ、すべてを奪われ、冷たい雨の森に捨てられたあの日の絶望が、アレン様の温かい言葉によって完全に、極上の甘さで塗り替えられていく。
「はい……! 喜んで、アレン様の妻になります。私を、アレン様の隣にいさせてください……!」
涙をぽろぽろと流しながら答えると、アレン様は愛おしそうに目を細め、箱から美しい指輪を取り出した。
そして、私の左手の薬指へと、そっと滑らせる。夜空のサファイアと満月のダイヤモンドが、私の指先で誇らしげにきらめいた。
「これで、あなたは完全に俺のものだ」
アレン様は立ち上がると同時に、私の身体を力強く、けれど壊れ物を扱うように優しくその腕の中へと抱き寄せた。
彼の広い胸から、トクトクと速く刻まれる心臓の音が伝わってくる。アレン様も、私と同じように緊張してくれていたのだと思うと、愛おしさが胸の奥から溢れ出して止まらなくなった。
アレン様は私の顎をそっと持ち上げると、濡れた睫毛に、そして頬に、優しくキスを落とした。
「もう二度と泣かせない。あなたを傷つける過去の亡霊も、不安も、すべて俺が噛み砕いて消し去ってやる。これからのそなたの人生には、輝かしい幸福と、俺の愛だけがあればいい」
「はい、アレン様……。私、アレン様と出会えて、本当に幸せです」
私がアレン様の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返した、その瞬間だった。
私たちの幸福な感情に呼応するように、空中庭園に敷き詰められた銀色の花々が一斉にまばゆい光を放った。キラキラと輝く無数の光の粒が、満月の夜空へと向かって、まるで星が昇っていくように美しく舞い上がる。
「なんて綺麗な光だ。まるで世界があなたを祝福しているようだな」
アレン様は私のプラチナブロンドの髪を愛おしそうに撫で、その頭にそっと顎を乗せた。髪に着いた彼の髪色の髪飾りが、二人の絆を証明するように静かに佇んでいる。
「さあ、月光の聖女。次は世界中に、俺たちの最高の幸福を披露する番だ。帝国始まって以来の、最も華やかな大婚儀にしよう」
アレン様の甘い約束に、私はただ幸せに胸を高鳴らせながら、温かい夜の腕の中に身を委ね続けるのだった。
コメント
1件
アレン様のプロポーズ、尊すぎて胸がきゅんきゅんしました…!💕 月夜の空中庭園に銀の花の絨毯、皇后の指輪も最高にロマンチックで涙が止まりません😭 かつて地下室で凍えていたルナリアがここまで幸せになる姿、本当に報われたなって感動です…! お揃いの髪飾りとブローチもエモすぎます。大婚儀編も楽しみにしてますね!✨