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**テスト返し**
「及川ー」
「はーい!」
「次、頑張れよ。」
「え?」
先生の声に驚いて顔を上げる。そこには、真っ赤なチェックがついた答案用紙が置かれていた。
また怒られる…。また、あの冷たい目が見えるんだ…。
「ゴクッ。」
息が詰まりそうになる。
だけど、普通を演じなくちゃ。
大丈夫、大丈夫。
「90点?」
「う、うん…。」
「ふーん、けっ、お前、頭悪そうなくせに、毎回いい点数取ってんじゃねぇか。」
本当は、怒りたくてたまらない。
でもそんな自分は、どこか隠さなくちゃ。
「普通」じゃなくちゃいけない。
感情を抑え込んで、笑顔を作らなくちゃ。
『大丈夫、冷静だよ。』って、心の中で繰り返しながら。
ふぅ…。深呼吸。
「ふっふ〜ん!岩ちゃん、何?嫉妬してるのぉ〜?」
「何言ってんだよ!?」
ガツン!
痛みが走る。
「いったぁぁい…笑笑」
無理して笑う、
**帰り道**
「じゃあな、及川。」
「うん。」
家に帰りたくない。
どうしても足が重くて、進めない。
目の前の家が、どんどん遠くなっていく気がする。
「もう、どこか遠くに行けたら…消えられたらいいのに。」
でも、足は動かなくて…結局家の前に立っている。
ガチャ…。
「ただいま。」
「テスト、どうだった?」
おかえりも言わないのか…
「はい。」
「チッ。」
あぁ、来た…。
「徹、これ、どういうつもり?」
「バレーも下手くそ、勉強もできない。」
「あなたに、何ができるの?」
「ずっと言ってるでしょ!?こんなこともできないなんて、許されないの!」
「できて当たり前なの!できないのは、おかしいことなの!」
それでも、返事をするしかない。
『うるさい』って言えたら、どんなに楽だろうか。でも言えない。
何もできない自分が、こんなにも嫌い。
でも、笑って答えなきゃ。
「うん…笑」
「母さん、ごめんなさい…。
迷惑かけないように、頑張るね。」
「次も、同じ結果だったら…。」
「わかってる、わかってるよ。」
「部屋で、勉強してくるね。」
ガチャ、バタン。
「はぁ〜〜、終わった。」
今日は全然怒られなかった。
でも、それが逆に怖い。
怒られないってことは、もう何も期待されてないってことだってわかってる。
それでも、少しだけ…心のどこかで、期待してしまっている自分がいる。
「ふっ笑笑あっはは…」
「バカみたい…。」
ポタ、ポタ。
「え?」
ポロポロ…涙がこぼれ落ちる。
「なんで…止まんないんだ…?」
止まれ、止まれ…。
泣くなんて、ガラじゃない。
だけど、どうしても止まらなくて…。
「ッ泣。」