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手すりに肘を置き、ワタシは一息ついた。
あれから私は、運動場で楽しそうに遊ぶみんなを誰もいない屋上から眺めていた。
視線を彼らのいた所に向ける。
ついさっき、私の幼馴染達はみんなここを降りていった。
今はそれぞれの教室か図書室にいると思う。
視線を戻し、また運動場を眺めた。
運動場でみえる彼らの姿はとても楽しそうに見える気がする。
“はぁ…。”
ため息なんてついたら、みんなに怒られるかな。
幼馴染の声が他の音よりも大きく聞こえてくる。
ゾム「へいへいへい!こんなもんかぁ?(煽)」
コネシマ「おらおらかかってこいや!(煽)」
モブ「ーーーーー!?」
モブ「ーーーー。ーーーーー?」
ゾム「弱っちぃなぁ。」
コネシマ「そんなんやから運動できへんねん。」
他の人の声は聞こえない。
聞こえるのは彼らの声だけ。
ゾム「俺らには最強幼馴染の…」
(キーコーンカーンコーン
シコネシマ「やっべ!おいゾム!戻るぞっ!」
昼休みが終わる合図のチャイムが大きく鳴り響いた。
そのせいでゾムの声がかき消されてしまい、最後まで聞き取ることができなかった。
ゾムは最後、なんて言ったんだろう。
最強幼馴染、かぁ…。
ロボロかエミさんあたりだろうか。
いや、でもゾムはみんなのことが大切だっていつも言っていた。
そんなゾムに限って指名で一番大切だということはそうそうないだろう。
ゾムはしっかり俺’ら’と言っていたが、ワタシはそこを聴き逃してしまっていることを知らない。
だからワタシはゾムの言葉の意味を勝手に勘違いしていた。
手すりに預けていた身体を離そうと腕の力を使い起こし、バランスを整える。
さて、そんなゾムの授業風景でも見に行こうかな。
ワタシは扉をすり抜け階段を降り、ゾムのいる教室へと向かう。
春の風が屋上に吹き、いつからか柵に引っかかっている布をなびかせた。
こっそりと入る必要もなく、開いていた窓から堂々と教室に入る。
ゾムの席は1番後ろだった。
左手で頬杖を付き、何やらノートに書いている。
休みなのか横に空いている席があったのでそこの机の上に腰をおろす。
今は国語の授業中だった。
ワタシ、この国語の先生の授業が何気に一番好きだったんだよね。
面白おかしく、でも分かりやすく説明してくれるからすんなりと頭に入ってくるんだ。
そういえばゾムは国語が苦手とか言ってたっけ。
テストの点数とか見てないから分からないけど、大丈夫なのかな?
ふと見えたゾムの国語のノートには、集中できていないのか小さめの落書きがあった。
ゾムらしい絵がいくつも描きだされている。
私達、幼馴染にしか分からないような絵。
”…ふふっ。笑”
あまりにも懐かしかい絵を描いていたからワタシは思わず笑ってしまった。
その時ゾムは声が聞こえていたかのようにガバッと立ち上がりこっちを向きフリーズしていた。
一瞬、目が合ったかのようにも思えたけどきっと気のせいだろう。
そしてキョロキョロと周りを見回しだしたゾム。
先生「…ゾム?何か探しているのか?」
ゾム「…あ、いや、!…別になんもないっすよ。すいません、座ります。」
そう言ってから、力が抜けたようにガタッと椅子に座りなおした。
生徒「ゾム?今日のお前、朝からおかしいぞ?」
ゾム「そんなことあらへんって!笑いつも通り、いつも通りやから…。」
自分に言い聞かせるように’いつも通り’と繰り返し言っているようにみえた。
クラスメイトと少しの会話を終わらせたゾムは、しゅん…。と寂しそうな顔をして机に伏せた。
ゾム「〇〇…。」
ボソッと呟くようにワタシの名前を呼んだゾム。
おそらく誰にも聞こえていないと思う。
“ゾム…。”
ワタシも、何だか寂しくなってきた。
姿は見ることができるのに、話すことや触れることは一切できない。
その事に、少しストレスを感じてきている自分がいる。
どうしてワタシは、幽霊なんかになっちゃったんだろう…。
みんなと、喋りたいよ、遊びにも行きたい、またふざけあいたいよ、!
・・・はぁ、今更こんなこと思っても無駄だな。
彼らのシェアハウスにでも先に帰っておこう。
どうせあと数十分もしたら、この授業も終わるだろうし。
掃除を終わらせたら今日は部活も委員会もないからみんな早く帰って来るはず。
といっても夕方あたりだろうけど。
彼らのシェアハウスに着いてから数時間が経った頃。
玄関の扉がガチャッと音を立てて開いた。
すると同時に元気な声も聞こえてきた。
いつもの、いつも通りの元気のある声。
シャオロン「おっしゃ俺いちばーん!」
ゾム「ふーん!俺が二番だぜ!」
コネシマ「くっそぉ三番やったかー!」
ロボロ「何をつまらん勝負しとんねん。」
鬱先生「あれが楽しいんやできっと。笑」
トントン「はよ入れ。後ろ詰まっとんじゃい。」
ショッピ「そっすよ。くだらない勝負してないではよ上がってください。」
チーノ「相変わらず毒舌やなショッピは。笑」
賑やかな雰囲気で、ワタシは安心した。
そして、彼らは一旦自分の部屋で着替えてからまたリビングに集まった。
時刻は午後十八時。
いつもは夜ご飯を食べ始める頃。
だがみんなは食べ始める様子も、その夜ご飯を準備する様子も見られなかった。
(ピーンポーン
ワタシが不思議に思っていたその時、無機質なインターフォンのチャイムが鳴り響いた。
ゾム「あ!やっと晩飯届いたか!」
鬱先生「俺が出てくるわ。」
コネシマ「お?珍しいやんけ。いつもは他の奴らに任せるのに。」
トントン「何か見られてやましいもん頼んでんとちゃうやろな?」
鬱先生「そんなもん頼んでへんわ!笑」
そう言い残し、鬱は玄関に向かっていった。
鬱ってそんなにやましいもの頼んだりするの?
ワタシには全然そんなイメージ無かったな。
数分してからゆっくりとした足取りでリビングに戻ってきた鬱。
何やら少し大きめの荷物が何枚か届いたようだった。
鬱先生「あのさ、誰かピザ頼んだ奴おったりする…?」
“・・・ピザ?”
all-鬱「・・・ピザ?」
みんなと綺麗にハモった。
鬱先生「え、うん…。しかも俺ら宛に。」
誰がそんなことしたんだろう。
ロボロ「誰からなん?送り主くらい書いとるやろ。」
そう言ったロボロは、鬱に近寄り覗き込むようにしてピザの箱をみた。
すると、返ってきたのは「××からやんけ!笑」とかいうものではなく…。
ロボロ「・・・は?」
という間抜けな声だった。
その数秒後、衝撃の事実を口にしたのは鬱の方だった。
鬱先生「これな?○○が、送り主になってるんよ。」
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