テラーノベル
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私の名前は山田唯。黒髪黒目、対して醜くも美しくもない、ただの一般人である。特筆すべき趣味は無く、強いて言うならゲームが好きなくらい。至って平々凡々、普通の女子高生。
だが、そんな私にも面白い友人がいる。
「おーい、生きてるかー」
そう、今まさに目の前で心臓を抑えてぶっ倒れているコイツである。べしべしと叩いても反応なし。死んだか…
状況を確認する。手にはスマホ、顔は安らか。強いて言うなら息が荒い。
倒れているが、この状況なら心配は不必要だ。なぜなら、コイツの死因は大抵___、
「オシ…ムリシヌ…トウトイ…」
「すでに死んでるでしょ」
___“推し”の過剰摂取であるからだ。
「だって見てよ!!!!!!」
「うわうるさ」
コイツの名前は高梨花菜。茶髪で顔も良く、国語の成績も良い。先生からもよく頼られているし、クラスメイトからの評価も厚い。まさに完璧、と言いたいところだが。
私はコイツを、残念な美人と言う他無い。
「このイラスト!マジで最高すぎるでしょ!?はーもう推しの顔面の素晴らしさだけで全世界救える〜…」
「顔面勇者?」
花菜はピンクのスマホを私の目の前に突き付けて息継ぎ無しでそう言った。スマホの画面に移るのは、紫色の瞳をした彼。そう、花菜の推しだ。
「あ゛ぁ〜ちゅき…しゅき…すき…」
「国語テスト五本指の語彙力どこ行ったの?」
「ヲタクの語彙力なんて推しの前で生きてる訳ないじゃない馬鹿なの!?」
「語彙力くん儚すぎる」
花菜は限界ヲタクだった。公式の一挙手一投足に阿鼻叫喚するタイプのヲタクだった。肌のお手入れ?してませんね(推しを見ることで幸せホルモンが出ている)タイプのヲタクだった。
そう、花菜は限界ヲタクである。
その阿鼻叫喚を間近で見ている私にとって、コイツはどうやっても残念な美人枠である、ということだ。
「で、なに?そのイラストのどこが好きなの?」
「よくぞ聞いてくれました」
花菜は先ほどが嘘のように俊敏に、ずいっ、と起き上がり、まるでコスメの紹介をするかのようにスマホを私に見せる。息を吸い込んだかと思うと、間髪入れずにマシンガンのごとく言葉を紡ぐ。
「このイラストは今年の推しの生誕祭イラストでしてそれだけでめでたい気持ちでいっぱいになりますけれどもまず!まず!!この表情!!!大天才絵師様愛してる推し尊い大好きチュッチュと言ったところなんですけど」
「確かにこのはにかんでる感じは良い。いつも悪い顔しか見ない気がするから」
「そうなんだよ!!!!!!!!!!(バカデカ音量)」
花菜の推しは基本的に悪い顔か無表情か。勿論それ以外の表情もするが、このイラストのように嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうにはにかむこの感じはあまり見ない。花菜の言葉を借りるなら、「新表情実装大感謝の巻」だろうか。
それにしてもよくノンブレスでそこまで言えるものだ。酸欠にはならないのだろうか。ていうか、めっちゃ長文だな…
「あ、あとこの長さが百個くらいあるから」
「マ ジ か よ ! ?」
「推し語りをさせた方が悪いよ。今夜は返さないぜベイベー…」
「いやここ私んちだが!?」
「まぁまぁ。で、次はね__」
困惑する私を置いて、花菜はマシンガントークをぶっ放す。やめられない止まらない推し語り。
どうやら、今日はお泊り会らしい。
諦めて傍聴の姿勢に入った。
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のーねーむ
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