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うずめが灯りを消した。それでも扉に嵌められている磨りガラスから射す部屋の明かりで互いの顔は見える。そして白く浮き上がる彼女の素肌と、その曲線美も。広くはないクリーム色な壁をした浴室。薄明かりの中で惜しげも無く晒されたうずめの裸体は余りにも魅力的で俺は目が離せない。
細い首筋から流れ伝う湯の雫が、うずめの胸元から乳房の輪郭をなぞるようにして落ちてゆく。それは肋骨から下腹へと下がり…見えなくなった。むちりとした白い太腿の悩ましい曲線とお尻への膨らみ方が素敵過ぎる。俺には無い柔らかさや肌の温かさとその輝きに、見惚れるばかりだった。
「ね?お仕事どうだったの?。怪我してないよね?ちゃんと働けた?」
「ど…どうかな?。…俺なりにはできたと思うけど。…あの…うずめ?。前は自分で洗うからさ?。…その…もういいよ?。あ。…はぅっ。…そ、そこも洗ってくれるの?。…うっ。くっ。…あんまり…触られると…その。(なんだか…うっ?手慣れてる?。あくっ。先を…そんなに撫でられると…)」
湯船の縁を椅子に腰を下ろしている俺の目前では、薄暗い壁を背にする全裸のうずめが両膝を着いて、俺の股間の敏感な部位を、愛おしそうに、丁寧に手洗いしてくれている。こんな事は初めてなのだが抵抗は無く、ただ緩やかに揺れる形の良い乳房と甘い表情を見ていた。同棲を始めて五日目の夜、俺の最愛の女性は格別に淫美で妖艶で、とても甘く情熱的だった。
「んふ♡。硬ぁく太ぉくなってきたわ♡。こんなに逞しかったのねぇ♡。うずめね?決めたの。……レオにもちゃんと話そうって。…ちゃんと話して…もうひとりの、過去のうずめを迎えに行こうって。…あの子は待ってるの。うずめが迎えに来るのを。そしたら…レオと一緒に生きられるの…」
「うっ。うずめ。…あの髪の長い子は、やっぱりうずめだったんだな?。あ。もう、それくらいにしてくれないか?。…あっ。そこは…うっく?。(なんでこんなに上手いんだ?。亀頭とカリを扱きながら、反対の手でわざわざ棒の裏筋を撫でてる。うぁ?。男のツボを…心得すぎてないか?)」
蒼黒い髪先を白い頬にいく筋も貼り付けたまま、うっとりとした紅い瞳が俺を見つめている。両膝を立て開いた俺の股間のソレは限界にまで剛直化していた。うずめの柔らかい指や手のひらが、掴み撫でるたびに太腿や腰に軽い電撃が走る。うずめから女性ならではな蜜の薫りがした。彼女も俺と同じ様に、いやそれ以上に欲しいのかも知れない。乳首が起っている。
「レオ。立って?。もっと気持ち良くしてあげる。好きに出してイイからね?。一滴も漏らさずに…ぜんぶ呑むから♡。…んあ〜ん♡。ん?。なんで逃げるの?レオ。…うずめと…セックス?をシタいんじゃなかったの?」
ヘソ下に着きそうなほどに反り立った俺の勃起を撫でながら、甘く囁いた『立って』とゆううずめの言葉に抗えなかった俺は、彼女の前に仁王立った。両膝立ちになり身を伸ばしたうずめが手を俺の腰に回し、もう一方の手で反り立ちを握る。少し強引に手前に倒すと、軽く開いた赤い唇を寄せてくるのが分かった。その唇が触れる刹那、俺は初めて彼女を拒絶する。
「…もういい。離してくれ。それに俺がしたいのはこーゆーんじゃない。俺だけが気持ち良くなるのはセックスとは違う気がするんだ。それと少しだけ解った気がしたよ。…うずめは男の性感帯に、吐き出させるツボにすごく詳しい。…でも過去のうずめがどうやって生きていたのかなんて俺は知ったこっちゃない。…ここにいるお前が…大切なんだよ。わかるな?」
そうだ。俺がうずめとしたいセックスはこうゆう一方的なものじゃない。俺だけの快感のために彼女だけに努めさせるのは間違っている。女子の肌は男の2割から3割近く薄く敏感らしい。故に弾力に富み、滑らやかで、独特に柔らかいのだそうだ。それを使わせて奉仕させている今の俺は、金で買った女に身を委ねているのと同じにしか思えない。そんなのは嫌だ…
