テラーノベル
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窓の外で蝉が鳴く。
静かな教室で、アナタの横顔が目に入った。
スイカがもう食べ頃なのに、アナタは長袖で。 長くて黒い髪を、 括りもせずに下ろしている。汗ひとつかかずに、分厚くて小さな本をその大きな瞳で観ている。
暑くて、脳がとけている。だって、無性にその小さな唇にキスをしたくなったから。
まさしく桜色。半開き。リップグロスはきっと塗ってない。そう願ってるだけ。
アナタは私を認識してないだろうし、私だってそうでありたかった。アナタが笑った顔を他の人に見せた時、愛おしさと憎しさで埋もれた。2年生。同じクラスになって初めてアナタを見た時。私は一瞬で狂ってしまった。アナタの内なる温かさと冷たさを、強く抱きしめていたかった。
アナタがいつも早く登校するから、私だって同じ時間に登校するようにした。
アナタがいつも同じパンを食べるから、私だってそれが好物になった。
アナタがいつも同じ人と話すから、私だってその人と友達になった。
こんなにアナタと一緒になりたくてたまらないのに、アナタとは凸凹でありたい。一方的にアナタを見ているのがちょうどいい。でも、アナタと色んな事をしたい。こんな事思うのは、私がアナタじゃないからかな。
窓の外で蝉が鳴く。
静かな教室で、貴方がワタシを見つめてる。
家では風鈴が鳴る頃、アナタは半袖になって、肩ほどまでしかない髪を括った。
気まぐれな貴方はどんどん変化して、今見ているワタシにだって興味を失ってしまう。
教室に飾ってある花瓶の花は毎週変わる。季節ごとに違って、綺麗で見応えがあると、皆が褒める。それを聞いて貴方が誇らしげにしてる所が、たまらなく好き。
貴方がワタシに対してどう思ってるか。それが気になって仕方ない。思春期の恋のような気持ちで、今日も登校してる。小学生の頃、貴方が覚えていない頃。ワタシが遠目に貴方を見て、輝きを知った頃。その時からずっと変わらずに貴方に抱く感情を、本に書いてるような言葉では表せない。
スマホの待ち受けに愛犬がいて、SNSのアイコンには君がいる。ワタシが居なくても変わらない日常を、貴方はすごしてる。 貴方が心の中で呟いた一言だって、ワタシは見逃していたくないんだよ。それがないと、ワタシがここに居る意味が無くなってしまう気がするから。
でも、本当は、
一緒にお買い物だってしたい。
一緒に好きな映画だってみたい。
一緒に貴方といたい。
心の中でくらい、そう思っていたい。
貴方の口が開く。
「……暑いね。」
「うん。」
「………あのさ。」
「…うん。」
「週末一緒にショッピングモール行こうよ」
「……うん。」
続きます。
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