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私にとっての『光』は、私自身の内側にあるものではなくて、『外側』にあるものなのだと思う。
それはつまり、誰かに求められたり必要とされた時だけしか輝けないということでもあるけれど……それでも良いと思っている。
だって私が本当に求めているのは、自分自身の内側に存在するものではないのだから。
「──あぁ、そうだ。君にこれを渡しておこう」
ふと思い出したかのように言って、男がポケットの中から取り出してきたのは一枚の写真だった。
それは一組の男女の写真で、どちらもまだ十代半ばくらいの少女と青年であった。二人とも幸せそうな笑みを浮かべていて、とても仲睦まじい様子に見える。
しかし、そんな二人を見ても、男は表情を変えない。むしろ、写真を持つ手が震えており、明らかに動揺している様子が見て取れた。
「……これがどうかしました?」
「ああ、うん。実はね――」
そこで言葉を区切ると、男は写真をテーブルの上に置いて、そのまま黙ってしまった。まるで、言葉を選んでいるような感じである。
「言いづらいことなんですか?」
「んー、まあそうだね。あんまり気持ちの良い話じゃないし、それに僕の口から言うべきことでもないと思うんだよね」
苦笑いしながら、頬を掻く男。
男の言っている意味がよくわからなかったけれど、それでも彼は言わずにはいられなかったようで、「だからさ、自分で調べてみたらどうだい? そうした方がきっと後悔しないよ」と言った。
それから三日後、僕は友人に誘われてとあるパーティーに出席していた。そこは僕のような一般人では足を踏み入れることすらできない高級ホテルの一室で、一流企業の社長やら芸能人やらがたくさんいた。僕はこういう場に慣れていないし、あまり乗り気ではなかったのだが友人の頼みだったので渋々付き合ったのだ。
しかし、そんな心配は無用だったようで、会場には綺麗なドレスを着た女性たちが多くいて、僕の気分は一気に高揚してしまった。しかもみんな可愛い子ばかりなので目移りしてしまうほどだった。
「おい、お前鼻の下伸びてるぞ」
「いやーこんな美人ばっかだからさあ……」
「ったくしょうがない奴だなお前は」
呆れたような口調の友人だったが表情はとても嬉しそうだ。やっぱりこいつは良い奴だよなあと再認識させられる瞬間であった。
しばらくすると司会者が現れ開会を宣言してパーティーが始まった。
「じゃあそろそろ行くわね」
「うん……また会えるよね?」
「もちろんよ。だって私たちは親友じゃない」
「そうだよね! 僕たちずっと友達だもんね!」
「ふふっ。それじゃあまた会いましょう。バイバーイ」
「うん、ばいばーい」
―――ガチャンッ。
ドアが閉まる音が聞こえて僕は目を覚ました。いつも通りの朝だった。
僕はベッドから出て大きく伸びをする。今日は待ちに待った入学式。高校生になったら彼女を作って楽しい高校生活を送るんだ。そのためにも頑張らないとな。
そんなことを考えながら洗面所に行き顔を洗い歯磨きをしてリビングに向かう。朝食を食べようと思ったけど母さんがいない。まだ仕事中かな? 時計を見ると7時40分を指している。仕方ない。先に学校に行く準備でもするか。制服を着て鞄を持って家を出る。通学路の途中にあるコンビニの前で誰かが立ち止まっていた。何をしてるんだろうか? 近づいてみるとそこには見覚えのある女の子がいた。その子はこちらを振り向くと嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「おはよう、ゆうくん」
彼女は僕の幼馴染みの彩華。小さい頃からよく一緒に遊んでいた仲良しの幼なじみだ。幼稚園に入る前から一緒なのでもう10年以上付き合いがあることになる。
肩にかかるくらいの長さの髪に整った顔立ち、それにスタイルも良い。身長も高くモデルみたいにスラリとしている。こんな子と仲良くできるなんてとても嬉しいことだ。だけど……。
「なんでここにいるんだよ。ここは学校のすぐ近くなんだぞ。お前も早く帰れよ」
「……」
「おい、聞いてんのか?」
「うるさい! さっきまで一緒にいたんだから分かるでしょ!」
「ああもう、じゃあ勝手にしろよ」
「言われなくてもそうするわよ」
僕はいつもこうやって喧嘩をする。
言いたいことを言えずに後悔するのは僕なのに。
どうしてあんなことしか言えないんだろう。
こんなんじゃダメだって分かってるんだけどなぁ。
はーっと息を吐くと白い煙となって空へ消えていく。
今年は雪が多いらしいけど積もりそうだ。
マフラーを巻いて手袋をつけて耳あてをして完全防備。
それでも風が吹くと顔が痛いくらい冷たい。
コートを着ててもお腹とか背中が冷えて仕方ない。
でもそれはきっと僕の心の中が凍えてるせいでもあると思う。
いつになったらこの気持ちは溶けてくれるだろうか。
あの時こうしていればなんて考え出したらキリがないけれど。
「あれ、今日は一人なのか?」
「うん。まあね」
「珍しいじゃん。普段はあいつと一緒だから余計にそう見えるけどさ」
「うん……」
「今日はひとりなのか?」
「あぁ」
「……なんかあったのかよ」
「別になんでもない」
「ふーん」
「じゃあな」
「おう」
いつものように一緒に登校してきたはずの幼馴染みの女の子を置いて先に教室へと入っていった男の子。
しかし、そんな彼をクラスメイトは責めることなどできなかった。なぜなら、彼女の様子が明らかにおかしかったからだ。
まるで何かに取り憑かれたかのようにボーッとしている。
話しかけても生返事ばかりだし、表情にも覇気が感じられない。
それでも、彼女は学校へ来ていた。
おそらく、まだそこまで重症じゃないんだろうと思いながら、俺──佐藤祐一は授業の準備を始めることにした。
◆ 昼休みになると、俺は屋上へと向かった。
そこにはすでに先客がいた。
「よう、今日は一人か?」
フェンス越しに見える景色を眺める幼馴染みの少女に声をかけると、彼女──八坂透子は振り返ることなく答えてきた。
「あぁ。ちょっと気分が悪くてね」
「大丈夫か? 保健室行く?」
「いや、ちょっと立ちくらんだだけだから……」
「本当? 顔色悪いよ?」
「心配しすぎだってば」
「じゃあ何かあったら言ってくれよ」
「うん」
(あいつ……)
――放課後、教室にて。
窓際の席に座っていた僕は、隣にいる女子生徒の様子を横目で見ていた。
彼女は友達と話しているのだが、どこか元気がないように見えるのだ。
それは僕だけでなく、クラスのみんなにもわかっていたようで……
「ねえ、やっぱりあの子おかしいわよね」
「そうだね。ずっと上の空っていう感じだし……それに、いつも一緒にいる男子もいないみたいだよ」
「まさかとは思うけど……いじめられてたりしてないかな?」
そんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
確かに彼女の様子は明らかに変だった。朝は普通だったので、きっと昼休み以降に何かがあったに違いない。
だけど、クラスメイトたちも彼女に話しかけることができないようだった。もし仮に話かけたとしても、「何でもない」「気にしないで」と言われるだけ