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「ふ。ここまですんなり結婚が上手くいったのは、俺の計画が上手くいったからってこと。あとは開業した仕事が落ち着いたら、浚って来ようと思ったけどやめただけ。こんな未だに恋愛経験がない危険な子は、今すぐ俺のことを好きになってもらわないとね」
「え、あの……」
手が。
微笑みながら手を繋がれてしまった。
えええ。
「ね、ちょっと触れただけでこんな真っ赤になる子は、浚うしかないだろ」
「いや、誰だってその……憧れてた人にこんなことされたら、恥ずかしいと思います」
耳と頬が熱い。きっと今、トマトと並んだら間違う人が続出する。
どんどん声が小さくなる私を、喬一さんが覗き込んでくる。
「え、初耳。嬉しいんだけど」
「ひい。だめ。アップ駄目。近づいたら駄目です」
「君も、学生のころから淑やかで綺麗だったよ。それに見た目で損してるって思っていた」
見た目で損?
肉食系の友達からは大歓迎されてるのに?
「綺麗すぎて、こんな風に中身が可愛いの誰も気づかないのは損でしょ」
「……気障だ」
喬一さんは、女性が何を言ったら喜ぶのか分かってる。慣れてる。気障だ。
こんな歯の浮いた言葉、きっと色んな女性に言ってきたに違いない。
「信用してないね。だったら先に逃げられない位置で、こうやって手を掴んで離さないことにしよう」
「もう手を繋いでますってば」
「うん。手を放さず、耳がとろけるぐらい甘い言葉を囁こうかな」
「ひい。太っちゃう」
と言いつつ、嫌な気持ちに全くならないから不思議。
それよりもちょっと期待して耳がぞくぞくしてしまう。
ああ。好き。好きすぎる。
「まあいじめ過ぎても駄目だから話をかえるけど、仕事は大丈夫? 新しい事業部作って忙しそうだったけど」
「忙しいです。体制が整うまで、兄の秘書から新事業部の事務の方へ回ってます。新卒の子たちに早く体制を整えて効率のいい仕事の仕方を伝えればいいんですが、私もいっぱいいっぱいで」
「……無理しないように。ちゃんと本音を言いあえる同僚はいる?」
「はい。大丈夫です。開業した喬一さんよりは、場所が整っている分楽なはずです」
私のことを心配してくれるなんて、そこは良い人なんだよね。
さっきだって、私が帰ってきたのに気付かないほど眠っていたから、とても疲れているはず。
なのに、顔に出さないで、うちの親と食事までしちゃって。「喬一さんは大丈夫ですか? お仕事忙しいのに」
「うん。だから家に帰って、君がいるときっと幸せだと思う。ほら、」
急に止まって何をするかと思ったら、冷蔵庫を足で締めるジェスチャーをしてきた。
「喬一さん!」
「わははははっ」
酔ってる。酔ってないって思ってたのに、このテンションはちょっとだけ酔ってる。
「一生言い続けられそう」
「ご名答。しわくちゃのおじいちゃん、おばあちゃんになっても言うよ」
ポコポコ叩こうとして、手を掴まれ瞳を覗かれた。
「意味、分かる?」
「うっ……」
分かりません、と言いたかったけど彼の唇が薄く開いたのを見て身構える。
薄くて形のいい唇。近づいてくる意味に、胸が早鳴る。
憧れていた人。ゲームで攻略する相手をいつも彼のような眼鏡の人にしていたのは、このせいだ。
銀のフレームが街灯で、チカッと光る。それすらも絵になる人。
「あの……キスって眼鏡外さなくてもできるんですか?」
「試してみる?」
彼の言葉に、私の思考が完全に止まる。
#料理男子