テヒョンside
遊園地から数日たったある日…
学校帰りに病室に寄ると、ジミナがベッドで泣いていた。
「ジ、ジミナ…!?どうかした?どっか痛いの!?」
びっくりして話しかけると、ジミナは小さな声で言った。
「み、右手が……。ぼ、僕の、右手が…なんか、痺れてて…ぐすん。」
「…え?ちょ…見せてみ?」
慌てて布団の上におかれたジミナの右手をとる。
「どこが痺れてるの?痛いの?」
「指と、甲のとこと…動かすと、ちょっと痛い…」
「ジン先生には…?言った?」
「い、いや…怖くて…言えないよ…。」
「え?でも、診てもらわなきゃ」
「どうしようどうしよう…このまま右手も動かなくなったら…怖い…怖いよテヒョン…ハァハァ…(泣)」
ジミナはパニックで、息が荒くなっていた。
僕は慌ててジミナのベッドに座り、背中と胸に手をあててゆっくりとさすった。
「ジミナ?ねぇ落ち着いて。大丈夫だから、ゆっくりゆっくり、深呼吸してごらん。」
「スーー、ハァーー…(泣)ヒック…」
「そうそう。上手だよ〜。も一回、深呼吸ね。」
「スー、ハァー…」
「うんうん。大丈夫だよ。いい子いい子。」
ジミナは泣きながら、必死で僕に合わせて息をしようとしていた。
…なんとか落ち着かつかせようとしながらも、内心、ジミナの不安はすごく分かった。
ジミナの左手は、数年前、小学校高学年の頃に病気の影響で動かなくなってしまった。最初は軽く痺れるぐらいだったのが、段々と麻痺がひどくなって、しまいには殆ど動かなくなって…。
その時どんなにジミナが悲しんで、落胆して、それを受け入れるのに時間がかかったか。
片手でも自分のことはなるべく自分でできるようにいっぱい練習して、それでもやっぱり出来ないことも沢山あって…。
動くのが利き手だったのはラッキーだったし、それがジミナにとっての生命線になっていた。車椅子だって、特注の、右手だけで動かせるものだ。
だから、その右手がもしも動かなくなったら…ジミナの気持ちは痛いぐらいに分かる。
ジミナがようやく少し落ち着いたところで、僕は言った。
「ね、とりあえずジン先生呼ぶからね?いいね?」
ナースコールで呼ぶと、ジン先生は慌てた様子ですぐに来てくれた。
「ジミナどうしたのー?右手、見せて。」
ジン先生は、ジミナの震える右手をとった。
「グーパーしてごらん?できる?」
「うん…」
「あ、動いてるね。どのへんが痺れるの?」
「指と、甲のとこ…」
「ここは?痛い?」
「だいじょぶ…」
「ちょっと触るよ。痛かったらごめんね。」
ジン先生はジミナの手首を触ったり、指を1本ずつ動かして、どこが痺れて痛いのかを確認していく。ジミナは泣き腫らした目で俯きながらも、弱々しく質問に答えていた。
「うーん…痺れだけなら、色々原因考えられるんだよな…検査してみよう。明日、血液検査とMRI撮るよ。」
「い、いやー…検査、怖い…。」
「うん気持ちは分かるけどさ、原因が分からないとどうしようもないからね。明日朝から検査入れとくから、今日はなるべくゆっくり過ごして。あんまり心配しちゃダメだよ、すぐ治るかもしれないし。」
ジン先生はそれだけ言うと、忙しいみたいで出て行ってしまった。
「……どうしようどうしよう。右手も動かなくなったら、僕どうなるの?トイレは?ごはんは?スマホも触れない!?ねぇテヒョン!!どうしたらいいの!??(泣)」
ジミナは不安で不安で仕方ないのだろう。痺れている筈の右手でぼんぼん僕を叩いてくる。
しまいには僕の胸に顔をうずめて泣き崩れてしまった。僕は可哀想なジミナの背中に両手を回し、思いっきり抱きしめて背中をさすった。小さな背中が震えてる。
「ねぇ落ち着いて。ジミナの右手、ちゃんと動いてるよ?ジン先生も、痺れだけならすぐ治るかもしれないって言ってたよ。」
「だってだって…左手だって、最初は痺れから始まったんだもん。おんなじ感じだった(泣)。僕わかるもん。だんだん痺れが麻痺になって、動かなくなるんだ…絶対そう…。段々動かなくなるのが、毎日毎日、怖くてたまらなかった。もう、耐えられない…。」
泣き続けるジミナを見ていたら、僕も不安でたまらなくなってしまった。片手でもできないことが沢山あるのに、両手が使えないなんて、一体どうなっちゃうんだろう…?
僕は力無くベッドに座るジミナの両手をとった。
「ねぇジミナ、手、マッサージしてあげるよ。触っていい?」
「ぐすん、、ありがと…。」
ジミナの手は小さくて、小指が特に短くて、とってもかわいい。でも血行が悪いのか、いつも冷たくて…。
僕はジミナの小さな右手を両手で包んで、温めるようにさすった。それからほぐすように、優しくマッサージしていく。早く良くなりますようにと、念を込めながら、祈るように触った。
「痺れるの、辛いねぇ。可哀想に…」
「テヒョンの手、温かい…ちゃんと感じるよ。ぐすん。」
「左手も触っていーい?」
「うん…。」
ジミナの曲がった左腕をゆっくり伸ばして、さすった。
「こっちの腕は、触ってる感覚はある?どんな感じなの?」
「感覚は一応ある…でも、動かそうとしても力が入らなくて、思ったように動かせない…。」
「注射の痛みは感じるんだね…」
「そうなの…」
注射跡がいっぱいでまだらに紫色になってしまった可哀想な左腕も、マッサージする。
「爪、右手だけ伸びてるね、切ってあげるね。」
「あ、ありがと…。左手は自分で切れたんだけど、右手は切れないから…看護師さん忙しそうで頼めなくて、忘れてた…。」
「そっかそっか。爪伸びてると気持ち悪いよねぇ。ちょっとカサカサしてるから、クリームも塗っておこう。」
爪を切って、少し乾燥した小さな手にハンドクリームを塗り込んだ。
「テヒョンありがと…。ちょっと落ち着いた。明日の検査、頑張る…。」
「うんうん。えらいね。僕も検査付き添うから、一緒に頑張ろうね。」
その夜僕は、宿泊許可をもらった。こんな状態で、明日手の検査を控えたジミナを、1人になんてしておける訳ない。
ジミナが側にいてと言うから、僕たちは、ジミナのベッドで一緒に寝た。僕はジミナの右手を、一晩中ずっとずっと、握っていた。
コメント
2件
すみません、以前のリクエストも消化できてないので、一旦無しでお願いします〜🙇♀️
リクエスト大丈夫ですか?