「ありがとう。でも今のうずめがレオを愛する方法は手淫か口で吸う事くらいしか出来ないの。…あの浮島にいる…過去のうずめを取り戻さないとレオと来世に行けない。あの子とひとつにならないと…うずめの輪廻は回せないのよ。…でも、もしかしたら戻れないかも知れない。だから、だから、レオに忘れられたくないから。…うずめは最後に…愛したかったの…」
「!?。最後にって何だよ?こんなことして終わらせる気だったのか?。やっぱりうずめは俺を舐めてる。俺の初恋をナメんじゃねぇよ。俺はお前だけ居りゃいいんだ。俺にとってはなぁ?うずめが最初で最後の…大切な女なんだよ。必ず成仏させて来世で会うんだよ。忘れるなよ!うずめ!」
「忘れてなんかない!。うずめ…とても嬉しかったのよ?忘れてなんか。でもこのまま側にいれば、レオの身体に…すごく負担がかかり続けるの。だからうずめは…次に進みたいの。せめて一人のうずめに戻らないと…」
決して広くはない浴室で、俺は跪くうずめに手を差し出した。それを握った彼女を立たせると真っ直ぐに見つめる。俺は怒っている訳でも咎めているわけでもない。ただ同じ方向を向いてくれていると思っていた彼女に、少しばかり焦れただけだ。時を増すごとにうずめへの想いが膨らんでいる自覚もあるし、手放したくない思いも強くなってる。それでも俺は彼女の転生への覚悟や希望を尊重しているつもりだ。だから邪魔だけはしない。
「うずめ?。お前が前に進もうとしているのは分かった。俺が言霊に刺されて死にかけた時に見たあの場所にいかなきゃならない事も解ったよ。あの髪の長い白装束な女性がお前なのもすぐに分かったし、彼女も俺を知っていた。って事は二人のうずめは繋がってるんだろう?。そうだよな?」
「うん。あの子はうずめが、うずめの事を分かってくれる人が見つかるまで、あそこで待っているの。ううん、違うわ。わたしが勝手に置き去りにしたのね。…もう痛いだけで…惨めだった毎日を…思い出したくなくて…」
「それでも…彼女もうずめなんだよ。昔の惨めだったうずめも、痛い思いをしたうずめも、全部が俺のうずめなんだ。…もう、わかってるよな?」
「うん。だから会いに行きたいの。取り戻せるかは解らないけど、もう戻ってこれないかも知れないけど、会わなきゃならないって分かったから、もう逃げたくないって思ったの。レオと一緒に生きたいって思ったから。」
「うん。俺もそうだよ。生きたいじゃなくて生きるんだ。ふたり一緒に次世でね?。おいで?身体が冷たくなってる。……ふぅ。しかしあの大蛇は難題だなぁ。ずーっと居るみたいだし、ずーっと睨まれてた。何なの?」
「……ん。あ。…レオのが当たってる♡。…あれは…地の龍なの。…この地の鎮守神よ?。ん。…うずめ達を待っているの。んあ?。あれ?。ん♡悪い子じゃ…ないの。…わたしが、ひとつに戻るのを…んあ♡。…あ♡ん?」
「どうかしたの?うずめ。(うわぁ。うずめのアソコが、俺のにモロに擦れてるよぉ。気持ち良くて腰が動いちゃいそうだけど…ここは我慢だ!。って。…うずめ、少し揺れてないか?。まさか…わざと擦り付けてる?)」
一緒に湯船に入ると、身体の大きい俺が必然的に下になるのだが、今夜のうずめのお尻の位置が少し上な気がする。それもその筈、今日のうずめはいつものボジションよりも明らかに近い。とゆうより既に俺の腰を跨いでいる。未だフル勃起している俺のアレに、柔らかい弾力が吸い付いてる。俺の肩に両手を置いて、見詰めながらゆっくり揺れているうずめ。そのたびに圧し付いた柔らかい肉襞が、勃起の裏筋を強めに舐めあげてくれる。
「ん♡。レオ、うずめ…すごく不思議なの。腰が勝手に…動いちゃうの。それにぜんぜん、痛く…ないの。ん♡。…レオは?。あ♡気持ちいい?。イヤじゃない?。…あっ…はぁ♡。…すごく…硬い。…んっ♡。うふぅ♡」
「うん。こうゆうのが俺は好きだな。一緒に感じ合うのが…一番大切だと思ってる。…うずめ?。…おっぱい…触ってもいいか?。抱き締めたことはあるけど…触ったことないよな?。もしも嫌なら…ダメって言ってくれ。」
