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病室に一人の少女とベッドで横になっている老人がいた。病室からは薄暗い雲が広がり白い雪が降っているのが見えた。白髪混じりの老人は言った。
「柚希」
「なぁにぃー?」
震えた手で古い紙切れを渡してきた。そこには地図が書かれていた。
「もう少し大きくなったらおじいちゃんの故郷のある場所に行ってほしいんだ。きっと柚希の心の支えとなってくれるだろう。」
「分かった!」
少女は老人の手を握り笑顔で言った。
(なんだかおじいちゃんの手、いつもより冷たい)
「げほっ…っ…げほげほっ…ゆ、きっ…」
「おじいちゃん大丈夫?」
心配そうにじっと見つめている。
すると老人は穏やかな笑顔を見せて
「ゆ…きっ、おじいちゃんは…ゆきの透き通った白色の…目も、髪も大…好き…だよ…いつも柚希のそばにいる…よ……」
「うん!」
そして老人はゆっくりと目を閉じた…
「おじいちゃん?おじいちゃんっ…うわぁぁぁぁぁん………」
「かみ……ん、神…さん、神谷さんっ」
「ひゃい!」
「大丈夫?」
「あ、あぁ。ちょっとぼーっとしてただけだから」
「そっか。神谷さんこっちに引っ越してきたばかりだよね。授業も終わったし一緒に帰らない?町のことも案内したいの」
「ごめんなさい。これから用事があって」
悲しそうな顔をして
「そうなんだ。また今度一緒に帰ろうね」
「うん」
「またね」
と言い笑顔で教室を去っていった。
自分の胸元を掴み私はまた言い聞かせる。
はぁ…断ってしまった。でもこれで良かったんだ。危害を加えないためにも他の人とは関わらない方がいいんだ。
私は鞄の中から古い紙切れを取り出した。これはおじいちゃんにもらったものだ。なぜだか今日この場所に行かないといけない気がした。私は教室を出て地図に書かれた場所に行くことにした。細い路地や畦道を通り森の抜け道のようなところを見つけた。でもここに来るまで少し気がかりなことがあった。誰かに見られているような気がしたのだ…不安に思いつつそのまま地図に書かれた道を進むことにした。抜け道を抜けるとひとけの無い古びた小さなお寺があった。
ここであってるよね?なんだか寂しい場所だな…お寺の周りを見てみよう。そしてお寺の裏に周ってみると祠があった。
祠…?祠に触れようとしたその時…
がたがたがた…
強風が吹き始め森がざわつきだした。
「な、なに…」
(あ…あけろぉ…)
恐ろしい声が聞こえてきた…
「っ…はっ、早く逃げなきゃ」
逃げようとしたその瞬間、強風の勢いで
ばんっっっ!
「っ…!扉が…」
(やっと出られた…!)
恐怖で足がすくんで動けない…どうしよう…な、なにかないの…あたりを見回して見ると枝が落ちていた。
枝でなんとかなるとは思っていなかったが、枝に手を伸ばし
「えいっ!」
「はうっ…」
祠の中から出てきた何かに命中した。
「やっ、やったのかな…、ん?」
恐る恐る見てみると
「狐…?(あ…色が見える…もしかして…)」
じっと見ていると狐?が目を覚ました。そしてこっちを目付きの悪い目で睨みつけ
「いきなり叩くとはなんだ!」
「えぇっ、あなたの方から襲ってきたじゃん」
「ぐぬぅ、それよりお主、吾輩が喋っていても全く驚かんのだな」
(話逸らされた)
「まぁね。ねぇ、あなたももしかして妖怪やお化けともいえない…変な存在?」
「変!?変とはなんだ!」
「まぁまぁ怒らないで」
狐?は頬を膨らませてムスッとしていた。
「ふんっ、でもその様子だと我々が見えるみたいだな。しかもかなり怪力が強い」
「怪力?私ってそんなに力持ちだったの?」
私はきょとんとした顔をした。
「力持ちの怪力ではない。おっほん、我々はお主が言ったとおり妖怪やお化けでもない。怪異だ」
「怪異…」
「怪異は怪力で人間に取り憑いて奇病という病気にさせてエネルギーを吸い取っているんだ。怪異によって症状も違う。それに怪異の持つ力が強いほど症状が重くなる。実際に取り憑かれて死んだものもおった」
「そんな…」
「そして稀に怪力を持って生まれてくる人間もいる。そうゆう人間は普通の人間には見えない怪異が見えるのだ」
「じゃあ私が今まで見てきたものは…」
生まれた時から私が見る世界には普通の人が認識できる赤や橙、黄、緑、青、藍、紫などの色がなかった。でも、怪物みたいなものの色だけ認識できた。
「ねぇ、あそこに変なのがいるよ?」
「どこ?」
「あそこだよ。あそこ」
指をさした。
「そんなのいないわよ?」
「えっ…」
怪物みたいなものがこちらをじっと見つめていた。私はそれが他の人には見えないことに気づいたのだった…
「おい、何をぼーっとしているのだ」
狐?が目付きの悪い目でこちらを見ていた。
「ちょっと昔のことを思い出しちゃった」
「ふぅん。そういえばお主、あやつの匂いと似ている」
「あやつ?」
「ここらへんには昔、お主と一緒で怪異を見ることができる人間の男がおったのだ。そやつは奇病を治療することができた。そして怪異について調べては治療法がわかれば紙に書き留めておったのだ。せっかく取り憑いたのに治療するので怪異から嫌われておった。吾輩の見たそやつはちょうどお主と一緒の高校生で、耳に札ピアスをしておった」
それを聞いたときハッとした。なぜかというとおじいちゃんは高校生の頃札ピアスをしていたことを聞いたことがありなによりここはおじいちゃんの故郷だ。
「その人の名前は?」
「神谷光春だ」
「えっ、おじいちゃんが」
「なぬ、お主の祖父か。道理で匂いが似ているわけだ」
おじいちゃんにも怪異が見えていたんだ。
「お主が持っている紙はなんだ」
「これはおじいちゃんが亡くなる前、ここにくれば私を支えてくれるものがあるから行ってほしいって言われて、その場所を書いた地図」
「それでここに来たのか。まぁ吾輩はお主がここに来たから怪力が高まって出られたから良かった。そうだ。何か恩返しをしなければな」
「律儀なんだね、でも大丈夫だよ。ありがとう」
「勿体ない。吾輩が恩を返すと言っているのに。まぁいい、ところでその代物は見つかったのか?」
「まだだけど」
「寺の中は探したのか?」
首を横に振る。
「なら探しに行くぞ」
「一緒に探してくれるの?」
狐?はそっぽを向いた。
優しい怪異もいるんだ。
「ありがとう。いこっか」