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「失礼します。ジェイド先生」???「お前は、大天使か。何の用だ」
今回は、いつもと話を変えて「TSLハイスクール」で行われる話である。大天使は「ジェイド先生」もとい「翡翠先生」の科学室を訪ねた。
「単刀直入に言います。「雨花」とは何者なのですか」
翡翠「と言うと?」
翡翠先生は、実験をしながら応える。
「あの者は、雨花たちが共存を願う妖怪たちを傷つけた我々を救われて良いと言いました。その他にも雨花の大切なものを傷つけたのに。なぜあの者は我々にまであのような言葉たちをかけるのですか」
翡翠「何故あたしに聴く?」
「この学校で雨花のことを少しでも知っているのは、ジェイド先生だけです」
翡翠「…………雨花か」
翡翠先生は持っていた試験管を置き、話す。
翡翠「実はな。あたしは科学学会の前、一度雨花に会っているんだよ」
「!、その時の雨花はどんな人間でしたか?」
翡翠「お前も知っているだろう。あいつが「黒い彼岸花」と言われていたのを。あたしは『トウヒガ学園』に入学したばかりの頃のあいつをみたことがある。その時こそ「黒い彼岸花」と言われていた頃だ。知りたいか?「黒い彼岸花」の時代の雨花を……?」
「はい、知りたいです。雨花には借りがありますから。「救い合う」ために。悪魔を。人間を。……雨花を。」
翡翠「…………あれは、あたしが当時、『トウヒガ学園』の高校三年生だったある生徒が、科学の大学に進学するための推薦書を発行する手続きが必要で来校した時だった……」
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翡翠「うーむ。推薦書なぞ郵送で送れば良いものを……どうしてわざわざ日本まで出向かわなくてはいけないのだ。『トウヒガ学園』の校長が生徒想いなのは良い事だが……」
翡翠先生は、早めに終わった推薦書の発行手続きを終えて、『トウヒガ学園』を周っていた時だった。
翡翠「不思議な学校だな。招かれていない者からみれば廃校に見えるが、逆に招かれている者からは学校にみえる。そのため、町内会ではいわく付きの学校と言われているからな」
翡翠先生がぼぉーとしながら歩いていると……
翡翠「ん?」
フラフラとした足取りで教室に入る黒髪の生徒がいた。
翡翠「(大丈夫なのか……?今の生徒……)」
翡翠先生は、そのまま教室を通り過ぎようとすると……
ガッシャーーーーン!!!!ドッゴオオオオン!!!!
翡翠「な、何だ!?今の音は……!」
翡翠先生の目の前にある教室……つまり、黒髪の生徒が入った教室から凄まじい音がした。
翡翠「おい!大丈夫……か……」
???「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
黒髪の生徒は、息を激しく乱していた。そして、教室にはめちゃくちゃになった本棚とプリント。それから、殴り飛ばされ気絶している妖怪が何体かいた。
翡翠「お、お前……!」
???「…………」
黒髪の生徒の目は、闇をも飲み込む更なる闇のような温度のない目だった。
???「…………」
黒髪の生徒は、本を踏みながら教室から出ていってしまった。
翡翠「何なのだ……あの少女……」
翡翠先生は、別の先生に黒髪の生徒が荒らした教室を任せると、黒髪の生徒を追いかけた。
???「…………」
翡翠「はぁ……はぁ……あいつ速すぎ……」
黒髪の少女は、廊下の途中で止まると蹲ってしまった。
???「絶対……みつけてやる……どんな手段を使っても……わたしは学校にいちゃ……いけない……いたくない……こんな……こんなところ……そうじゃなきゃ……わたしは……」
縮こまると、腕で体を抱え込み、腕を握る手が強くなり、腕が痛そうになってもずっと握っていた。
その背中は今にも泣き出しそうな、心もとない子供のようだった。先程、とても教室を破壊したとは想えない、とても妖怪を殴り飛ばしたとは想えない弱々しい背中だった。
翡翠「…………」
何をそんなに怯えているのだろう
学校が恐いのか?
生徒か?
妖怪か?
それとも自分か?
