テラーノベル
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キーンコーンカーンコーン。
授業終了の澄んだ音色のチャイムが鳴り、昼休みが始まる。クラスメイトたちが購買に走り、弁当を広げて行く。それを傍目で見た後、私は素早くスマホを取り出した。
私、高梨花菜は、教室の窓際でスマホを眺めていた。それはもう恋する乙女のような表情で、液晶の画面越しの彼を眺める。そして、小声でそっと呟く。あまりの感情に声を出すことを耐えきれなかった。
「神すぎて死ぬぅ…」
そう、私の推しだ。
アメジストのような紫の瞳、悪い顔もしくは無なカッコいい表情、整った顔立ち、この世の何よりも最高な性格、細身の身体est…。
推しが癖なのではない、癖が推しなのだ、というくらい。そのくらい、完璧に私の好みだった。
「あいらぶゆー、全宇宙が滅んでも愛してるよ…!」
生憎と世界の中心で愛を叫べばしないが、教室の隅で愛を叫ぶことはできる。あぁ、人生の生きる意味よ。この人が存在するだけでどれほどまでの人類が救われるのだろう。ふむ、きっと千兆人ほどだろうな、と考えて。
視界の端に見慣れた黒髪が映る。
「花菜、ご飯食べよ」
「おっけー!唯はここ座って!」
私の友人…まぁ、言ってしまえば親友である彼女の名前は、山田唯。私のこの(推しに対して)荒れ狂う内心を知っている、数少ない人物だ。
唯が席に座り、私の机にお弁当を広げる。私はコンビニでパンを買ってきた。
「また推しさん見てたの?」
「うん、今日は二次創作を摂取してる」
「凄いよな、無料でめっちゃ上手い絵を見れるの」
「そう、もはや世界のバグ」
愛してる世界、フォーエバー世界。こんな神絵を無料で閲覧可能なのはバグっているが、有難き幸せと思い享受させていただく。あ゛ぁ〜逆光なの神すぎる。バカッコいい。心拍数おかしくなってきた。
「この絵師様は塗りがめっちゃ繊細なんだよなぁ〜…どれだけの時間をこの絵に費やしているのか…」
「それ程までに熱量があるんだな」
「( ゚д゚)ハッ! つまり推しは神…」
髪の一房一房までもが繊細で目を奪われる。目の塗りなんてもはや国宝級。宝石、もしくは光に照らされる朝露のよう。それでいて鋭いカッコよさを持ち合わせている。 どうやったらこの極地に辿り着けるのだろうか。神では?
あぁ、これが無料なんて。世界運営さんバグってますよ。
「夢なんじゃないかと錯覚しちゃうよ〜…!」
「安心しろ、現実だ」
「oh…Forever Love…」
パンが美味い。白米何杯でも食える、とはよく言うが、今の私は推しを肴にパンを無限に食べられる気がする。ただのコンビニパンがまるで高級店のような味。推しが尊くて飯が美味ぇ。
「一生涯愛してるよぉ〜…!!!」
今日も私は、教室の隅で尊死ぬばかりだ。
コメント
1件
のーねーむさん、第3話読みました〜! 花菜ちゃんの推しへの愛が爆発してて尊すぎる…!「推しを肴にパンを無限に食べられる」って表現、めっちゃ分かるなって思いました(笑)唯との会話のテンポも良くて、友達同士のゆるい空気感が伝わってきます。 あと、二次創作の絵師様へのリスペクトも込みで、オタクの心がぎゅっと詰まったエピソードだったな〜。推し活って本当に人生の彩りですよね🥀💜 続きも気になります!
羽海汐遠
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