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𝕆𝕜𝕠𝕞𝕖🍙
100
#カントリーヒューマンズ
りんごあめ。🍎
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「あなたじゃないの。」
ロシア→♡→←?←アメ→♡→ソ連
静かな冬の日。
外では雪が降っていた。
街の灯りは雪で霞み、世界がゆっくり眠りにつく。
ロシアはソファにもたれながら、天井を眺めていた。
テーブルを挟んだ向こう側には本を読んでいるアメリカがいた。
部屋には紙をめくる音と、時計が時を刻む音。
不思議な時間だった。
会話はない。苦でもない。
けれど心地良いとは言い切れない。
そんな曖昧な距離。
「……なぁ。」
そんな沈黙に耐えられなかったのか、アメリカが顔を上げた。
「ん?」
「この前俺んちの倉庫掃除してたら古い写真出てきた。」
ロシアは頷く。
特に珍しくもない話。
国の歴史は長い。古い資料も、写真も。
たくさん残っているだろう。
「懐かしいと思うぞ?」
アメリカはそう言って笑顔を向ける。
その笑顔は外の雪も溶かしてくれそうなほど温かいものだった。
ロシアの胸が少しだけ重くなる。
嫌な予感がした。
そして大抵、その予感はよく当たる。
「あいつ…ソ連が写ってたんだ。」
…ほらな。
ロシアは心のなかで呟いた。
ソ連。父の名。
アメリカは机に肘をついて、写真を見ているが遠くを見るような目をしている。
その視線の先にいるのが自分ではないことくらい、ロシアにもわかってしまう。
「若かったな。」
「そうか。」
「今見ると無茶苦茶なくらい。」
「そうか。」
「会ったら毎回喧嘩してた。」
「そうか。」
返事が返しづらい。短くなる。
自分でもわかるくらいに。
けれどアメリカは気づかない。
気づいていて、気づかないように振る舞っているのかもしれないが。
どちらでも同じことだった。
父の話をするときのアメリカは楽しそうだ。その顔を見ると考えてしまう。
俺はその顔をさせたことがあるのだろうか。向けられたことがあるのだろうか。
無い。
きっと一度も。
アメリカは今俺を見ていない。
もっと遠くにいる。
もっと昔。
もう存在もしていない。
そんな、誰か。
「父さんのこと好きだったのか。」
知らない間に口から零れていた。
アメリカが固まる。
数秒。
ほんの数秒だった。
その数秒がロシアには長く感じられた。
「違う。」
即答だった。
あまりにも。
だからこそ苦しい。
「そうか。」
「好きじゃない。 」
「…うん。」
「ただ……」
そこで言葉が詰まったのだろう。
ロシアは笑った。笑ってみせた。
その先を聞く必要なんて無かった。
ただ。
ただ何だ。
ただ特別だった?
ただ忘れられない?
ただ今でも鮮明に思い出す?
どれも大差ない。
どれも十分に痛い。
アメリカは何か言おうとしている。
けれど体は立ち上がっていた。
聞きたくなかった。
聞けばきっと。
その想いに俺は苦しむことになる。
「どこ行く?」
「散歩。」
「雪振ってるぞ。」
「知ってる。」
短く返す。
ドアノブに手をかける。
その瞬間。
「ロシア。」
呼び止められる。
期待してしまう。
自分の名前をその声で呼ばれただけで。
馬鹿みたいに。
振り返る。
「……お前はあいつとは違うからな。」
アメリカはそう言った。
優しさだった。
慰めのつもりだった。
比較されていることを気にしていると思ったんだろう。
だから否定した。
違う人間だと。
違う国だと。
違う存在だと。
ロシアは笑うしかなかった。
本当に残酷だった。
自分は父になりたいわけではない。
父と比べられたいわけでもない。
見てほしい。
俺を。
俺自身を。
お前が見ているのはいつだって父さんだ。
お前が見ているのはいつだって父さんなんだ。
雪の匂い。真っ白に染まる。
春はまだ遠い。
きっとアメリカは知らない。
俺が父さんに嫉妬していることも。
その感情に何という名前がついているのかも。
劣等感とも違う。
悔しさでもなかった。
全部。
知らないままなんだろう。
だからこそ苦しかった。
この気持ちを伝えたら、この関係は潰れるのだろう。
いっそ、好きだと言ってくれれば良かった。
そして雪にかき消させるようにつぶやく。
「あなたじゃないのにな。」
雪はまだ振り続けるんだろう。この心に。春が来ても。