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本編レッツゴー!
先生に怒られたあと、伊織はしょんぼりしながら席に戻った。
ポケットの中が、ほんのりあたたかい。
(……いるんですよね、ノアさん……)
そっと机の下でポケットを開くと、青い小さな狐がちょこんと丸くなっていた。宝石がきらりと光る。
「…………かわいい……」
思わず小さくつぶやく。
すると
きらっ
ノアの首元の宝石が一瞬光った。
「……え?」
次の瞬間
パリン
窓ガラスが割れる音が教室に響いた。
「きゃあっ!?」「なに!?!?」
クラスが騒然とする中、窓の外には黒いもやのようなものが漂っている。
それはゆらりと形を変え――人の顔のように見えた。
「魔物だ!!」
誰かが叫ぶ。
先生が杖を構える。
「全員下がれ!!」
伊織のポケットの中で、ノアがゆっくりと目を開いた。
青い光が、にじむ。
その視線は、まっすぐ“魔物”を見ていた。
魔物はゆっくりと形を変え、歪んだ“顔”のようなものになる。
「魔物だ!下がれ!!」
呪文学の先生が杖を構え、前に出る。
クラスメイトたちは机を倒しながら後ろへ後ずさった。
伊織の手は震えていた。
(ま、魔物って……ほんとにいるんですね……!?)
そのとき。
ポケットの中が、じんわり熱くなる。
「……ノアさん?」
そっとポケットをのぞくと、青い小さな狐が目を開いていた。
普段は眠たそうなその瞳が、今は鋭く光っている。
ノアは、ひょいっとポケットから顔を出した。
「えっ、ちょ、ちょっと……!」
ふわり、と浮かび上がる小さな体。
首元の宝石が淡く輝きはじめる。
黒い魔物が教室へ入り込もうと、窓枠をすり抜けた瞬間――
キィン……
澄んだ音が響いた。
ノアの前に、薄い青い膜のような光が広がる。
次の瞬間、魔物の動きが止まった。
「なっ……!?」
先生が目を見開く。
黒いもやは、見えない壁に押し返されるように窓の外でうごめいている。
ノアの尻尾が、ゆらりと揺れた。
すると光の膜がぎゅっと縮まり、魔物を包み込む。
バチッ、と小さな音がして、黒いもやは霧のように散った。
しん、と静まり返る教室。
ノアは何事もなかったかのように、くるりと宙で一回転すると――
すとん。
伊織の机の上に着地した。
「…………」
「ノ、ノアさん……?」
ノアは一度だけ伊織を見上げると、満足そうに目を細め、再びポケットの中へもぐりこんだ。
ぽかんと口を開けたままのクラスメイトたち。
そして先生が、ゆっくり振り向く。
「伊織……だったな」
「は、はいっ!?」
「今の使い魔……お前のか?」
教室中の視線が、一斉に伊織へ集まった。
(む、無理無理無理無理無理!!!!)
心臓がばくばく鳴る。
ポケットの中で、ノアが小さく尻尾を振った気がした。
ノアが魔物を消した直後――
クラスがざわついて先生が伊織に話しかけようとする
先生が伊織に歩み寄ろうとした、そのとき。
ポケットの中が、じんわりと熱くなった。
「……え?」
ノアの宝石が、強く光る。
視界の端が白くにじんだ。
キーン、と耳鳴りがする。
思わず目を閉じた、その一瞬。
――静寂。
「……あれ?」
誰かの声がした。
伊織がゆっくり目を開けると、教室はいつもの風景に戻っていた。
割れたはずの窓は元通りで、先生は黒板の前に立っている。
「じゃあ、このページを読んでみようか〜」
授業が、普通に続いている。
「……え?」
伊織の心臓だけが、まだ速く打っていた。
(さっきの……夢……?)
ポケットの中で、ノアが小さく丸くなって眠っている。
けれどその宝石だけが、かすかに熱を残していた。
教室の後ろの窓の外。
誰もいないはずの空中で、黒い影がゆらりと揺れた。
「……やはり、適合者か」
低い声が、風に溶けて消えた。
伊織は、しばらく呆然と黒板を見つめていた。
先生の声が遠く聞こえる。
「――で、使い魔との契約には魔力の安定が重要で〜」
(使い魔……)
その言葉に、びくっと肩が跳ねる。
恐る恐るポケットに手を入れると、ふわふわした感触が指先に触れた。
……いる。
ノアは確かにそこにいる。
さっきの出来事が夢じゃない証拠みたいに。
「伊織ちゃん、大丈夫?」
後ろの席の子が小声で話しかけてくる。
「顔色悪いよ?」
「え、あ……だ、大丈夫です……!」
声が少し裏返った。
その子は首をかしげる。
「さっき一瞬ボーッとしてたけど、寝不足?」
(さっき……?)
あの騒ぎのことは、やっぱり覚えていないみたいだ。
教室を見渡す。
割れたはずの窓は元通り。
机も椅子も整然としていて、恐怖の痕跡なんてどこにもない。
なのに。
伊織の胸の奥だけが、ざわざわしている。
授業が終わるチャイムが鳴った。
「じゃあ今日はここまで〜」
生徒たちが立ち上がり、いつもの賑やかな放課後が始まる。
伊織はそっとポケットをのぞいた。
ノアは丸くなったまま、眠っている。
けれど。
首元の宝石に、ひび割れのような細い光の筋が入っていた。
「……え?」
指でそっと触れた瞬間――
頭の奥に、知らない声が響いた。
《まだ、早い》
「っ……!」
思わず口を押さえる。
周りの誰も気づいていない。
《目立ってはだめだよ、伊織》
やさしいのに、どこか冷たい声。
《あの人に、見つかるからね》
「だ、だれ……」
小さくつぶやいた声は、ざわめきにかき消えた。
そのとき、ノアの尻尾がぴくりと動く。
宝石のひびが、すっと消えた。
声も消える。
まるで何もなかったかのように。
「伊織ちゃ〜ん、?帰らないの?」
クラスメイトが教室のドアから手を振っている。
「い、いま行きます!」
慌てて立ち上がる。
けれど教室を出る直前、ふと窓の外を見た。
向かいの校舎の屋上。
誰もいないはずのそこに、黒いローブのような影が一瞬立っていた気がした。
瞬きをしたら、もう消えていた。
ポケットの中で、ノアがぎゅっと丸くなる。
まるで、何かから隠れるみたいに。
しばらくかけなくてすみません、、、スランプに入ってしまってて、、でも湧いてきたのでかきます、、!!
コメント
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最新話まで一気見 ってことでもう一回最初から!! フォロバ求む