翡翠先生は、しばらくその震えるほど寂しい背中をずっとみていた。
黒髪の生徒は、その後、学校の外へ出た。
翡翠「…………」
???「……さっきから……何?」
翡翠「!、あたしのことか?」
???「そうだけど」
翡翠「ち、違う!たまたま行く方向が同じだってだけだ!」
???「じゃあわたしが蹲ってる時、みてたのはおかしいんだけど……」
翡翠「それは、別の方向を見てて……」
???「そういうの……もういいよ」
翡翠「す、すまない……」
???「…………」
すると、翡翠の目に止まることなく黒髪の生徒は走り出しジャンプして、翡翠は黒髪の生徒をみ失ってしまった。
翡翠「科学の域を超えた速度だ……どうなっているんだ……」
「誰か!!!!出して!!!!」
翡翠「?」
うっすらと誰かのSOSが聴こえた気がした翡翠先生。
翡翠「この声は……体育館からだ」
翡翠は体育館に走った。
「出して!!!!私はまだ外出てないよ!!!!」
翡翠「(あそこからか!)」
翡翠先生は、体育館の中にある倉庫から人の声がしたのを確認した。
翡翠「今、助k……」
カチャカチャ
翡翠「ん?」
翡翠先生の目の前には、外から入ったのかどこから来たのか分からないが、黒髪の生徒がいた。南京錠をカチャカチャと動かしている。
カチャカチャ、ガチャン
翡翠「あ、開いた」
その瞬間、黒髪の生徒はどこかへまたいなくなってしまった。
翡翠「大丈夫か?」
「あなたが助けてくれたんですね!ありがとうございます!」
翡翠「いやあたしじゃない」
「え?じゃあ誰が……?」
翡翠「とにかくあたしじゃないのは真実だ。あたしにはピッキングなんて出来ない」
あの者は……きっと……
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「…………」
翡翠「そして、あたしはこの学校に戻った」
「その黒髪の生徒が、雨花なんですね」
翡翠「あぁ、科学学会で会った時と髪色が変わっていたが、間違いなく雨花だ。あたしのことは覚えていなかったみたいだがな」
何も感じ取れない空白すら作れない
温度のない闇を取り込む更なる暗闇の目
今も目はあまり変わっていないな
「…………」
翡翠「お前は聴いてどう想った?」
「…………雨花は、やっぱり雨花なんだと想いました。雨花はきっと……」
雨花はきっと本当はとても繊細で
臆病で恐がりで
寂しがり屋で
そしてとても暖かい
人を助けずにはいられないんだな
「黒い彼岸花」の時のように妖怪を傷つけていたとしても
心のどこかでどうしても助けようとしてしまう
特に妖怪や我々のように悪者扱いされている者へは……それが自業自得なら尚更
そんな雨花が抱えてるものは一体何なのだろうか
「雨花は、マッチ売りの少女のようです。寒い冬の日に懸命に働き、誰にも見向きもされず、最終的にはしんしんと積もる雪の中、幸せな夢をみながら死んでしまう。雨花はきっと雨花にとっての幸せな夢をみながらふらっと消えたいと望んでいる。そんなところが似てます。」
翡翠「…………雨花はいつか。誰かが殴ってでも止めない限り、いや殴っても止められるか分からないが、何か行動を取らない限り、雨花が消えるのは時間の問題だろう。どこから消えるのかは分からないが……もし学校から消えたら……次は絶対……」
「雨花のこと教えて下さってありがとうございました。これから考えていきます」
翡翠「無理するなよ。絶対に」
「はい。ありがとうございました」
バタン
翡翠「また雨花に近い内連絡してみるかな」
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コンコン
「!、お前は……」
窓の外のノック音の正体は悪魔だった。
「よう。大天使様」
「中に入りなさい」
「!、あぁ」
悪魔は中に入った。
「どうやって封印を解いたか知りたいか?」
「どちらでも良い。その方法を知ったとして、我らの方針は決まっている」
「どんな方針だ?」
「悪魔の封印を解く」
「!、本当に雨花の言う通りなんだな」
「雨花?何故雨花の名が……あぁなるほどな。封印を解いたのは雨花か」
「あいつはお前ら天使のことを救われる対象と言っていたぞ」
「あやつは頭がおかしい。我々すらも助けようとするとんだイカレ女子なのだ」
「「我々すらも」?そんな考えにまでお前はなったのか!?………雨花……」
「我々は揃って雨花を見下していたようだな」
「僕たち悪魔は、自分たちの正義を掲げるつもりだ。しかし、押し付けるつもりはない。お前たちの正義も知ろうとする。だからお前たちの正義もみせてくれ」
「その「正義」という言葉も雨花から言われたんだろ?」
「あぁ、そうだ」
「良かろう。我ら天使と協定を結ぼう。その前に悪魔を全員解放せねばならない。協定の内容はそれから決めよう」
「あぁ」
こうして、「TSLハイスクール」に何年かぶりに悪魔が帰ってきたと、『トウヒガ学園』に嬉しい通達が来たのはほんの少し先のお話。