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「亜子さん、昨日……大丈夫だった?」


職場に着くと、昨日の別れ際の事が気になっていたらしい良太くんが心配そうに声を掛けてくる。


「良太くん。うん、大丈夫。心配掛けてごめんね」

「そっか、なら良かった」


色々あったけれどそこまで詳しく話す事でも無いと大丈夫である事を告げた。


勤務は滞りなく進み、昨日の男の人たちがお店周辺に居る気配も無いと良太くんが教えてくれてひと安心。


お昼の一番忙しい時間帯を乗り越えて奥で休憩を取っている時、聞き覚えのある声が店内の方から聞こえてきた。


「あれぇ~? 八吹さんはいないの?」

「ねぇねぇオバサン、八吹さんは?」


それは昨日の男の人たちで、私の所在をレジに居るパートの伊東いとうさんに聞いていた。


「プライベートなご質問はお答え出来ません。ご注文は?」


けれど、良太くんがお店のみんなに昨日の事を周知してくれていた事もあって、伊東さんも二人がその当事者だと察してくれたようで話を逸らしてくれた。


「何だよ、愛想ねぇな。それじゃ、のり弁二つ」

「のり弁当お二つですね。八百円になります」


取り合う気がない事を悟ったらしい二人組みは渋々注文をし、暫くして出来上がったお弁当を受け取って去って行った。


「伊東さん、すみません」

「亜子ちゃん。今のが今朝良太くんが言ってた二人組ね?」

「はい」

「亜子ちゃん可愛いから、気をつけないと。帰り、気をつけた方がいいわよ。例の彼氏は来てくれるの?」

「はい」

「そう。それなら安心ね」


私の不注意が原因でお店全体に迷惑を掛ける事になってしまい、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


そして、夕方。


竜之介くんが迎えに来てくれて共に店を出たところに、例の二人組が姿を現した。


「八吹さん、ようやく会えた」

「えー? また違う男連れてる? 俺らも仲間にいれてよ~」


竜之介くんが居るにも関わらず二人は私との距離を詰めて来る。


(何なの、この人たち……)


ここまでの執着に流石に怖くなって来た私が戸惑っていると、


「アンタら、俺の彼女に何の用?」


私を背で庇うように二人の間に立った竜之介くん。


表情は見えないけれど、いつになく殺気立っているのがヒシヒシと伝わってくる。


「キミが八吹さんの本命クン? 昨日の男も若かったよなぁ、八吹さんは年下キラーなのかな? それじゃあ俺らも丁度良くない? ね?」

「アンタらさ、人の話聞いてる? 何の用か聞いてんだけど」


未だ挑発的な態度で絡み続ける男の人たちに痺れを切らした竜之介くんが再び相手に問い掛けると、


「あのさぁ、俺らは八吹サンと話したいの。お前じゃねぇんだわ。彼女、こっちに渡せよ」


一人が竜之介くんの胸ぐらを掴んで来たと思ったら、もう一人は私に近付いて腕を引いてきた。


「やっ! 離して!」

「おいっ! 彼女に触るなっ!」


何とも言えない状況の中、騒ぎを聞き付けたのか、良太くんが店の裏口から出て来ると、


「お前ら、いい加減にしろよ! 警察呼ぶぞ!?」


スマホ片手に『警察を呼ぶ』と脅しをかけながら私たちに近寄って来た。


すると男の人たちは、


「またお前かよ。ったく、面倒だなぁ、もういいや、行こうぜ」

「だな」

「あっ、おい!」


流石に警察を呼ばれるのは避けたかったのか、私と竜之介くんを解放すると逃げるようにこの場から去って行った。


そんな二人を追いかけようとしていた竜之介くんの腕を私は掴む。


「竜之介くん!」

「亜子さん、アイツらこのまま野放しにしちゃ危険だって」

「ううん、もういいから。それより、竜之介くんに何かあったら私……っ」


さっき男の人たちに胸ぐらを掴まれ、殴りかかられそうになっていた竜之介くんを見た時、自分が危険な目に遭うよりも辛くて苦しくなった。しかもそれが私のせいだから。


「お願い……無茶しないで……」


震える手で彼の腕を掴み続けながら訴えかけると、


「……分かった。大丈夫だから、もう怖くないから」


男の人たちの事を諦めた竜之介くんは震える私の身体を抱き締めてくれた。


「……花宮さん、だっけ。ありがとう、助かったよ」

「いや、そんな、礼なんて。亜子さんと彼氏さんが無事で良かったよ。ひとまず大丈夫だと思うけど、帰りはくれぐれも気をつけて。それじゃあ、俺はこれで」


竜之介くんが良太くんにお礼をすると、彼は少し焦りつつも私たちの無事を喜んでくれて、気をつけるように言うと店の中へ戻って行った。

頼れる年下御曹司からの溺愛~シングルマザーの私は独占欲の強い一途な彼に息子ごと愛されてます~

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