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「人?」
「紅炎龍と戦ったことあっただろ?その時の感想は?」
首を傾げるフィニス達に問いかけるヴェスパ。
「硬くて刃が通らなかったな」
「魔法もあまり効かなかったし、そもそも早かったわよね」
「炎が熱かった」
「子供が可愛かったですね」
予想外の感想が多く、少しだけ苦笑いをするヴェスパ。小さく咳払いをし、話を続ける。
「防御力と魔法耐性が異常に高いんだ。刃も魔法も通さない鱗。つまり、その鱗を魔道具に流用できれば……?」
その言葉にハッとするルシオ。
「高耐久の武具ができる……?!」
「そういう事だ。その鱗をどう加工するのかは私も知らないが、一枚の鱗でひとつの武具を作るのには十分だというのは聞いたことがある……のだが……」
口が止まるヴェスパに、ニティアが水を飲みながら呟く。
「それだけ硬い素材を加工できる職人がいないってこと?」
「そういうことだ。私にその加工ができる人物の心当たりはない」
それを聞いていたアオが母親の袖を引っ張りながら口を開く。
「ねぇねぇ。ゼフィリアがドワーフの人たちは物作りが凄いって言ってなかった?」
「そう言えば……そんな事言っていたことがあったかも知れないわね。呼んでみましょうか」
笑顔でアオの頭を撫でるエレノア。
「私が呼ぼうか?」
エラリスの言葉を遮り、笑顔で手を目の前にかざすエレノア。
手の先に光が集まり、小さな旋風が発生すると同時に、見慣れた小さな妖精が姿を現した。
『こんな時間にどうかした……ってあら?エラリスに……フィニス達も……?無事に再会できたのね』
くるくると宙を舞いながらアオの頭に着地するゼフィリア。
「ねぇねぇゼフィリア。ドワーフって物作りが得意なんだよね?」
無邪気な様子で頭上のゼフィリアに尋ねるアオに、ゼフィリアも楽しそうな笑顔で答える。
『そうよ?なんだって作れちゃう職人さん達なんだから!』
それを聞いていたヴェスパ。何度かエレノアが呼び出して会ったことがあるのだろう。お互い特に自己紹介などもなく話し始めた。
「紅炎龍の鱗の加工もできるか?」
『ん〜むしろそっちの加工の方が得意なんじゃないかしら?昔はさまざまな魔道具や武具を作ってたらしいし』
それを聞いてニヤリと笑うヴェスパに、ルシオが慌ててヴェスパを止める。
「いや待てって。そもそもその鱗で何をする気なんだ?」
「お前の盾の強化だよ」
「あの鱗はアルテアが貰った鱗なんだし、勝手に」
「あれは皆さんのものですので、使ってくれて構いませんよ」
ルシオの言葉を遮り、アルテアが笑顔で答えた。
「と言う訳だ」
わざわざ自分の盾の強化を図らなくても、ローブやら他の武具を作るなりすれば、アルテアの防御力だって上がるであろう。それにもかかわらず、あっさりと貴重な鱗を自分のために使ってくれていいと言ってくれるアルテアに、申し訳なさがルシオの胸中を襲った。
「いや、だからと言って貴重な鱗を……」
「ルシオさんはいつも皆さんの最前線に立ち、私達を守ってくれます。ルシオさんの危険性が少しでも減るのであれば、その使い方が一番いい使い方だと思います」
まっすぐルシオを見つめ、笑顔で答えるアルテア。
「……ありがとう」
2人のやり取りを見てふっと笑うヴェスパ。
「決まりだな」
「んで……その肝心なドワーフ達はどこにいるんだ?」
ニヤニヤした表情でルシオとアルテアを見ながら、フィニスがゼフィリアに尋ねる。
『それは……知らないわ』
「「は?」」
会議室が沈黙に包まれてゆく。
『な、なによ!ドワーフ達は洞窟とか地中とか……そう言うところに身を隠すことが多いの!昔は何度か会ったこともあるけど……最近は会ってないんだから仕方がないでしょ!』
