コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
新宿駅の構内は、今日も人の波で溢れていた。スーツ姿のサラリーマン、観光客、学生…その中に、明らかに場違いな少女が一人立ち尽くしていた。
「ここは……博麗神社じゃない……?」
博麗霊夢は眉をひそめた。先ほどまで妖怪退治のために山奥を歩いていたはずなのに、気がつけばこの騒がしい鉄と光の洞窟にいたのだ。天井には電光掲示板、耳には聞き慣れないアナウンスの声。そして空気の匂いも、幻想郷とはまるで違っていた。
「まさか、外の世界……?」
霊夢は自分の博麗の巫女服が、周囲の視線を集めていることにようやく気がついた。すれ違う人々が、スマホで彼女を撮っている。中には「コスプレ?すごーい!」と話しかけてくる者もいた。
「……いや、コスプレって何?」
「えぇ…設定凝りすぎww」
霊夢はため息をつき、ふところの御札を確認した。
「とりあえず、紫の仕業ってことでいいわよね……?」
霊夢は人々の波を掻き分けるようにして、駅の出口を目指して歩き始めた。新宿駅の構内は、まるで迷路のように入り組んでいて、どこに進めばいいのかすらわからない。周囲には広告がひしめき、LEDのスクリーンが煌々と輝いている。歩く度にアナウンスが耳に入り、足音が反響して、どこか遠くにいるような気がした。
「……こんな所、いつまで歩けばいいのよ」
霊夢は呟きながら、足元を見つめた。自分の白い足袋と赤い巫女服が、まるで異世界の住人のように浮いていることに気がつく。背後からは、スマホを向けてきた人々の視線がチラチラと感じられ、少し恥ずかしくなった。
「ほんと、これは一体……」
目の前を通り過ぎる通勤客の顔をぼんやりと見ながら、霊夢は思った。この場所は、何かの夢か幻のように感じる。それでも足は歩を止めることなく、駅の出口を目指して進んでいった。
「うう、やっぱり……不安だわ」
すると、突然、電車のホームに向かう人々の流れがせき止められ、ざわつき始めた。目の前で、身の回りの人たちが次々にスマホを取り出し、何かに驚いた様子で指をさしているのが見えた。
「……?」
霊夢は首を傾げ、その先に目を向けた。そこには、自分と同じように駅の構内を歩いていた普通の人々の中で、どう見ても場違いな人物が一人、こちらに向かって歩いてくるのだった。