「あ♡。レオ、ぜんぜん触らないから…うずめの身体が嫌いなんだと思ってた。…あ、はぁ♡。かぷって噛んで?。お前は悪い娘だって叱って?。うふふ♪うずめ、もう大丈夫よ?。んわ♡。レオが良いなら…抱いて?」
「ああ。うずめは悪い子だ。…俺をこんなに夢中にさせて。…かぷっ。はむはむはむ。ちゅ。…ぷるんぷるんだなぁ。なんだか俺、すごく感動してる。あ。う?。…うずめ?抱きしめさせてくれ。…ほら、ここにおいで?」
うずめの素肌を改めて抱き寄せた。利き手で乳房を持ち上げる様に揉みながら硬くなっている乳首ごと、唇で噛みついた。舌先で乳輪を虐めつつはむはむと唇だけで咀嚼する。そのたびにビクビクと全身を震わせるうずめが可愛い。空いた手で腰を抱いた途端にお互いの股間の位置がピタリと合ってしまった。咄嗟にビクッと二人の腰が引ける。まだ俺も心の準備が…
「…もう解ったと思うけど、うずめは遊女だったの。でも好きでなってない。あの子を、あの龍を止められなかったから罰を受けたの。街を再生する者たちの慰み者になって…自分の犯した罪の重さを知れって。…ちゅ♡」
「…んちゅ。…そうか。…しかし無茶苦茶だな。…人が神と仲良くはなれても…神を自在に操れる訳が無いのに。お?…うずめ?。どうかしたのか?なんで泣いてる?。…ごっ!ごめん!。なんか俺!調子に乗ったか!?」
「ううん。…ぐす。…初めてなの。…気持ちいいって思えたのが。…それが嬉しいだけ。…すん。…レオ…大好き♡。…ぐしゅっ。…すごく愛してる…」
「うずめ。(…刻みつけられた古い傷や痛みや罪を忘れていないから…俺とのこーゆー触れ合いが怖かったから…自分の身体は穢れてるって言ってたのか。負わされた罪はどうあれ、その深い傷や痛みや恨みや辛みごと包みこまないと、うずめはきっと救われない。…そうだよな?。鎮守の龍…)」
またうずめを泣かせてしまった。これが嬉し涙だとしても納得していいわけが無い。昔の記憶に苛まれていたからこそ、うずめは快感を感じたことを嬉しく思ったのだ。その刻まれた傷や痛みは消せないとしても、その事で泣かなくてもよくしてやりたい。そうだ、もうひとりの、あの荒涼とした場所にいるうずめに会いに行かなければ。そして彼女を目前のうずめとひとつにしなければ、彼女たちはこのまま縛られ続けるのかもしれない。
俺にできるのは、うずめの過去とこれからを受け止めてやること。一緒にいてくれる彼女が成仏することで消えてしまうとしても、俺はうずめと交わした約束を信じる。なぁに、今の俺では誰の役にも立てず、誰の助けにもなれない。しかも金を他人ほど稼げる訳でもないのだ。どの道、碌な生き方など到底できないであろう今世の自分になど何の未練もない。しかし次こそは『良い人生ガチャ』を引き当てる!。うずめこそ!その証だっ!
「なんだか遅くないですかぁ?レオたちぃ。もう30分は入ってますよねぇ?。……まさかっ!?いちゃいちゃだけじゃ気が済まなくなって!?」
「こらこらカリンちゃん。あの二人は特別ラブラブなんだから放っておいてあげなさいよぉ?。それにお邪魔してるのはあたし達なんだからね?」
「まぁ。そうですけど。あ、それよりもさっきのですよ。『レオが脱ぐと凄い。』ってなんで知っているんですかぁ?。あたしも最後に見たの高校二年の頃なのにぃ。まさか『そおゆう関係』とかじゃないですよねぇ?」
「うふふふふぅ♡。その辺は想像に任せるわぁ。そんな事よりレオちゃんって小さい頃どんな子だったの?。幼馴染みなんだから聞かせてよぉ♪」
折神かりんちゃんかぁ。可愛いし良い子みたいだけど、アタシと同じでレオさんの本命にはなれなかった女子よねぇ。しかも幼馴染みって、もっと二人の距離が近かったりするはずなのに、アタシの方がその辺はリードしてるみたいだしねぇ♪。まぁアタシやうずめちゃんよりも彼の事を知っているのは確かなんだし、そのへん目的で仲良くしておくのも有りかなぁ?