その沈黙に耐えられなくなったゼフィリアが、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「地中にいるんだ。それなら……」
エラリスがゆっくり立ち上がり、片膝をついた状態で、片方の手も地面に添える。
「なるほど」
フィニスが発した言葉と同時に、エラリスが触れている地面がじんわりと輝き出した次の瞬間……
『こんな場所に呼ぶとは……一体どうした?』
地面からモラティの顔がひょっこりと現れた。
「うわぁ……お姉ちゃん凄い!!この子は土の精霊さんかな?」
「本当に……精霊達と仲良くなれたのね……」
エラリスの呼び出したモラティの姿に興奮するアオと、娘の成長に感激しているエレノア。
少しだけ頬を赤らめたエラリスが、モラティをゆっくりと抱き抱え、アオに手渡しながら用件を伝える。
「ドワーフの居場所知ってる?」
『ん?ドワーフ?それなら知ってはいるが……』
初めて見る小さな精霊の姿に目を大きく見開くヴェスパ。一度深呼吸をした後、モラティに視線を向ける。
「私はコイツの姉のヴェスパ。突然だが……こいつの盾に紅炎龍の鱗を使いたいんだ。そのために技術者のところに行きたい」
親指でルシオを指差しながら話すヴェスパを見ながら、小さく頷くモラティ。
『なるほど、そう言うことか。ドワーフはいくつかの集落がある。そう言った加工ができて近い場所となると……ノーマン渓谷にある洞窟の奥にいるな』
ノーマン渓谷は王都ヴォルガムから東へ行ったところにある渓谷である。歩いて2〜3日で行ける距離でもあるため、そこまで遠くはない。
また遠くまで行かないといけないのかと思っていたフィニスは、内心ほっとしていた。
「お、案外近くなんだな」
『うむ。だが気をつけておくんだな』
『あ〜……ね……』
モラティの言葉に同調するかのように、いつのまにかフィニスの肩に乗っていたゼフィリアも言葉を濁していた。
「そんな危険な感じなのか?」
肩に乗るゼフィリアに尋ねるフィニス。
『いや……そう言うのじゃなくて……』
『良くも悪くも職人気質という奴だ。気に入った人間であればどんな依頼でも快く受けてくれるが……逆の場合はどんなに脅されたとしても引き受けることはない』
「あぁ……そう言う……」
次の目的が出来たところで、エレノアがヴェスパに視線を合わせる。
「あの……ヴェスパさん」
「ん?あぁ……そろそろか?」
「はい」
2人の言葉に首を傾げるアルテア。
「どうかされましたか?」
そんなアルテアに微笑みながら、エレノアが答える。
「先ほどお話しがあった世界樹……ミトラの樹の所へ……身体の浄化に」
「……!!」
「あ、いえ、今すぐじゃないですよ?明日にでも行こうかなと」
バーン!
両手で机を強く叩くアルテア。
突然の大きな音にびっくりして、全員の視線がアルテアに集まる。
「あ、あの……私も行っちゃだめですか?!」
コメント
1件
わああもう第121話もめちゃくちゃ良かったですっ!!😭💕 紅炎龍の鱗でルシオの盾を強化する話、熱すぎるし、なによりアルテアが「ルシオさんを守るために使ってほしい」って言ったところで私の心臓がキュッてなったよ…!!😇💘 しかもそれを聞いてヴェスパがニヤニヤしながら見てるの、兄貴ポジションすぎて笑うwww モラティがひょっこり出てきてドワーフの居場所を教えてくれるところも、精霊たちとの絆が感じられて良き😭✨ それにしても「良くも悪くも職人気質」ってゼフィリアが言ってたの、今後の交渉どうなるのか気になりすぎる!! エレノアがアオと一緒に身体浄化に行く話も出てきて、母娘の絆がじんわり沁みますね…最後のアルテアの「私も行っちゃだめですか!?」は思わず笑顔になっちゃいました〜🤭💕 月白さん、毎回エモいとこ連れてきすぎですよ!!好きです!!🔥