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58 - 第58話 お母さんとは暮らせない

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2025年03月17日

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◻︎お母さん



「結衣…よかった、元気そうで」


礼子が連れてきたその女性は、結衣を見ると顔を覆って涙ぐんでいた。


「お母さんは?大丈夫なの?」


結衣に言われて、お母さんを見ると左の頬にアザのようなものが見えた。

私と礼子の視線を感じてか、手で隠したけれど。


「うん、大丈夫。やっとね、やっと、あの人と離婚ができたの、だからそれを報告したくて…」

「そっか…」


そのまま二人は黙ってしまった。


「とにかく、中に入ってください、ね」


礼子がお母さんを部屋に招き入れた。


「あ、じゃあ私は頼まれていたことが終わったので失礼しますね」


私はバッグと上着を持って玄関へ向かう。


「あ、あの、待って、美和子さん!」


私を呼び止めたのは結衣だった。

忘れ物でもしたかと振り返ったら、バッグをつかまれた。


「どうしたの?結衣ちゃん」

「また、来てくれますか?ここに」

「え?それはかまわないけど…」


お母さんが迎えに来たんじゃないのかなと思う。


「礼子さん、お願いです。私、もう少しここにいてもいいですか?」

「え?でもお母さんが…」

「お母さん、私、今はまだお母さんと暮らせない、多分…うまくお母さんと暮らせない…」


結衣の声が震えて、泣いているようにも見えた。


「結衣…」


_____そうだよね、お母さんといるとどうしてもツラいことを思い出してしまうよね


「ねぇ、礼子さん、お母さん。私、しばらくここに通うから、結衣ちゃんの気が済むまでここにいてもらったら?きっと、一人で色々考えたいこともあると思うから」


うんうんと、うなづく結衣。


「そうね、それが結衣ちゃんのためになるのなら。お母さんはそれでいいですか?」

「…そう、ですね、結衣がそう言うのなら…」


二人が私を見たので、私は任せて、という意味でうなづいた。


「やった、私、もっと美和子さんと話がしたくなって、だから、よかった!」


ぴろろん🎶と私のスマホが鳴った。


『晩ご飯、勝手に食べてるよ』


と旦那と息子から写真が届いた。

半分食べた唐辛子入りの肉団子と、泣いてる旦那の写真だった。


_____あ、唐辛子入りって言うの忘れてた!









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