「う。まさか質問を質問で返されるとは。そうですねぇ、小さい時から背が高くってぇ。あ。レオからはどこまで聞いてます?。それによっては…」
「…半年前まで自治体が運営する孤児院にいたって。あとは友達つくるのが苦手だったってくらいかなぁ?あんまり自分の事を話さないよねぇ。」
「あたしはその孤児院でレオとずっと一緒だったんです。あたしが七歳の時にネグレクトでそこに保護されました。…最初は頼れるお兄ちゃんみたいでしたよ?。かけっこも早くてみんなの人気者で。でも小学五年生くらいから周りの大人がレオを変な目で見るようになったんです。あ。ども。」
初神ハジメさんかぁ。すごく綺麗なお姉さんよねぇ。しかも大人の女の色気がムンムンだし。まさかあのレオに、こんな素敵な『お友達』ができてたなんて意外すぎるわ。もしかして霊気の波長が合うのかな?レオと似たような波を感じるし。霊感や霊気の波長って十人十色でこんなに似ている方が珍しいんだけど。…!?。まさかレオと契ったりしてないわよねっ?
「?。大人たちが変な目でレオちゃんを?。特別に背丈が伸びたとか?」
「いいえ?。…体力測定ってあるじゃないですか?。あれが原因みたいなんですけど誰も何にも教えてくれなくて。ぽりぽりぽりぽり。…こくん。でも中学に上がってからは逆にスカウトされてましたねぇ。だけどアタシ達のいた孤児院は部活とか禁止だったんですよ。帰りが遅くなるって…」
「ふぅん。ゴクゴクゴク。…ふぅ。…でも人気者だったんでしょう?。今のレオちゃんはお世辞にも社交的とは言えないけれど。…ぽりぽりぽり…」
「う〜ん。教室を覗いてもポツンな時が多かったですねぇ。だから思いっ切り構ってたんですけどぉ〜ちょっとやり過ぎて嫌われました。てへ♪」
どこで見てもあれだけ目立つ獅子神獅子なのに、子供の頃の話がなんだか普通で逆に驚いた。それなりに霊感があるから輝いて見えたのかしら?。特にうずめちゃんのことを知ってからは余計にそう見えてしまうし、その後の彼の『筆下ろし』が強烈だったのか不順だったひな祭りも始まった。
何となくだけど、あたしの生活が好転している様な気はするのよねぇ。しかもレオさんに10万円なんてお金まで貰っちゃったし。だけど使っちゃうのはどうしても躊躇うなぁ。でも、借りてからずうっと利息しか払えていないんだし借金は少しでも減らさないと生活は良くならないわよねぇ。
「あ。…こんばんは。貴女が…カリンさん…です…ね?。…初めまして♪」
「ひっ!?。……あ、あの?。うずめさん、ですか?。は、初めまして…お!折神かりんです!。す、すみません。不躾にお仕掛けてしまって!。(脳と首の後ろがヒリヒリするこの感じ。…間違いない。…ガチだわ!)」
この人…ヤバあ。ホントに人間じゃないじゃん!。しかも霊力が強っ!。すごく綺麗だけど…人に確実に霊障を与えるタイプだわね。まさかレオってもう取り憑かれてるんじゃないの?そして初神さんも?。これはマジやばだ。そもそも命ある者が近づいていい存在じゃないのに、なんで同棲なんかできるのよっ!?。確かにレオは生命力が半端ないけど、その生命力を吸い付くされるかも知れないのに!。これはアタシが何とかしないと!
「ふぅ。暑ぃ。ハジメさん。こんな奴の相手してもらって悪かったね?」
「あーっ!ひっどーい!。こんな奴ってなによ?こんな奴ってぇ!?」
「ううん。レオさんの昔話を聞けて楽しかったわよ?。…あれぇ?アタシとの時よりもスッキリした顔してるわねぇ?なんだか妬けちゃうわぁ♪」
レオってホント何考えてるのか全く解んない。彼女は幽霊なのよ?怨霊なのよ?しかも色違いでお揃いなジャージって意味わかんない。そーゆーラブラブなのは生きている者同士でやる事でしょう?。しかも二人とも湯上がり以上にスッキリした顔してるし!。べっ!別に羨ましくなんか無いんだからねっ!?。その気になればアタシだって相手くらい居るんだから!
