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にゅうひん☆
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スマホに来た通知を感じ、阿部はスマホを見た。
とある人からのLINEを開き、目を通す。独特な言い回しのそれに、思わず頬が緩んだ。
「ねえ」
そんな時、運転席から不機嫌な声が飛んだ。
「今日ずっとそれじゃん」
岩本は苛立ちを隠さず、刺々しく言った。
「スマホばっかり見て」
「そんなに見てた?ごめん」
阿部は素直に謝る。が、岩本の不機嫌は、今日は収まらなかった。
「なんかニヤニヤしてるしさ」
「この人の返事が面白くてさ。もう見ないよ」
阿部はスマホをポケットにしまい、微笑みかける。
「最近知り合った人で、連絡がまめな人なんだよね」
「最近ずっとそうじゃん。 俺といる時も通知鳴るたび笑ってさ」
何なんだよ、と岩本は不貞腐れる。
「俺からのLINEは、平気で半日放置するくせに」
「そんな怒んないでよ」
阿部は少し困惑しつつ、彼を宥める。
話している間にスマホに通知が来た気配がして、それがまた岩本の癇に障った。
「誰とやりとりしてんのか知らないけど、そんなにそいつが良いなら、もうそいつと付き合えば良いよ」
ぶっきらぼうに言う。
「…ひかる、そんな面倒くさい彼女みたいなこと言わないでよ」
阿部の言葉に岩本は、ムッとして彼を見た。
「はあ?お前、俺のこと面倒くさいとか思ってんの?」
イライラが収まらず、喧嘩腰で言う。これには阿部もカチンと来た。
「思ってないよ。揚げ足取るなよ」
強めの口調で返す。
「なんでそんな突っかかるんだよ。謝っただろ」
阿部もイライラしてきて、語気が荒くなった。
「ひかるが俺を信用してないのが、よく分かった」
「信用を損なうような事をしてるのはそっちだろ」
阿部は、岩本のヤキモチ妬きな所は、好きだった。が、今日の物言いには我慢ならなかった。
「そんなに信用できないなら、俺なんかと付き合わなきゃ良いだろ」
「お前、」
「LINE一つでこんなに当たられて、信用出来ないとか言われたら、たまんないよ」
沈黙。
阿部は一つ大きく息を吐いた。
「そこで停めてよ」
そして言う。これ以上岩本と同じ空間にいたくなかった。
岩本は一瞬何か言いかけたが、言葉を飲み込み、言われた通り車を路肩に停めた。
阿部は無言のまま車を降り、振り返る事もなくその場を離れる。岩本は岩本で、いつものようにその背を見送る事もなく車を発車させた。
((絶対、謝って来るまで許さない…!))
2人は、互いにそう思いながら帰路についた。
それから2人の冷戦が始まった。仕事中は支障がないように振る舞うが、一旦現場を離れると、顔も合わせない。メンバーは2人の様子に困惑し、楽屋などでは微妙な空気が漂っていた。
しかし実際のところ、阿部の怒りが持続したのは、せいぜい最初の3日ほどだけだった。
そこからはトーンダウンし、徐々に後悔が強くなって、1ヶ月が経つ頃には意気消沈していた。
一方の岩本は、すっかり引っ込みがつかなくなっていた。
もう別に怒ってはいない。
それなのに妙な意地もあり、自分からは何も言い出せないでいた。それに加えて、阿部がまだ怒っているのではとも思うと、何となく気まずくてさりげなく話をするのを避けていた。
岩本が自分を避けていると気付いてから、阿部は目に見えて落ち込んでいった。
表情は日に日に暗くなった。
元々少食だったのが更に食べなくなり、最近は眠れていないのか目の下には濃い隈までできていた。
ため息をつくことが増え、ぼんやりしていた。大丈夫かと聞かれると、ぎこちない笑顔で大丈夫と言う。明らかに大丈夫そうではないが、阿部は大丈夫と言い張るのだった。
ある日の仕事終わり。
「あーべちゃん」
佐久間は阿部を待っていて、声を掛けた。
「俺んち来ない?」
人懐っこい笑顔で言う。
「…さくま…」
阿部の顔が不意に歪み、その目が潤んだ。
「うんうん。行こ」
今にも泣き出しそうな阿部の腕を引いて、佐久間は自宅へ向かった。
佐久間の運転で帰り着くと、飼い猫2匹が2人を出迎えた。
阿部の異変を察してか、2匹はラグの上に座り込んだ阿部に擦り寄り、そのまま傍らに伏せた。
「ツナぁ、シャチぃ」
2匹の気遣いに阿部は、泣きそうになりながらその背を撫でる。
「さて。佐久間さんが話聞くよー」
隣に胡座をかいて、佐久間が軽く促す。
それから阿部は、堰を切ったように何があってこうなったのかを話し出した。
途中で感極まって泣き出したので、佐久間は慌てて近くにあったタオルを、阿部の顔に押し付けた。
「もう、ダメなんだ…っ、ひかるにっ、嫌われっ、たんだぁ」
タオルで顔を覆ったまま、息ができなくなるほど泣いてしまう。
「おれが、わるかったのに、つまんない、ことっ、言ったから…っ」
「あべちゃんだけが悪いわけじゃないって。照も悪いよ」
佐久間は阿部の背を撫でながら、優しく言った。
「それに、照があべちゃんを嫌いになる事なんてないよ。あいつ本当にあべちゃんのこと好きなんだから」
「かおも、あわせてくんないっ、もう、おれのかおもっ、みたくないんだ…っ」
「あべちゃ〜ん…」
あまりにも阿部が泣くので、佐久間も困り果てる。
話を聞いた限り、なんて事ない痴話喧嘩だ。こんなに拗れることか?とも思う。とはいえ、当事者にとっては、この世の終わりにも等しい事件なのだろう。
「ぃやだっ、ひかるにきらわれたく、ない…やだよ…」
「照はあべちゃんを嫌わない。俺が保証する」
佐久間は静かに諭した。
「照も今さらどう話しかけたらいいか分かんなくなってるだけ」
タオルを顔に押し当てたまま、阿部はしゃくりあげる。
「あべちゃんは、照のことめちゃくちゃ好きなんだね」
よしよし、と佐久間は阿部の頭を、子供にするように撫でてやった。
「大丈夫だよ。仲直りできるから。ちゃんと話したら、今まで通りだって」
「はなしたい…、ひかると、はなしたい」
「うん。あべちゃんがそう思うなら、話そう。だから話すためにちょっと頑張ろ?」
阿部はまだ嗚咽を漏らしながらも、小さく頷いた。
「まずは泣き止もう。深呼吸して」
言われた通り、深呼吸をする。その後、ようやく阿部はタオルを離し顔を見せた。
いつもは賢くて合理的で、解決策など直ぐに見つけられそうなのに、自分のこととなるとどうする事も出来ない阿部を、佐久間は可愛いと思った。
(…とりあえず、照は今度、説教だな)
タオルで阿部の顔を無理矢理拭いてやる。
阿部の呼吸がようやく落ち着いたのを見届けてから、佐久間はいつもの調子で笑った。
「…今日は泊まっていきなよ。美味しいもの食べて、アニメでも見るー?」
そして、何もなかったかのように言う。
「佐久間、ありがとう…」
阿部は小さく言って、足元のツナを抱き上げ抱きしめる。
ツナは迷惑そうに、にゃー、と鳴いた。
コメント
4件
💚、恋愛はちょっとヘタ(?)なところがかわいい。あと、🩷ないす、
はぁ~💚が可愛すぎて心臓痛い…
💚ごめん…すごく可愛いよあんた.笑