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幻想郷の温泉、熱気と湯気が漂う静かな夜。月明かりが湯に反射し、あたり一面を柔らかく照らしていた。
霊夢と魔理沙は、長い一日の疲れを癒すために温泉に浸かっていた。普段は賑やかな二人も、今はしばし無言でお湯の中に身を沈めている。
「ふぅ~、やっぱり温泉はいいなぁ。これで明日の仕事もバッチリだぜ。」
魔理沙が湯気に包まれながら、肩を伸ばす。
霊夢は、ぼんやりと湯の中に手を浸つけている。時折、魔理沙の方をちらりと見ては、また顔を隠すように視線を逸らしていた。最近、魔理沙と過ごす時間が増えてきて、その心地よさにちょっとだけ慣れてきたようだ。けれど、どうしても気恥ずかしい気持ちが抜けない。
「なぁ、霊夢。あんまり顔隠さなくてもいいんじゃないか? そんなに照れてどうすんだよ。」
魔理沙がにやりと笑いながら、霊夢に近づく。けれど、その距離感が妙に近くて、霊夢の心臓が少しだけ跳ね上がった。
「べ、別に照れてるわけじゃないわよ! それに、魔理沙の方がなんだか変な気がするけど?」
霊夢はしっかりと反論するものの、目線はどうしても魔理沙に引き寄せられてしまう。
その時、魔理沙がちょっとした遊び心で、湯気で霊夢の顔を軽く隠すように手を振りかざした。霊夢は驚いて後ろに倒れそうになり、その瞬間、魔理沙もまたバランスを崩してお湯の中で滑りそうになった。
「わっ、危ない!」
霊夢が反射的に手を伸ばす。
その手が魔理沙の肩をしっかりと掴み、二人はわずかな距離で顔を見合わせることに。湯気の中で、思わずお互いの顔が近づき、心臓の音が二人の間に響く。
「…お前、まさか…」
魔理沙が少し照れくさそうに言ったその時、霊夢の目の前で魔理沙の顔が一瞬、無防備に近づいた。
その瞬間、何かが引き寄せられるようにして二人の唇が触れた。
「あ…!」
霊夢が驚いてすぐに顔を逸らす。魔理沙も同様に赤くなり、目をそらした。
「ご、ごめん! まさかそんなことになるなんて\\\」
霊夢が慌てて言い訳を始めるが、魔理沙は少し照れた表情を浮かべながら、軽く笑った。
「いや、別にいいけどな。今のは…偶然だしな。」
魔理沙は肩をすくめ、しばらくそのままお湯に浸かっている。
けれど、二人の間には、それまで感じたことのない緊張感が漂っていた。まるで、今までの関係が少しだけ変わったような、そんな不思議な感覚。
霊夢はしばらく黙ってその場に立ち、魔理沙の顔をちらりと見た。そして、少しだけ言葉を飲み込んでから、思い切って口を開いた。
「…偶然ってことにしとくわ。でも、次はちゃんと気をつけなさいよね。」
霊夢が少しだけ強がって言ったその瞬間、魔理沙はくすりと笑った。
「そっちこそな、霊夢。」
その夜、幻想郷の温泉での出来事は、二人にとって少しだけ新しい感情をもたらすものだった。気まずさを隠しながらも、お互いにとって大切な存在であることを、無言のうちに確認したような、そんな温かな夜だった。