「えっ!?。そ、そそそ、…そんな事…してませんからぁ。ハジメさんの意地悪ぅ。…そりゃ…少しは誘惑しましたけどぉ……レオは紳士ですから♡それと…多分ですけど…うずめはもう、普通の女の子に戻れました♪。ハジメさん。話を聞いてもらったり心配をかけてしまって、ごめんなさい。」
「あら?そうなの。…じゃあもう大丈夫なのね。レオさんにもちゃんと話せたのなら良かったわ。てことはぁ?相当に我慢したんじゃないのぉ?」
「まぁ。正直ハードだったけど…なんとか理性はギリ保てたよ。あ、次の満月っていつだか分かる?。うずめとやらなきゃならないコトがあるんだよ。そしてハジメさん。…俺、また死ぬけど。その夜はよろしくな?。それと次は救急車は呼ばないでくれ。蘇生しなかったら警察でいいから…」
アタシの驚く話題がまた出てきた。レオが死ぬってなに?。これだけ生命力に満ちた青年が簡単に死ぬ訳ないじゃない。まさか自殺するの?それだけはしないって言ってなかった?。アタシが霊感が強くて困ってるって相談した時に励ましてくれたじゃない!。『それも個性だよ。カリンにしかできないことがかきっとあるんだ。』って言ってくれたのに!。自殺なんて許さないんだからねっ!?。もしかしてその原因は…この怨霊なのっ?
「ええっ?また死ぬって何っ!?。あの時みたくまた心肺停止になるつもりっ!?。はぁ、救急車も呼ぶなってもう。そんなに大切なことなの?」
「ああ。行かなきゃならない向こうの世界があるんだよ。そこで、もうひとりのうずめが待っているんだ。こっちのうずめと…俺のことを。ね?」
「うずめだけで何とかするって言ったのだけれど、そのまま戻れないかも知れないのなら俺も行くって言ってくれて。次世への輪廻を一緒に回そうって約束しているんだから一蓮托生だよって言われたら、もう突き放せなくなったの。…ごめんなさいハジメさん。…そして…折神さんも。…え?」
アタシはうずめさんに向けて手印を切った。災厄を祓う玉串が無くともハジメさんやレオの御力を借りれば何とかなるわ!。そう、たとえこの場で祓えなくても!この部屋から追い出せるかも知れない!。いいえっ追い祓うのよカリン!。こんな危険な怨霊にレオを渡してなるものかっ!。レオを護るのはアタシ!折神かりんしかいないんだからねっ!悪霊退散っ!
「レオ。その娘から離れて!。これだけ明確な実体を持っているだけでも相当に強力な怨霊なのよ?このまま一緒にいれば確実に祟り殺されるわ。例え彼女に悪意はなくともレオの生命力は削られる。般若波羅…痛っ!」
きょとんとしているウズメさんに、組んだ両手を向け続けているかりんの頭頂部に、俺は容赦のない唐竹割りを落とした。その衝撃と痛みに頭を抱えてしゃがみ込んだカリン。涙目になった真っ青な瞳で俺を睨んでいる。
またこの迷惑系な猪突猛進娘は。周りの状況を見もせずに自分の考えだけで突っ走りやがって。それで学生時代の俺がどれだけ悲惨な目に遭ったかも知らずに、また俺の邪魔をするのか?。俺はうずめのために生きられても、お前の為には生きられねーんだよ。そんな事しても無駄だからな?
「つまんねーコトすんなよカリン。お前が俺の選択をどーこー言える立場かよ。…俺が怒らないうちにサッサと風呂に入ってこい!。おら行け!」
「でっ!?。でもレオ!?。祟られてるのよ!?死ぬかもなのよっ!?」
「そんなのは百も承知だ。それと祟られてるんじゃねぇ、俺がこの部屋に居てくれって頼み込んだんだよ。なんにも知らねぇくせに出しゃばんな。お前はホンっとに変わんないなぁ。ほら、さっさと風呂に入ってこい!」
折神かりんが俺のことを心配しているのは昔から分かってる。俺が大人たちから不気味がられるようになってからも、変わらず側にいたのはカリンだけだったしな?。だけどお前の脇目も振らない言動は俺を困らせてばかりだった。そもそも俺が口下手なのと、どの程度の距離を置けばいいのか分からなかったのにも責任があるだろう。頼むから良き妹分でいてくれ。
とは言え…女の子の神秘や温かさや柔らかさに初めて触れたのはかりんなんだよなぁ。触れたとゆうよりも、かなり強引に押し付けられたんだけれど。お陰で少しは対人恐怖症も薄れてきたし、女性とも話しができるようにはなったので、少しは感謝しないとだな。ガチの腐れ縁ではあっても。