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どうも、シャーリィです。ご挨拶が雑になっているのはご容赦を。あれから私は面倒事に首を突っ込んだ罰として二週間の外出禁止が出されました。ルミには今すぐ言いたいことが山ほどあるのに…ギリィ…。
さて私は良い娘なのでシスターの言い付けを守り二週間家事と苗のお世話をして過ごしました。もう少し育ったら、畑を作って植え替えても良さそうですね。植木鉢だとそろそろ限界かもしれません。
そして二週間が経ち。
「国立孤児院でしたか。彼処はシェルドハーフェンで一番安全な場所ですよ。何せ政府直轄の事業所ですからね。手を出せば特大の面倒事が降り掛かります」
「その孤児院に居るルミが乱暴されていたのですが」
「そしてそれを助けたと。シャーリィ、義侠心を持っていたんですね」
「いいえ、持ち合わせていませんよ。これがおじさんとかだったら放置してますね、間違いなく。同年代かつ可愛らしい女の子なので助けたんだと思います…多分。すみません、この感情の言語化が難しくて」
「清々しいまでに自分の欲望を忠実に実行しましたね。」
そう言いながらシスターは私の頭を撫でます。んむぅ、なんかくすぐったいです。
「貴女とは半年の付き合いですが、初めて人間味のある行動を見たような気がします。助けたかった、その思いは大事にしてください。それを捨てたら、畜生に成り下がります」
「暗黒街で生きていくのに必要なことなのですか?シスターが言うように面倒事に巻き込まれてしまいましたし」
「否定はしませんし、肯定もしません。ですが、大事な感情です。甘い考えと言われるでしょうが、私は貴女を畜生にするために助けたわけではありませんから」
「はい、シスター」
畜生に成り下がる、か。仮に復讐が出来るなら私は畜生に成り下がっても構いませんが……まあ、まだ時期ではありません。素直にしておきます。
「で、話しを戻しますが、その孤児院に招かれたとか?」
「はい、シスター。半ば強引に決められた約束ですが、果たさなければ夢見が悪いです」
「孤児院の子供に手を出すんです。特大の厄介事の匂いがしますが、今さら無関係を装うことはできません。貴女の顔は知られていますからね」
「助けて別れるまでに顔見知りの人とたくさん出会いました。私が助けたと知られていると見て間違いないかと」
「つまり下手人から見れば私達が邪魔をしたと見られるわけですね。面倒な事です。頭のイカれた単独犯であることを願いますよ」
ため息混じりにシスターはぼやきます。確かに、私が関わる以上シスターも自動的に巻き込みます。我ながら短慮でした。悔いはありませんが。
「私個人としては、ルミに会いたいと思います。その、個人的な理由で恐縮ですが」
「友達になれそうだから?」
「強引でしたからね、合わないかもしれませんが。何かの縁です。」
「なら、早い方がいいですね。明日にでも孤児院へ行きますよ。」
「はい、シスター」
シスターの許可も出ましたし、ルミに会いに行くとしましょうか。仲良くなれるか否か、神のみぞ知るですね。
翌日、私はシスターに伴われて孤児院を訪れました。豊かな自然に囲まれた郊外に佇む孤児院は、まあ言ってしまえば教会より立派な建物でした。芝生のしかれた庭で子供達の明るい声が遊んでいます。平和だ。
「まさか貴女がわざわざ来てくださるとは。先ずは感謝を、シスターカテリナ。うちの娘を助けてくださったとか」
孤児院から優しそうな初老の男性が出てきて、シスターと話しています。
「助けたのは私の弟子です。私ではありませんよ、院長。見習いのシャーリィです。」
「シスター見習いのシャーリィと申します」
「おお、貴女が。勇敢な娘だ。私は孤児院の院長を務めるユリウスと言います。先日はありがとうございます。ルミは元気に過ごしていますよ。貴女に会いたがっていた」
「私もです」
「ほらシャーリィ、その娘に会ってきなさい。あとは大人の話です」
「分かりました、シスター」
「ルミは中で貴女を待っていますよ。さあ、どうぞ」
「ありがとうございます、院長様。」
さあ、再会です。貴女を助けたばっかりに私は拳骨を頂く羽目になったのです。覚悟しなさい、ルミ!
意気揚々と孤児院の中に踏み込むと、そこにはたくさんの小さな子達と遊ぶルミが居ました。
「ルミ!」
「シャーリィ!?わぁ!来てくれたんだ!?」
「約束は守りましたよ!それよりも、貴女に言いたいことがあります!」
~しばらく後~
「私の妹レイミよりも愛おしく可愛い女の子など存在しません。議論の余地すらないと言えます」
「えー、うちの妹や弟達だって世界一可愛いじゃない!シャーリィの妹さんにも負けないよ!」
「よろしい、ならば戦争です。」
カテリナです。さて、なんですかこれは。シャーリィはルミと呼ばれる娘と何だか妹談義に白熱しています。確かに妹に対して凄まじい執着を見せたことはありますが、まさかこれほどとは。
「ユリウス院長、うちの娘が迷惑をかけます」
「はっはっはっ、よいではありませんかシスターカテリナ。可愛らしくそして子供らしいやり取りではないですか。」
まあ確かに、シャーリィは相変わらず無表情ですが何処かムキになっている姿には年相応の幼さが垣間見れます。
「そうですね……シャーリィは子供らしい面がほとんどありませんでした。ルミには感謝です。年相応なあの娘を初めて見ることが出来ました」
「此方こそ、シスターシャーリィが居なければルミは大変なことになっていたでしょう」
「それなのですが、院長。下手人に心当たりは?」
「それは……いや、いけません。これ以上無関係な貴女方を巻き込みたくはありません」
「既に巻き込まれていますよ。シャーリィがあの娘を助けたその瞬間に。ならば、後手に回りたくはありません。事情を聞いても?」
私がそう言うと、院長はため息混じりに語り始めました。
「ここ数ヵ月、帝都から送られてくるはずの物資が届かないのです。何度も問い合わせましたが、返答もなく。私の資産から何とか子供達の食べ物だけは調達していたのですが、それも限界となりまして」
そんな時に声をかけてきたのが、今回の下手人達らしい。低金利で金を貸し出すと話を持ちかけて、実際は高利でむしりとる悪徳集団。言ってしまえば、チンピラに騙されたと。状況から見ても、支援物資の件もそいつらの仕業でしょうね。
全く、ここのルールも分からない新参者共が。教えてあげねばなりませんか。この街のルールを、命を以てね。
これからの面倒を思いながら、シャーリィとルミを見つめつつため息をつくカテリナであった。